第3話『ゴーレムの性能と町に到着』
それから移動する事になったが、一つ彼女らに言っておくことがある。
「すみません、どちらかはビー玉……あの魔力核に戻ってもらえますか?」
だってそっくりさんとか目立つしな。しかも自分を殺そうとしたヤツと同じ顔とか二つも並ばれると気をもんでしまう。
『分かりました、私が魔力核に戻ります』
『なら私が前衛を務めますね』
そして片方は残りもう片方は魔力核ってもうビー玉でいいかな、それになって私の手元に来た。
そこで私は更に新たな魔法を付与してみようかと聞いてみた。
「一つ良いですか?実は今からこの魔力核に新たな魔法を付与しようと思うんですが、そうしたら二人は新たに魔法を使えたりします?」
『はいっ使える様になります』
やった、なんとなくそんな予感がしたんだよ、インストールされた知識にはなかったが。この世界のゴーレムとはきっとこうやって使える魔法を増やしたり、倒した敵を素材として回収して戦力を上げていくんじゃないのかな。
なんかコツコツした育成ゲー見たいで悪くないよな。
あっそれともう一つ必要の事があったな。
「それともう一つ、二人の名前はどうしますか?」
まさかゴーレムが喋るとは思わなかったから名前とか考えてなかった私だ。
しかし一度人間見たいに話して思考する姿を見たら名前とかないと不便じゃないかと考える。
私的には今後もこの二人のゴーレムと共にこの世界を旅をしたいと思うんだ。
『我々に名前はありませんから、ご主人様が決めてくださるのならどんなものでも』
「………分かりました、なら貴女はユーリこちらの方はリエリと呼んで良いですか?それと見た目が同じ姿をするのは私が混乱するので出来れば控えてくれると助かるんですが…」
『分かりました』
(分かりました)
何故に女の子な名前なのかと言うとこの二体のゴーレムに人型で男性モデルを採用する気が無いからである。そこはやっぱね……。
それとビー玉モードでも喋るんだね。ん?なんかさっきまでとは違う感じがした、何でか聞いてみる。
「………どうやって喋ってるんですか?」
『我々との会話は思念でも行われます、だから会話が出来ない時は頭の中で話しかけて下されば此方も思念を送れますので、他人の目がある時等にはどうでしょうか?』
「……思念ですか」
私は思念を送るように意識をしてみる。
んーーっと。
(こっこんにちわ)
(こんにちわ)
(こんにちわ)
おっ!本当に頭の中で会話が出来た。
更に思念による念話は意識を持って行うものだから内心がいつの間にか駄々もれするなんて心配は無用の様だ。
この会話の手段は便利だな。
(そろそろ魔法の付与をしてください)
「わっ分かりました」
急かされた、取り敢えずさっきの戦闘で気になった防御性能を引き上げだい。
そこで魔防壁の魔法を付与する事に決めた。
この魔法は私の魔法鎧程の防御力はない代わりにドーム状で直径三メートル程のバリアを展開する魔法である。
これなら自身と私の両方を守れると考えて付与する。
【この僕に新たな魔法の力を与える。
私がビー玉に触れるとキラッてビー玉が光った、これで魔法の付与は終わりである。
魔法って派手なのと地味なのの差が激しいよな。
そんな感想を持つくらいしれっと魔法を使える能力を付与すると言う、この世界において私以外誰も出来ない、見るやつが見れば卒倒する様な真似をしている(らしいよ?インストールされた知識によるとね)のだが……。
まっインストールされた知識がどこまでこの世界の常識に近い所にあるかすら知らないからな、この世界での生活になれるまでは私の魔法についても口外しない方がいいだろうな。
『……共有化によって私にも同じ魔法を扱える能力が与えられました。しかし本来ならゴーレムの核になった魔力核に新たに魔法を付与なんてすると爆発しますからご注意を』
(これはあくまでご主人様の異常な魔法の実力があってのものですから)
なんか釘を刺されたぞ、もちろん気を付けるつもりだから良いんだが。
「分かりました、なら村では魔法を使える事は隠しますね」
『それがよろしいかと、後この姿は町で山賊を知っている人間に出くわすと要らない騒動になりかねません。町が見えてきたら私も魔力核の状態に戻った方がいいかも知れませんね……』
なるほど、確かに山賊達にも一目置かれていたし、名がある女山賊って可能性も否定出来ないから顔が知られてるかもしれないもんな。
そんな所にまで私は考えが及ばなかった、このゴーレムの思考能力とか戦闘力とかの総合的な性能は凄く高いんじゃないかと自画自賛してしまうよ、だって私の魔法製だしな。
殆ど貰い物みたいな感覚しかないが、この魔法の才能とやらは私が元々持っていたものらしい、まぁここまで便利だと果たして私の努力でここまでのものになってたかは………。
まぁ才能であれ何であれ、力と呼ばれる類いの物は弱い人間にとって多大な犠牲を強いる物も少なくないのは前の世界もこの世界も変わらないんだろう。
ならっやはり傲慢にならないように私自身に言い聞かせる様にしなきゃな。
何しろ私は直ぐに調子に乗りすぎるって知人からよく怒られていた過去があるから。
「分かりました、その案で行きましょう。それとリエリ、君には私の後ろにこのビー玉の姿のままで浮いてもらって背後からの奇襲に備えて下さい」
(分かりました。この姿でも魔防壁の魔法は問題なく使えますからお任せ下さい)
よしっでは先を急ぐとしますか。
森の中の道なき道をガイドブックの導きを信じて歩き出した私だ。
そして歩く事しばらく、ようやく町に到着した。
本当に着いたよ。あのガイドブックスゴッ!。
「ッ!………おおっまさにゲームで見た感じのまんまの町並みですね」
『リベロは田舎の町ですから町の規模も住んでいる人間も数百人くらいのそこそこ止まりの町にです』
「……その情報ってまさか」
『はいっこの身体の女山賊のものですね。この辺りを狩り場にしていたらしく、森の周囲の町や村についても詳しいようでした』
なるほど、この辺りを根城にしている山賊なら下手に町に行くとバレる可能性が高いって訳だ。
……え?それってこの辺りにはまだまだ山賊がいる可能性が………いやっ今は町の事を気にしよう。
やはりさっきの話の通りにゴーレムは二体ともビー玉モードにしてから私のズボンのポケットにでも入れて町に向かうとする。
『ご主人様、町でお金を稼ぐつもりなら、残念ながら冒険者くらいしかすぐになれる職業はありませんが、どうしますか?』
「……冒険者ですか、それも悪くはないかも知れませんね」
異世界転生のお約束で冒険者とかギルドとかクエストってのはテンプレである。
ついでに美女や美少女との出会い、そしてハーレムの形成くらいまでテンプレが続いてくれれば言うことはない。
もう本当にそこまでお膳立てされたらマジで言うことはない。どうかそのヘンもお願いします。
「………………」
無言でリベロの町に祈りを込める、この町で素敵な美少女や美人との出会いがありますようにって。
オッサンだって、異世界に来たのなら夢を見たいんだよ。
身の程知らず上等、そして冒険者上等だ。
成り上がりとかして
異世界ファンタジーのロマンを期待しながら町へと向かう中年魔法使いである。
◇◇◇
そこはリベロの町にある冒険者ギルド。
そこに併設された酒場に私はいた。
冒険者ギルドはその名の通り如何にもマッチョな男女が冒険者ですっ!って装備をして行き来しております。
そんなギルドの酒場で軽い食事と飲み物を注文して待っているのである。
朝からお酒は飲まないよ?軽い昼飯である。
「……ふうっお腹が空いたな、もう昼だし当たり前か」
私がリベロの町に来て既に1週間がたった、そして三十路過ぎの中年野郎は社会人のコミュニケーション能力で無事に町に溶け込めていた。
最初こそ目鼻立ちがどうとか肌の色がどうとか言われたけど今はそれもない、もちろん冒険者にもなれた……っと言うより冒険者だと嘘をついて冒険者ギルドに来た私だ。
何でも冒険者になるのに資格も試験もなく、装備さえ用立てる事が出来ればマジで誰でもなれるものらしい。
冒険者ギルドはこの町で活動しますよってギルドに登録すればよその国の人間でも普通に冒険者として働けるらしい。
ざるすぎる。
そんなんでこの町の人々に冒険者ギルドは信用されるのか甚だ疑問である。
何でもこの冒険者ギルドはゲームとかみたく国を越えて世界を又股にかける大きな組織……っとかではなく国ごとに、いやっもっと言うと都市ごとに独立していて、殆ど別物のなんだと言う。
一応早馬とかで連絡くらいは取り合ったりをしたりしなかったりと言ったくらい関係が薄いらしい。
どっかの国で貴族を殺した冒険者がその貴族が所属する国と仲の悪い国で普通に冒険者として活動してるって話もあるくらいだ。
インターネットとか無さそうな世界観だしその辺りの不便は何となくそうなんだろうと思いながらこの世界に転生したから別に構わない。
むしろ根なし草上等で横柄な貴族とかに魔法をかまして見るのも悪くない気がしてきた私だ。
フフフッチートな魔法を手にした中年は調子に乗っていますよ……。
「なんか変なテンションになってるな……」
お酒は飲んでない筈なんだけど。
1週間経っても異世界に来たことや冒険者になった事で興奮しているのかもしれない。
オッサンの冒険心も中々に熱い代物である。
「はいっ!サラダスティックと赤豚の生姜焼き、それとご飯にお水です!」
食事を両手にそれぞれ運んで来たのはウェイトレスの女の子だ。
金髪碧眼でかなりの美少女、歳は高校生くらいでスタイルがいい、あの女山賊よりも胸が大きくぷりんと、そして腰は括れていてお尻はバーンって感じだ。
ウェイトレスの衣装も彼女のメリハリのあるスタイルに合わせたものなのかスカートは短く太ももが見えて、胸元は素晴らしい谷間がこんにちはと言う実にイカしたデザインである。
彼女の名前はマーブルちゃんと言うらしい(ここに通ってる冒険者がそう呼んでたのを聞いた)。この併設された酒場の主人の一人娘らしい。
実の娘に……とは言えその集客効果は凄まじく冒険者も冒険者でも何でもない町人まで酒場に昼メシを食べに来ている始末だ。
完全に私もそのお仲間です。
だってマーブルちゃん可愛いんだもん、前の世界のアイドルとか比べ物にならない程にレベルが高いな、異世界産の美少女は。
「マーブルちゃーん!俺もサラダスティック頼むよ!ここの野菜料理は旨いからな!」
それは私も思った。何で品種改良なんてされてないだろうにこんなに旨いのか、ただのサラダスティックがドレッシングもなしでパクパクいけてしまうんだ。
私は野菜はそこまで好きじゃないタイプの人間なのにだ。
「フフッ!うちはイキの良いキュウリワームや爆弾ニンジンを綺麗に狩れる冒険者や野菜農家に卸してもらってますから!」
………今変な言葉が使わなかったかな?。
やはり異世界は不思議がいっぱいだ。
そして少し時間をかけてゆっくり朝食を頂いた私だ。社会人時代だと朝御飯もゆっくり食べる時間はあまりなかったな……まぁ私が朝が弱いのが原因だけど。
「……そろそろ行くとしますか」
無論ただご飯の為にここに来たわけではない。
ここは冒険者ギルド。
そして私は冒険者。
つまりはクエスト、お仕事の時間である。
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