第1話『異世界に立つオッサン』
肌に優しい風が吹いている。
場所はまばらに木々が生えている森のなか見たいな所である。
よかった、正直あんな大層な存在が異世界に行ってもらいますと言われて砂漠とか荒野とかに飛ばされたらボイコットする所だった。
異世界ボイコットだ。意味分からんね。
そしてその森の原っぱに私は立っていた、上は半袖で下は短パンと言う寝た時の姿まんまな私だ。
「これはダメだな、急いで着替えたい」
見ると足元にはバックパックがあった、中を見ると服とズボン、さらに革鎧一式があった。
「服はともかく鎧なんて着る方法が……いや?」
分かる、分かるぞ?まさかこの世界で生きていく為の知識とかをインストールされているのか?。
いやっそれだけじゃない、それ以外にも色々な知識が私の頭の中に存在していた。
「……これは魔法の知識か?」
そうっあのゲーム見たく自分が使える魔法とその効果などを事細かに、そして自然に理解出来ている私だ。
これらの情報がマジもんなら確かにこの異世界での生活に役に立ちそうである。
……タダこの魔法の数は何だよ?尋常ではない種類の魔法の数々が私の頭の中をグルグルと回っている。なんか気持ち悪くなってきた。
いっいや、今はお着替えタイムだ。
装備品は装備しないと意味がないのだ、そして中年野郎は革製でも鎧とかにとっても興味がございますな。
そして村人の服見たいなのを着て革鎧一式を装備した、上半身を守る鎧と小手と膝当てにブーツまで完全装備である。
オタクな中年はこれだけで冒険に出掛けられそうな気がしてきた。
やっぱりいいよな異世界ファンタジー。冴えないオッサンが頑張る姿にだって誰かの心を熱くする何かがあると信じている。
バックパックを更に調べると水筒があった、スーパーとかで売ってそうな保温が効きそうなヤツだ。更に見たことがない金貨や銀貨があった。
それ以外だと色々な旅の道具がちらほらと。
「これは、普通に考えてこの世界の通貨だよな?価値はどのくらいだろう」
………いやっやはりそれらの知識もインストールされていたな。良かった、異世界でも金の価値が分からないとか人生が積んでしまうからな。
ええっと、金貨が一枚で一万円、銀貨一枚で千円、銅貨が百円、鉄貨は十円、石貨が一円だそうだ。
金貨よりも価値が高い硬貨もあるが今はどうでも良いだろう。
今の私の手持ちの金は金貨が五枚、銀貨が五枚で55000円と言った所だ。
初期の所持金としたら大変ありがたいな。
………さてっ自身の手持ちのアイテムの確認はすんだ、次は……。
「やっぱり魔法だよな魔法」
あの青い太陽みたいな存在が言うには私には物凄い魔法の才能があるらしい。
何でも世界をひっくり返せる程だとか、まぁ流石にそれは言い過ぎだろうけどな。
とにもかくにも魔法を試して見たい中年だ。
ならば今必要な物はなんだろうか、そう考えるといの一番上がるのは雑魚過ぎる自身の身を守る事である、この革鎧一式でどこまで命を守れるのか一切分からないからな。
出来るだけ強力な魔法で自分の身を守れる様にしたい。
そう考え自身にインストールされた魔法のあれやこれやな知識の中から自分にも使えそうな魔法を探して試す。
………これだ、この魔法なら不意討ちにも対応出来る、早速魔法を発動だ。
私は心の中で呪文を唱える。
【我が身を守る不可視の鎧をここに。
私の足元に緑色の光を発する魔法陣がドン。
そしてその光が私を包み込み、そして消えた。
「……なんか呆気ないな」
しかし目に見えない魔力による力場が私の周囲に発生した事を理解出来た。
この防護魔法の結界は自身の身に纏う様に術者を守る、範囲が狭い代わりにその防御力は凄まじく城を消し飛ばす様な魔法でも傷一つ負わなくなるらしい。
……まっまあ術者の力量次第でもあるらしくどこまで本当なのか流石にこの魔法の知識が怪しく感じる効果の説明だ。
「……けど、この魔法なら物理攻撃も魔法攻撃も効かなくなるって知識ではなってたし。今はこれでいいだろう、後は……」
次に欲しいのは一般人な私よりも戦闘力が高い前衛な戦力だ。
かっこ悪い話だが私が前に出てバトルとか現状ではとても出来そうにない、紙装甲(かどうかを試す度胸もない)な私の代わりに前に出て戦ってくれる存在が必要だ。
革鎧一式はあったけど武器の類いは一切なかったのは、私の武器は魔法って事なんだろう。
パーティーメンバーとか期待出来ない現状で私の身を守る為の手勢を用意する魔法か……。
そして私にはそれのあてがある。
「魔法でその手の戦力を用意するなら定番は三つだな」
一つはネクロマンサーとかって連中が使う死体を操るとか蘇生させたヤツを支配して戦わせる感じの魔法だ。
……これはないな。支配とか私の柄じゃないし魂を縛るとかして操るとか心情的に出来ないんだよ、死体を動かすくらいなら抵抗はあるが何とか出来そうだとは思うけど。
どのみち死んだら地獄行きな魔法だよ、そう言えば邪悪な魂は死んだら地獄に行くとか言ってたよな。絶対に却下だなこれは。
二つ目は召喚魔法だな、これは召喚する相手を前もって契約するのと無から召喚するモンスターを生み出す二種類がある。
実は私も後者なら出来るが、これも遠慮したい。何故なら呼び出したモンスターは無から生み出した以上、私に絶対の忠誠を誓うが、攻撃されたら痛みもあり血も出て苦悶の声をあげたりもするらしい。
そんな真似をされたら豆腐メンタルなオッサンは罪悪感でしんどすぎておかしくなってしまうだろうな。
故にこれも却下だ。
そして残された三つ目、実はこれだけが実行可能な案だと私的には考えていた物だ。
三つ目、それはゴーレム魔法だ。これは召喚魔法と違い術者の魔力から生み出した
召喚魔法と違いゴーレムは疲れもせずに痛覚もないから苦しんだり悲鳴をあげたりもしない、ゲーム的にはコミュニケーションは取りづらいかもしれないが盾になってもらう存在だし、下手に感情移入せずにすみそうだからな。
よしっゴーレム魔法を試そうと決めた。
ならばまずはゴーレムの核となる魔力核を生成せねばならない。
「………っと言っても、その為には魔力を体内から取り出して一ヵ所に集める様に集中するだけで良いらしいけど、そんなので魔力核って出来るのかよ」
自身にインストールされた魔法の知識がなんかとても胡散臭く感じるのはやはり私が疑り深い人間だからなんだろうか。
私は右手の手のひらに魔力を集める様に意識を集中する。
私の身体から青色の魔力が立ち上った、なんかファンタジー過ぎて軽くビビったわ。
いきなりブワッて感じで立ち上るんだもん。仕方ないよビビるのは。
その魔力が手のひらに集まる。
「…………っ!」
これは、マジか。本当に魔力が集まると少しずつ何かの結晶体が形成され始めたぞ。
これは青い水晶か?透明感のある美しい結晶だ。
そんなのが魔力を集めただけで作れるとはファンタジーな世界観を舐めていたな、すごい、カッコいいよ異世界ファンタジー。
やがて私の右手には二個の青いビー玉見たいなのが出来た。
何故に二個なのかと言うと、私はゴーレムを二体用意したかったからだ。
保険じゃないけど用意出来るものは用意しておきたい。三十路のオッサンは用心深いのだよ。
「……よしっ後はこれを地面に転がしてから、呪文を唱えるか、心の中で詠唱するかで、成功すれがゴーレムが出来る筈だ」
この世界の魔法は呪文を口に出して言うことでも使えるらしいが、そんなのどんな魔法を使おうとしてるのか相手に教えてる様なものだから私はやりたくない。
……そもそもそんな厨二な行動は出来ない、心の中で詠唱するのが関の山である。
私は魔力核を地面に並べて、意識を集中し心の中で詠唱を開始する。
【我が魔力を核に虚ろなる僕をここに。
魔法の発動と同時に地面の土が盛り上がる。
瞬く間に私が作り出した魔力核が土に呑み込まれ、その土が徐々に人に近い形を型どっていく。
そして目の前に不恰好だが土のゴーレムが現れた。
身長は百六十センチくらいで、私の胸より少し高いくらいか?。
土の身体が固まって岩の様になっている。盾代わりとしてはこれでも十分に心強く感じるな。
ゴーレム魔法はその材料となるものでゴーレムの呼び名も変わる。
鉄とかで出来たゴーレムはメタルゴーレム。
岩ならロックゴーレム、砂ならサンドゴーレムである。
今回は土だからクレイゴーレムって所かな。
土でも固まると頑丈そうだ、少なくとも革の防具よりも防御力は高そう。
そんなのが二体もいる。
「……これから君達には私の身を守って欲しい、もしも私が不意討ちされそうになったらその頑丈そうな身体で守ってくれるかい?」
何故に自分が生み出したゴーレム相手にも頼む様な言葉使いなのかと思わなくもない。まぁ社畜の性だよな、敬語も勝手に口から出てくるタイプの人間なんだよ。
しかしゴーレムには表情はない、だって目も口もないから。しかし頷く様に頭を動かしてくれた。
きっと分かったと言う意思表示だと私は考える。
「……ありがとうございます。ではどこか人がいる村まで行きましょう」
出来る事なら日がくれる前に町とかに入りたい、何故ならあの青い太陽みたいな存在はこの世界を剣と魔法のファンタジーな世界観だと言っていたからだ。
なら普通にこんなのどかな森でもモンスターとか出るかも知れないとロープレゲーとか好きなオッサンは考えてしまうのだ。
「……よしっ準備は済んだしさっさと森を抜けよう」
そしてガサゴソとバックパックを探る。
実は先程バックパックの中を見たときに使えそうな物を見つけていたのだ。
「あっこれこれ…」
取り出す。それはノートサイズの本であった。
題名は『異世界トラベルガイドブック』、なんてピンポイントなアイテムだろう。
完全にあの青い太陽さんが仕込んだ代物だろう。
ガイドブックにあるまじき本の厚みはまるで古文書のごとき風格が漂う。
「……ん?これは何だろうか?」
見るとガイドブックに栞の様に折り畳まれた紙が差し込まれていた。
そして何やら文字が書かれている……これは手紙か?。
『こんにちは、青野さん。異世界一年生としてこれから頑張る貴方に私からささやかなプレゼントです。この本は青野さんの世界で言うガイド本です、開けば貴方がいる辺りの地図を自動で表示してくれたりその辺りに出てくるモンスターの情報や手に入るアイテム等の情報も記してくれます。とても便利な魔導書ですから大事にしてくださいね~』
以上である。
魔導書だってさ、このガイドブック。凄いね。
「……………これこの世界の人に見せて良いもの何だろうか?何か不安になってきたな」
とっ取り敢えずガイドブックを開いてみる。
ペラペラ……ペラペラペラ……。
すっすごいなっ…開いたページはその瞬間は白紙の状態だった。しかし数秒でそのページには素人でも分かりやすい内容の地図が浮かんできたのだ。
更に何かしらなゲームの敵キャラ、つまりモンスターらしき者達の名前とその生息数や戦闘力にその素材がどのような価値があるかまで事細かに記される。
「……これっ完全に攻略本じゃないか?」
私はゲームは攻略本とか無しでストーリーを楽しむ派だったから正直ん~ってなってしまう。
しかしこれはゲームじゃない、やはりリアルファンタジーだし死んだら終わりなんだろうからここは安全面を考慮すべきなのかもしれない。
やっぱり死にたくはないしな。
「……行くとしますか」
道草ばかりしていられない。
歩き出そう、ここはきっと冒険とかがある世界だと信じてる。
だって魔法があるんだしな。関係ないかな?。
◇◇◇
そして歩くこと暫く。
三人で列を作る様に進む、前と後ろにゴーレムを配置して真ん中に私だ。
私の安全第一で進んでおります。
幸いまだモンスターとのエンカウントはないが、あのガイドブックによるとやっぱりモンスターがこの森にもいるらしいのだ。
ゴブリンとかスライムも普通にいるって書いてあった、ファンタジー世界の様式美ってヤツを感じたね。
しかし当たり前だが気を付けるべき危険なモンスターもいるようだ、この森だと
名前で想像するとコイツは影って名前が入ってるから夜に動く夜行性の可能性が高い、だから私は日があるうちに人がいる町に行こうとしているのだ。
素人なりに周囲に視線を飛ばしつつ警戒も怠らない、なんか革鎧一つで気分は既に冒険者なわたしである。
「……やっぱり町には冒険者ギルドとかあるのか?なら私も冒険者になれたりしないかな?」
そんなアホな事をのたまう中年異世界転生者。
すると後ろのゴーレムが不意に歩くのを止めた。
「………ん?どうしま…」
ガザッて茂みから音がした。
その瞬間後ろのゴーレムが私の左側に回り私に背を向けて、両腕をクロスさせる。
ボゴォオンッ。
目に見えない何かが私のゴーレムに直撃した。
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