弐
「というわけなんだよ」
「見事なまでの
城に到着し、客人として通された龍炎は、早速 剛覇に球のことについて聞く。
話を聞き終えた剛覇は、ふむ――と
「まあ結論から言うと、儂はこの球が何なのか知っておる」
「本当か?」
「うむ。実物を見るのは初めてじゃがの」
龍炎の顔に喜色が
それもそのはず。
あの村からこの城まで一週間、得体の知れない球が体内に入っている状態で過ごしていた。
自分の体がどうなるのか分からず、かなりの緊張状態にあった。
龍炎は思わず脱力して姿勢を崩す。
本来、姫の前でその態度はかなり無礼だったが、剛覇はそんなことを
2人の関係が身分や年の差を超えたものであることは、先程からのやり取りを見れば明らかだった。
「それで剛覇? この球はいったい何なんだ?」
「何と言われて一言で答えられるものじゃないの。これは……」
剛覇は床に置かれた球に目をやる。
「使い方によっては世界を歪める代物なのじゃから」
「世界を……歪める!?」
一安心していた龍炎だったが、すぐに緊張を取り戻す。
そんな大事だとは全く思っていなかったのだ。
「世界を歪めるって? 何でこんな球が!?」
「落ち着くのじゃ。そういうことにも使えるというだけじゃ。しかし、これをお主の父上が持っておったというのは興味深いの。あれじゃろ? お主の村って、南端のあそこじゃろ? あんなところにあったとは。いくら探しても見つからん筈じゃ」
剛覇の落ち着き払った態度に、龍炎は苛立ちを覚え声を荒げる。
「親父のことなんてどうだっていいだろ! 結局この球は何なんだよ!?」
「うるさいの。そんなに焦らんでも教えてやるわい」
そして、剛覇は説明を始めた。
「そもそも、この球はこの国の最重要機密事項といったものでの。
「特定の人間にしか知られてはおらん。儂のような城主など、一部の人間だけじゃ。
「そう考えると、ますますお主の父上がこれを持っていた理由が分からんのじゃが……。
「一農民のはずじゃろ? 何かも分からず持っておったのかの?
「これが何かを知っておれば、お主に預けるわけないしのう。
「ん? 親父のことはいいから早く話せって?
「分かった、分かった。相変わらず、両親の話になるとうるさい奴じゃ。
「この球が何かについて説明するには、この世界が創られたときのことから話さねばならん。
「この世界はの、5体の神によって創造されたのじゃ。
「冗談なんかではない。至極真面目な話じゃ。
「神なんかいない? 知らんよ。とにかく儂はそう聞かされておるのじゃ。
「とにかく、続きを話すぞ。
「神はそれぞれある自然物を司っており、そこから名前も付けられておった。
「5体の神の名はそれぞれ……
「火の神
「水の神
「土の神
「木の神
「金の神
「これらの神が力を合わせて創ったのが、儂らが生きておるこの世界じゃ。
「しかし、創ったはいいものの、世界は神の思惑から外れた方向へ発展していった。
「互いに傷付け合ったり、災いも戦いも繰り返される世の中となった。
「ま、これは儂ら人間のせいなんじゃがの。さっきの連中も然り。
「神は何とかこの世界を元あるべき姿、災いも戦争もない平和な世界にしようと、あるものをこの世界に残した。
「それがこれじゃ。正確にはその1つ。
「神は5つの球を残したのじゃ。もちろんただの球ではないぞ。
「それぞれに神の力が宿っておる。
「それを体内に取り込んだ人間は同族と呼ばれ、自然物を自在に操る神の力を手にするのじゃ。
「いやいや、嘘ではないぞ。お主も、お主の友人も、念じれば自然物を操ることができる筈じゃ。
「それが火か水か土か木か金かは分からんがの。
「試してみるって? あまり派手に動かそうとするなよ。
「最初はコントロールが難しいと聞くからの。
「…………何も起こらんの。
「少なくとも、お主の神の力は木と金ではないみたいじゃな。
「お主、信じておらんな。それなら後で残り3つの自然物で試してみよ。
「しかし、人のおらんところでやれよ。危ないからの。
「そんな力でどうやって世界を変えるのか? いいところに気付いたの。
「自然物を操れるのは、球に神が力を宿したための副次的なものじゃ。
「神の力の神髄、神骨頂は別にある。
「それが世界の創造じゃ。
「5人の同族が集まって願うのじゃ。新しい世界を。
「すると、その思った通りに世界は創り変えられる。
「同時に球は同族の体内から抜け出し、再び封印されるという話じゃ」
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