過去の君へ

海未

第1話 10年前の君よ

 ある日、手紙が届いた。

 大学生活が始まってから一年が経ち、それでも一人暮らしのホームシックはなおらない。

 そんなある日のことだった。



 君はどうしてますか? 笑ってますか? 泣いてますか?

 そばにいる人は誰ですか? 元気で暮らしていますか?



 手紙の差出人は、10年前の自分だった。




 暮らしていた町から一年、背のびをして過ごしています。あまり笑ってないけど、たまに本気で泣きべそをかいています。

 そばにいる友人はいるけれど、秘密は打ち明けられません。多分、健康には暮らせていません。

 10年前、笑い飛ばせた事が、今では悲しみに近いです。

 そう、でも優しくもなれていません。人を救ったことがないから。




 好きな人はいますか?




 喉につかえる人は沢山いるけど、みんな、好きでいれたように思えません。これから10年後の自分が心から笑えて、泣けるようにおまじないでもかけておきたいくらい。

 君が笑って、泣いて、そうやって、元気に過ごしていたことが宝物です。

 だから、この手紙を返すには、どうやろう?

 思い立って、ここに記します。

 心配をかけている人は沢山いるけれど、応援してくれる家族の言葉があたたかくて、割りに合わない自分がもどかしい。

 過去の君を大事に思うほど、今の自分を守ることができなくなります。

 祈ることさえできない。

 僕を許してくれ、10年前の君よ。





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過去の君へ 海未 @sea-children

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