第3話:一家団欒

 父であるオレゴン公爵が、兄の国王陛下に処刑されて一カ月が過ぎました。

 特に哀しくはないのですが、感慨はあります。

 母は公爵夫人からウェザン辺境伯家令嬢に戻りました。

 私と妹という、とても大きな子供付きですが、令嬢は令嬢です。

 でも私と妹は、ギリギリ貴族ではありますが、私達の子供は貴族ではなくなってしまいます。


「もう借金取りは来ないでしょうか、レジー御姉様」


 妹のリーナがまだ怯えてしまっています。

 国王陛下が私達は無関係と断言してくださったので、表向き問題はありません。

 問題があるとしたら、陛下の言葉を無視してでも貸金を回収しようとする、裏家業の連中だけです。

 ですがそんな連中が一番厄介ですから、元を断っておきましょうか?

 リーナを不安にさせるくらいなら、血の雨を降らした方がマシですからね。


「そうね、まず大丈夫じゃないかしら。

 貴族や士族、それに商人連中は、国王陛下が実の弟を死刑にするほどの厳しい処罰をされたから、騙された方も愚かで悪いと言われた陛下に逆らえなくなっているわ。

 臣籍降下した弟の借金を払えと、国王陛下には言いにくいでしょ?」


「だったら実の娘の私達から取り返そうとするのではないですか、レジー御姉様」


「陛下がオレゴン公爵を処分する前に、私達をオレゴン公爵から離籍させて、縁が切れているから借金を取立てるなと、厳しく言い渡してくださったから、まず普通の人達は請求しないわよ。

 無理に請求したら、どれほど愚か者でも、実の弟を処刑して気の荒れておられる陛下に、思いっきり八つ当たりされるのは目に見えているもの」


「でも、陛下の言葉すら平気で無視する裏家業の連中は、私達に報復しなければ、面目が立たないのではありませんか、レジー御姉様」


 リーナは臆病だから何もできないけれど、頭は悪くないのよね。

 いえ、むしろ一般的な貴族に比べたら、凄く賢いわ。

 そんなリーナだからこそ、裏家業の連中の怖さが分かっているのよね。

 あいつらは基本損得だけで動くのだけれど、時に裏家業で生きていくのに絶対に必要な、面目を優先させる事がある。

 面目を失うほど恥をかかされたら、同じ裏家業の連中に舐められてしまい、生きていけなくなるのよね。


「大丈夫よ、リーナ、私が何とかするから。

 めぼしい犯罪者ギルドの頭を二、三人殺したら、あいつらも大人しくなるわよ」


「おいおいおい、それは幾ら何でも乱暴じゃぞ、レジー。

 儂はお前達の三倍は長生きしている、ここはおじいちゃんに任せておけ」


 私達の祖父、ウェザン辺境伯マガドザ卿が話しかけてきました。

 祖父は私以上の武闘派だと思っていたのですが、違うのでしょうか?

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