第2話:取り潰し
「覚えてやがれ、女郎が、次会ったらただじゃおかないからな」
犯罪者ギルドのチンピラが、自分達で歩いて帰ることができるように、手加減してやったというのに、悪態をついています。
仕方がありません、しっかりと躾してあげましょう。
「手加減をし過ぎたようですね、警備隊の厳しい取り調べを受けなさい」
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
私はチンピラに直接触るのが嫌なので、二十五人全員を、靴の裏で膝が砕けるように蹴ってやりました。
一生足を引きずることになるでしょうが、これで喧嘩しても勝てなくなりますから、他人様に迷惑をかける事もできなくなるでしょう。
「御姉様、屋敷の前に放っておいて大丈夫でしょうか?」
妹のリーナがとても心配していますから、安心させてあげるのが姉の責任です。
「ちょっと貴男、警備隊までひとっ走りしてくださらない」
「はっぃいぃぃぃ」
隣の屋敷の警備兵にお願いしたら、急いで走って行ってくれました。
よほど私の事が怖いのでしょうが、何もしなければ攻撃などしませんよ。
まあ、妹を厭らしい眼で見たら、殺しちゃうますけどね。
王都犯罪者ギルドの連中を追い返した翌日、王宮から呼び出しがありました。
「オレゴン公爵夫人ミネバ、オレゴン公爵家令嬢レジー、リーナ。
かねてから三人連名で出されていたオレゴン公爵家からの離籍願い、余の格別の計らいを持って許可することにした」
「「「有難き幸せでございます」」」
やれやれ、これでようやく父オレゴン公爵と縁が切れます。
父親があちらこちらで作った、顔も見た事がない名前も聞いた事もない兄弟姉妹が何百人いようとも、これで煩わされることが無くなりました。
そしてなにより、父親と連座されて処分を受けることが無くなって安心しました。
「本来ならば離婚や離籍は許されない事なのですが、今回は神様の慈悲により、特別な計らいで認められたのです。
三人とも神様に感謝してください」
王宮付きの神官が恩着せがましく言ってくるが、確かに特別待遇です。
普通は家長である父親が認めない離婚や離籍を教会が認める事などありません。
マガドザ御爺様が賄賂を贈る事はありませんから、剣で脅したのでしょうね。
マガドザ御爺様に本気で脅迫されたら、拒否できる者はいないですから。
でも、マガドザ御爺様が脅迫し、教会が認めたとなると、オレゴン公爵家の取り潰しは直ぐに行われそうですね。
私の予想通り、数多くの貴族を騙したという理由で、オレゴン公爵家は取り潰しとなり、父は処刑されました。
実の兄である国王陛下がそこまで厳しい処罰をしなければいけないほど、父は貴族達から恨まれていたのです。
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