没落令嬢の秘密
克全
第1話:婚約破棄
「レジー嬢、オレゴン公爵は僕を騙していたのか?!」
これでもう何人目、いえ何十人目でしょうか、顔も名前も知らないどこかの貴族の令息が、父のオレゴン公爵に騙されて金を巻き上げられたと文句を言ってきました。
「騙したも何も、父が貴男に何を約束したのか、私は何も知りませんわ」
「私をレジー嬢の婿に迎えて、オレゴン公爵家を継がせるという約束だ。
その条件で、私は金貨十万枚もオレゴン公爵に貸したのだぞ」
こいつはよほどバカなのですね、もうこの結婚詐欺の話は、社交界でも有名になってしまっていて、最近は騙される者もいなかったのですが……
「ご愁傷様ですが、私と婚約している男性には、もれなく金貨一億枚の借金がついてきますが、それでもいいのですか?
貴男のように、父に騙されて私の婚約者になっている方が、私の知っているだけで四十二人おられますが、私と結婚してオレゴン公爵家を継いだ人には、残りの四十一人から詐欺で訴えられ、金貨一億枚の返済を訴えられますよ。
それでも私との婚約を続けて、結婚したいですか?」
「チクショウー、ちくしょう、畜生、チクショウー!
婚約は解消する、婚約破棄だ、だが覚えていろよ、金貨十万枚は必ず返してもらうからな、王家に訴えてでも、必ず返してもらうからな!」
あの男は、貴族ではないのかもしれませんね。
もしかしたら、貴族に憧れる商人の息子なのかもしれません。
そうでなければ、今この時期に、父に金を貸す貴族は居ませんから。
なんと言っても、国王陛下の我慢も限界に来ていて、重臣会議でオレゴン公爵家の取り潰しが話し合われたと、社交界で噂が広まっていますから。
私はともかく、妹のリーナの将来を考えなければいけません。
あの子は大人しいですから、社交界で虐められたら、自殺しかねません。
今までは、放蕩の限りを尽くすバカとはいえ、公爵の令嬢だったのです。
それが、国王陛下の逆鱗に触れて、取り潰された元貴族の娘になるのです。
まあ、普通それでは、社交界に出入りする事もできなくなるのですが、ウェザン辺境伯家出身の母上が、台所領を妹に相続させれば、陪臣準男爵くらいの地位は得られるのですよね……
「御姉様、レジー御姉様、どこにおられますのレジー御姉様。
また借金取りが表に来ておりますの、レジー御姉様。
御姉様と私を借金のカタに連れて行くと怒鳴っておりますの、レジー御姉様」
やれやれ、また犯罪者ギルドの連中がやってきましたか。
この前、ギタギタの半殺しにしてあげたというのに、本当に懲りない連中ですね。
「ここにいますよ、リーナ、大丈夫、私が追い払ってあげます」
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