第4話:武闘派

 はい、私が間違っていました。

 祖父は私よりも武闘派なのではなく、私の遥か斜め上を行く、超武闘派でした。

 私の考えは、個人で密かに裏家業のアジトに潜入し、頭目や幹部を数人殺して、他の連中を抑える程度の事でした。

 ですが祖父は、王都の家臣に加え、歴戦の戦いで得た戦友達に声をかけ、王家騎士団を上回る大軍勢を整えて、犯罪者ギルドを攻撃したのです。

 皆殺しと表現すべきか、それとも根絶やしと表現すべきか……


「おう、侯爵、お前さんとこには、元婿が迷惑をかけたようだな。

 まさかとは思うが、儂の大切な娘や孫に文句があるんじゃないだろうな?」


「とんでもない、マガドザ卿。

 卿は長年国のために戦ってこられた忠勇兼備の剛将です。

 そのマガドザ卿の令嬢と孫娘さんに文句など全くありませんよ」


「おお、おお、おお、それはよかった。

 儂もこの歳で昔のような決闘騒ぎは起こしたくないからのぅ。

 おお、伯爵、お前とこにも迷惑をかけたと聞いているが、恨んどるのか?」


「滅相もございません、ウェザン辺境伯。

 全てはオレゴン公爵の処刑で終わった話でございます。

 泣いて弟を処刑された陛下に恥をかかせるようなまねはいたしません」


 祖父は、最初の犯罪者ギルドを全滅させた後、珍しく積極的に晩餐会や社交界に出席して、父に騙され大損した貴族達を脅して回った。

 あれはどう考えても、母と私達に手を出したら殺すぞと脅しだった。

 犯罪者ギルドを皆殺しにしてから社交を始めたのは、未だに自分の力が健在だとアピールしてから、貴族達を脅かすためだ。

 もうそれだけでお腹が一杯だったから、祖父が若い頃にしでかしたという、決闘騒動については何も聞かないことにした。


「レジー様、ここにおられましたか。

 討伐軍の準備が整いました、お出まし願います」


 なぜですか、なぜこうなるのですか、私には意味が分かりません。

 どうして私が犯罪者ギルド討伐の総大将を務めなければいけないのでしょうか?

 いえ、私だけではなく、母上までが別動隊を率いておられます。

 王都の犯罪者ギルドだけでなく、王家領の主要都市にある全犯罪者ギルドを討伐するなど、話が大きくなり過ぎです。

 馬鹿な貴族や裏家業の人間を抑えるだけなら、一度の討伐で十分です。


「儂は王家に忠実な貴族じゃからの。

 王家の富をかすめる裏家業の連中は、この機会に根絶やしにするのじゃよ。

 今までは正当な理由がなかったから我慢していたが、大切な娘と孫を脅かされたのじゃ、誰憚ることなく皆殺しにできる、ワッハハハハ」


 怖い、本当の武闘派は怖すぎる。

 これを機会に、ウェザン辺境伯家の強さを全貴族に思い知らせる心算です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る