5,000兆円、欲しくない!
権俵権助(ごんだわら ごんすけ)
5,000兆円、欲しくない!
「腹ぁ、減ったなあ……」
五条大介は高架下に敷いたダンボールの上にあぐらを掻きながら呻いた。夜は腹の虫が一段と騒がしい。
事業に失敗し、四十代半ばで路上生活者の仲間入り。ポケットの中には十円と五円が二枚ずつ。全財産をはたいてもコンビニおにぎりにすら届かない。
目の前を、数人の酔った若者たちが談笑しながら通り過ぎていく。
「なあ、二軒目どこにする?」
「おい、給料日前だぞ。金ねえって」
今を楽しむ彼らの目には、落ちぶれた五条の姿は映らない。
(金がねえって言っても、俺よりはあるだろ……)
五条は心の中で呟き、自嘲した。
「あ〜あ、5,000兆円欲っし!」
若者が発したその言葉に五条は思わず吹き出した。なんだ5,000兆円って。多すぎるだろ。俺みたいなホームレスだって、夢見るのはせいぜい「どこかに1万円落ちてないかな」くらいなもんだぞ、と。しかし、彼はすぐにその考えを改めた。
(……いや、違うな。言うだけならタダなんだから、夢は大きい方がいいんだ。一万円なんてみみっちいことを言ってるから、いつまで経ってもこんな生活から抜け出せないんだ。……ようし)
言葉は言霊だ。口にすれば力になる。この一言から新しい人生を始めよう。そんな気持ちで彼は呟いた。
「5,000兆円、欲しいなあ」
ガサリ、と何かがダンボールの床に落ちた。
「……えっ?」
茶色い、長方形の紙。一瞬ゴミかと思ったが、そこには肖像画が描かれていた。福沢諭吉。五条にとってはずいぶんと久しぶりに見る顔だった。
「……っ!」
瞬時にそれを拾い上げ、すばやく懐に仕舞い込んだ。
(ほっ、本当かよ! 偶然にしたって、こりゃあ助かったぞ……!)
一万円あればしばらくは食うに困らない。晩飯にありつけると分かった途端、腹の虫がまたうるさく鳴き始めた。
※ ※ ※
「一万円入りまーす!」
牛丼屋の店員が、五条からふんだくった万札をレジへと押し込んで言った。普段はもっと丁寧に接客しているのだが、今回は五条が名残惜しそうにいつまでも諭吉を手放そうとしないのが悪かった。
「ごっそさん」
久方ぶりの温かい飯を堪能した五条は、店を出るとすぐにお釣りを確認した。五千円札が一枚、千円札が四枚、五百円玉が一枚。間違いない。
「…………」
いや、万が一ということもある。心配になった彼はもう一度数え直し始めた。五千円札が一枚、千円札が四枚、五百円玉が一枚、一万円札が一枚。
「……は?」
なんだ、この一万円札は。さっき店員に渡さなかったか? いや、確かにレジに吸い込まれるところを見たはずだ。……もう一度数えてみる。
五千円札が一枚、千円札が四枚、五百円玉が一枚、一万円札が二枚。
「ど、どうなってんだよオイ……」
状況が飲み込めない。どう考えてもおかしい。さらにもう一度数えようとして、あることに気が付いた。
「……なんだ、この数字」
右手首に赤い数字が痣のように浮き出ている。それはあまりにも桁数が多く、手首をぐるぐると何周もしていた。
4,999,999,999,970,000。
一体、何桁あるのだろうかと数えていると、急に右手首の根本がブクブクと泡立ち、ジワリと人の顔が浮かび上がった。
「ひっ!」
その顔は、手首から分かれ出た一枚の紙の上に固定された。福沢諭吉の描かれた一万円札。これで三枚になった。
4,999,999,999,960,000。
同時に変化した手首の数字を見て、いかに信じがたい超常現象とはいえ、何が起こっているのかは理解できた。
「5,000兆円だ……」
もし誰かに見られたらマズい。五条は慌てて右手を上着のポケットに突っ込んでその場を離れた。
しかし彼には逃げ込む家もなければ、金を振り込む銀行口座も無い。うろうろとあてもなくさまよっているうちに、ポケットがブクブクと膨れ上がってきた。この中では既に相当な金額が生まれているはずだ、と手首を見ると。
(まだ4,999,999,999,530,000!? 全然減ってないじゃないか! このままじゃ……!)
その心配通り、入り切らなくなったお札が数枚ポケットから溢れ出た。ひらひらと舞い落ちる一万円札に、通りすがったサラリーマンが目を向けた。
「えっ、お金……?」
「やめろ! 俺の金に触るな!」
五条はサラリーマンを突き飛ばし、落ちたお札を慌てて拾い集めた。しかし、そこへまた別の手が伸びてきた。
「俺のだって言ってるだろ!」
その手を掴んで盗っ人を睨みつけた。が、残念ながら五条に勢いがあったのはそこまでだった。
「あんた、このお金どうしたの?」
掴んだ手の持ち主は制服に身を包んだ警察官だった。ホームレスが大量の万札を裸のまま両手に抱えている。こんな怪しすぎる状況を見過ごす警察官などいない。
「いや、これは…………手から勝手に出てきて……」
「……へえ、そうなんだ。じゃあ、ちょっと署まで来てもらえるかな」
※ ※ ※
「……マジか、これ」
五条を連行した男と、派出所に駐在していた男。ふたりの警察官が、その不可解な光景を眺めていた。
はじめはバカな言い訳だと思っていた彼らも、実際に手首から次々と高額紙幣が量産される様子を目にしてしまっては、あ然と口を開けるしかない。
「どうなってんの、それ……?」
警察官の一人が尋ねたが、混乱の渦中にいる五条が答えられるはずがない。
「それにしてもこれ……本物にしか見えないな」
急遽、手首の下に用意されたポリバケツに溜まっていくお札の中から一枚をすくい上げて、もう一人の警察官が言った。天井のライトに向けてみる。……透かしも完璧だ。だが、すぐにもう一人の警察官がそれを否定した。
「いや、本物なわけないでしょ。だってこれ、造幣局で刷られてないんだから」
「そりゃそうか」
「……………………」
「……………………」
本物ではない、ということは。
「おい、これ……」
「つまり、偽札の製造現場ってことか……?」
ようやく事の重大さに気付いた二人が慌てはじめた。
「おいっ、お前! まさかこの金どこかで使ってないだろうな!?」
「えっ!? いや、あの……さっき、駅前の牛丼屋で……」
「おい、駅前の牛丼屋だ! 急いで回収してこい! オレは本庁に繋ぐ!」
「わかった!」
警察官の一人がバタバタと慌ただしく出ていき、残った一人は焦った様子で電話をかけ始めた。
「あ、あの……。俺、これからどうなるんでしょうか……?」
状況に一人ついていけない五条が恐る恐る尋ねると、警察官が受話器を耳に当てながら答えた。
「さあね。ただ、偽札なんてオレらだけで片付けられる問題じゃないから、悪いけどもっと上に預けさせてもらうよ」
「そ、そんなに重い罪なんですか……?」
「刑法第148条第1項。通貨偽造・通貨変造罪は無期又は3年以上の懲役だよ」
「そ、そんな……」
「まあ、あんたの場合は特殊すぎるから、どうなるのかサッパリわからんけどね」
※ ※ ※
「例の『金の成る男』はどうしてる?」
警察本部に戻ってきた刑事・城崎和彦が同僚の岩田守に尋ねた。元・首相を祖父に持つスマートな城崎と、現場主義を掲げる元ラガーマンのゴツい岩田。対象的な二人は署内でもよく知られたコンビだった。
「当分は検査入院だよ。つっても、あんな……手首から金が出てくるなんて症状、誰も見たことねえんだから、先生方もお手上げみたいだぜ」
「そうか」
城崎は手にした缶コーヒーを飲み干すと、フウと一息ついて言った。
「科捜研から報告書を受け取ってきた。……あの金、ホンモノだそうだ」
「精巧に作られた偽物ではなく?」
「誰にも見分けがつかないってことは、どこで作られていようが市場に紛れれば本物と変わらんよ。おかげで今、財務省は紙幣刷新の前倒しが決まって大わらわさ」
「ハハ、元々その予定があって助かったな。新紙幣なら偽造防止のレベルも上がってるだろうし、これで解決だな」
「……それで済めばいいんだがな」
城崎は、空になったコーヒー缶をゴミ箱に投げ捨てて苦い顔をした。
「なんだ?」
「あの金、矛盾しない通し番号が振られていたそうだ」
通し番号……正式には紙幣記番号と呼ばれる、紙幣一枚ごとに割り振られた、色・アルファベット・数字の組み合わせによる識別コードである。
「矛盾しないって、どういう意味だよ」
「これまで刷られた紙幣と一枚もダブりが無いってことさ。事件当日に造幣局で刷られた一万円札をすべて洗い出した結果、例の金に印字されている通し番号だけがすっぽりと抜け落ちていることが分かったんだ」
「バカな。そんなことはありえない」
「そう、普通ならありえない。つまり、今回の事件は普通じゃないってことさ」
※ ※ ※
「今日退院だってな。おめでとう」
数日後の夜、五条の病室にやってきたのは岩田刑事だった。二人が会うのは、事件当日に本庁で行われた取り調べ以来だった。
「ハハ、すげえ格好だな」
ベッドに腰掛けた五条の右手首は透明なチューブに接続され、その先は特殊な掃除機に繋がっていた。新たに一万円札が生成される度にバキュームが作動して吸い込む仕組みで、看護師が定期的に溜まったお金を回収しては、病院に常駐する警察官へと届けていた。時間が経つほどにお札が排出される間隔が短くなってきており、もうポリバケツで回収などと悠長なことは言っていられなくなったのだ。
「……うおっ、マジで新紙幣になってる!」
チューブを流れる一万円札を見て岩田が笑った。紙幣が刷新されると同時に、手首から生成されるお札も新しいデザインへと変わった。城崎の心配していた通り、財務省の努力は水泡に帰したわけである。
「今日はいい話と悪い話を持ってきたんだが、どうせ両方聞くんだからどっちが先でもいいだろ。まず、いい話だが」
岩田は人の意見も聞かずに勝手に話し始めた。
「お前、無罪になったぞ」
「えっ! 本当ですか!?」
「ああ。医師の診断結果報告によると、例の金はお前の体と繋がっている間は主にタンパク質でできていて、離れた途端に本物と同じ材質に変化するらしい。どういう化学変化なんだかサッパリわからんが、とにかく医者に言わせると、あの金は汗や垢と同じ老廃物に分類されるらしい。いくら紙幣とソックリだって言っても、体から自然に出てくる老廃物で逮捕はできねえよ」
「そうですか……はぁあ〜〜〜……」
五条はようやく大きな心配事が片付いて息をついた。だが、この後には「悪い話」が待っているのだ。
「ああ。確かに無罪だが、放免ってわけにはいかねえ」
「えっ」
「分かってるとは思うが、お前の体からは今も非公式の一万円札が生まれ続けてる。言うなれば、歩く偽札製造機だ。そんな奴をそのまま世に放つわけにはいかんだろ」
「それじゃあ、俺はこれから一体どうなるんですか……」
「紙幣刷新作戦が失敗してすぐ、上の方で色々な解決案が出たらしい。俺が今日ここに来たのは、そのうちの一つを実行するためだ。さあ、もう退院の手続きは済ませてある。ついてこい」
「えぇ……」
自分の知らぬところで話が動いていることに不安を覚えながらも、五条には従う以外の選択肢は無かった。
※ ※ ※
「さて、目的地までドライブしながら話そうか」
五条は、岩田が運転する車の後部座席に座っていた。手首に繋いだままの掃除機が邪魔で、座り心地はよくない。
「まず最初に考えついたのがコレだ」
と、岩田は片手で運転しながら、上着の胸ポケットから一万円札と携帯用灰皿を取り出した。
「今、手首の数字は?」
「えっ。……4,999,999,985,440,000ですけど」
「見てな」
信号待ちで両手の空いた岩田は、一万円札を灰皿に突っ込み、ライターで火をつけた。
「あっ、何するんですか! 一応、俺の金なんですよ!」
「うるせえ、黙って見てろ」
そんな問答をしている間に、お札は完全に灰になってしまった。
「……おい、手首の数字は?」
「えっ?」
「数字だよ」
「ええと……4,999,999,985,450,000。……あれっ?」
「そういうことだ。燃やすとカウントが戻っちまう。だから焼却処分する作戦はボツになった」
「はあ……。っていうか、人の金を勝手に燃やさないでくださいよ!」
「……言っとくけど、それ使ったら無期又は三年以上の懲役だからな」
「うう、老廃物なのに……」
青信号。岩田は再びアクセルを吹かした。
「要するにだ。五千兆円を全部出し切って、手首の数字をゼロにすりゃいいわけだ」
「まあ、そりゃそうですけど……」
もちろん、それは五条も一度は考えた。しかし。
「ネットで調べたんですけど、五千兆円ってとてつもない物量らしいんですよ。全部出し切ったところで、一体どこに置くつもりなんですか?」
「地下と海底を使う案が出た。なんでも、放射性廃棄物のために用意していた広大な格納庫があるらしい」
「じゃ、じゃあ……そこに五千兆円すべてを吐き出せば自由の身に!? ……あっ、なるほど! 今そこへ向かってるんですね!」
「だったら良かったんだがな。残念ながら、この案も却下された」
「どっ! どうして!」
思わず後部座席から身を乗り出した五条を、岩田が「落ち着け」と手を上げて制止した。
「理由を説明する前に。……これはお前も気付いてるとは思うが、金が生成される速度が少しずつ早まってるだろ」
「は、はい……」
「このままで行くと、約半年後には秒間千枚のペースで排出されることになるらしい」
「千枚!? この手首から!?」
「そして、燃やした金はお前の体内に戻る。それを踏まえた上でよく考えてみろ」
と言われてもピンと来ない。あまり気の長くない岩田は、返答を待たずに説明を始めた。
「もしも、収納した五千兆円が敵対国に狙われたら……たとえば、スパイが格納庫に侵入して火をつけたら?」
「そりゃあ、俺の体に戻って……あっ」
「そうだ。その瞬間、凄まじい勢いで五千兆円がバラまかれることになる。いきなり国家予算の50倍もの金が市場に溢れ出たらどうなると思う? 通貨の価値が一気に下落してハイパーインフレが起こり、日本経済はたちまち崩壊する。そんな危険なものを広大な敷地で管理・保管するなどまったく現実的ではない。そういう判断だ」
「そ、それじゃあ……今この車は一体どこへ向かってるんですか?」
その質問に合わせたかのように岩田はブレーキを踏み込んだ。
「着いたぞ。ここが目的地だ」
※ ※ ※
サイロと石油タンクが規則的に立ち並び、幾つもの煙突から伸びる煙が夜景を覆い隠している。車から降りた場所は火力発電所だった。
「今日からここに住んでもらう」
岩田の言葉は冷徹だった。それは、彼が感情を押し殺し、仕事に徹する時の声だった。
「住むって、どういう……」
「中にお前専用のブースが作られている。そこにはダイレクトに焼却炉へ繋がる穴があるから、これからは24時間その穴に右手首を突っ込んでいてもらう。無論、食事や排泄その他の世話は専門の係官をつけるから……」
「ま、待ってくれよ! そんな生活、いつまで続けさせるつもりだ? まさか一生……」
「…………」
岩田の無言がその返答だった。紙幣が生まれる度に燃やし続ければ保管をする必要はない。それどころか、無限に生まれ続ける紙幣は尽きない燃料となる。五条の人権を無視すれば、これ以上ない解決策である。
「そんな、そんな……!」
「悪いが従ってもら……」
岩田が言い終わる前に駆け出していた。逃げる場所など無くても、ここにだけはいられない。だが、腕にはチューブで掃除機が繋がれている上、路上生活で弱った体が元ラガーマンに及ぶはずもない。すぐに背後から肩を捕まれ、押し倒された。
「逃がすわけにはいかない」
五条の背中に体重を乗せて動きを封じようと、姿勢が低くなったところを狙って。
「うがっ!」
五条は思い切り頭を後ろに反らし、岩田の鼻っ柱に頭突きを食らわせた。
「っでぇ!」
顔を抑えるために思わず肩から手が離れた瞬間を見逃さず、五条は拘束から抜け出して再び駆け出した。だが。
「……うっ!」
上向きのヘッドライトが五条の目を焼いた。前方から走ってきた車の中から現れたのは城崎だった。
「おお、城崎! いいところに! そいつ捕まえてくれ!」
手で鼻を抑えながら岩田が協力を仰ぐ。しかし城崎は動こうとはせず、左手に嵌めた腕時計に目をやった。
「あと一分だ」
五条は状況が掴めず、二人に挟まれて動けない。一方、岩田も城崎の考えが読めないでいた。
「おい、五条。このライターで掃除機の中の金を燃やせ」
と、城崎はポケットから取り出した百円ライターを五条に投げて寄越した。五条は訝しんだが、捕まえるのならとっくに二人がかりで襲ってきているだろうし、武器としても使えるライターをわざわざ渡す理由もない。城崎には何らかの考えがあるのだ。
「他の金はもう全部燃やしてある。急げ、次の金が出てくる前に」
言われて手首を見ると、確かに減っていた数字が元に戻っている。
「…………」
左手で無理やりチューブを引きちぎり、火をつけたライターをその中に放り込むと、たちまち掃除機から黒い煙が吹き出した。そして。
5,000,000,000,000,000。
手首に始まりの数字が現れた。
「よし。3……2……1……」
城崎が腕時計の秒針を見ながらカウントダウンを読み上げた。
「ゼロ!」
背後の火力発電所から、0時を告げるチャイムが鳴り響いた。直後、五条の右手首が泡立ち、人の顔が浮かんだ。
「……へ?」
それは五条のよく知っている顔だった。だが、福沢諭吉ではない。浮かび上がったのは五条自身の顔だった。皮膚から剥がれ落ちたそのお札を空中でキャッチし、目を見開いた。
「な、なんだこりゃ……」
五条の肖像画が印刷されたそのお札にはこう書かれていた。
「五千兆円……」
0。
手首の数字は事件の終わりを示していた。
「本日0時より、財務省が新たに発行した五千兆円札だ。……ジイちゃんのコネ全部使ったぜ、まったく」
城崎が頭をボリボリと掻いて息を吐くと、五条は安堵からその場に崩れ落ちた。
「生成される金は常に最新の紙幣。そして常に最高額。その法則に従うなら、新しい高額紙幣を作ればいい。……なんとか上手くいったみたいだな」
城崎は呆然とする五条に近寄り、しゃがんで目線を合わせた。
「ま、金なんてありすぎても困るもんだ。あんたも色々大変だろうけどがんばんな。……というわけで、この五千兆円札は政府で厳重に管理させてもらうぜ」
そう言って、五条から五千兆円札を取り上げた。
「んじゃ、事件解決ってことで。おい岩田、夜食にラーメンでも食いに行くか」
「あ、ああ……」
呆気にとられていた岩田が、声をかけられてようやく我に返った。
「ところで……それ、使えるのか?」
岩田が興味本位で尋ねると、城崎は軽く頷いた。
「もちろん。正式な日本の紙幣だからラーメンだってコレで食えるぜ。……ただし」
苦笑しながら補足した。
「釣りは出ないがね」
-おしまい-
5,000兆円、欲しくない! 権俵権助(ごんだわら ごんすけ) @GONDAWARA
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