良かった点
①影の努力
こういったエクソシスト系は、なにか大きな物事が起きて初めて活きる集団と思います。常に研鑽を積み、たった数刻の退魔までを待つ。きちんと学校に通い、術を学んでいく姿勢は好感がもてました。
かの日本海海戦の秋山参謀もおっしゃっていました。
30分の御用のために、数年の訓練を積んだ。と。
御作は、日本人の好むところだと思います。
②入りの良さ
冒頭には読者を引き付けるためのインパクトが求められると考えます。
御作ではいきなりの異常事態で、興味関心をひっかけるフックの役割をきちんとこなしており、「いったい何が起きて、これからどうなるんだろう」と思わせるのに十分な価値を出していると思いました。
③無理な人物増加はしない
章の進行に合わせて、緩やかに人員が増えていくのは良点であると思います。
2章の狛犬あたりがやや過多な気もしましたが、あれが恐らく読者が把握できる限度ではないかと。
自作に熱を込めると、役割を持たせた人物を多く配置したがるのは作者のサガですが、それを抑えてキーパーソンをしっかりと描写していくことは大切だと認識させられました。
気になった点
①スタイリッシュ?
好みの問題も多分にしてあるかと思いますが、個人的に主人公の容姿が若干古いかなと感じました。漂白済みのアルビノ系を出したくなる気持ちは、私も十分に理解できます。ですが、万作に同じ容姿のキャラは出てきますので、何がしかの工夫が求められるかと。
目を狙う、という設定は良かったです。
②相棒不在
第2章までしか読了していませんので、それ以降に出てきていたら申し訳ありません。
例えば名作の「うしおととら」などでは、きちんと主人公と比翼になる相棒の存在があります。主人公一人では灰汁が強い、乃至は存在感が薄いといったケースの解消に使える手だと思います。
ホームズにワトソンがいるように、主人公にも頼れる相棒をつくってあげられると良いかなと感じました。
現状はよく叱ってくる女の子しか該当していませんが、相棒と呼ぶには些か……です。
③独創的な……
「救急如律令」以外の、主人公オリジナルの業が欲しいところです。いわば作品の顔となるものが不足していると感じました。
おそらくですが、一般的な男子が巻き添えで退魔の道に入る。そしてどうにかこうにか一般的な術を身に着けた。というような読者に近い存在としての主人公を成立させようとしているのかなとも思います。
それはそれで読者によ寄り添う処置ですが、読者というものは我がままなのです。小説に自分を投影しがちで、そこで自らのあこがれを見出したいのだと考えます。
なので、これぞ本作の売りである! というものをこしらえると、より深みがますのではないかと存じます。
以上、よろしくご査収くださいませ。
おいげん