第四十七話 動き出す歯車
世界の7割を支配し、もはや世界統一まで、もう一歩という魔王城をレイ・ハーバーは迷いの無い様子で、
「全く面倒な作りだな。
誰に向かって言ったわけでも無いレイの独り言は、耳が痛くなる程の
「さて、王様のご
魔法陣の中へ入ると、一瞬にして景色が切り替わる。レイ自身もここが何処なのかわからない。だが時間の
「これが王城ともなれば、絵にもなるんだろうけど、ただの平地に玉座ってバランスが悪いよ。こういう状況はシュールっていうんだっけ。ソウタが言ってたな」
レイの言う通り、
「君も、僕も長く生きているけれど君には不自由をかけるね。まあ、僕も外界との
レイ・ハーバーは勇者である。世界を救う勇者、世界を救うとはどう言う事か、その意味がわかった時にはもう遅かった。それでも、仲間を
「君と会うと、どうも
振り返ろうとしたその瞬間、
「これは…ちょっとマズイかな…仕方ないけど早めるしかないか…もう少し耐えてくれよ」
レイはそれだけ言うと振り返り魔法陣の中に消えていく。
(無理を言ってくれる。だが長くは持たぬぞ、我が友よ…)
何処からともなく聞こえた声は、誰に聞かれる事もなく再度発せられる事もなかった。
魔王城に戻ったレイは急ぎ配下に連絡を取る。異世界の技術は戦闘に使えるモノが
「今動ける者は至急玉座の間に来てくれて。大至急だ。僕も向かっている」
来た道を戻るのだが、いちいち
玉座の間には、既に3人が控えていた。
「遅れて悪かった。リノ、フィア、ソウタ。よく集まってくれた。早速だけど計画を早める必要が出てきた。リノ、アレは持ってきたかい?」
「勿論です。
リノから差し出された剣を鞘から抜くと、刀身に刻まれた紫色の模様が不気味に
「効果の
「はい。人間、亜人、魔族と試してみましたが、扱い自体は通常に剣と差がありません。私の結界でも簡単に」
リノの魔法は
「ありがとう。君を信じよう。ソウタ、君にこの剣を与える。いいかい?次負ける事は許さない。だが絶対に殺すな、それだけは必ず守れ。生きていればそれでいい」
「ああ、必ず…で?あの件の事は?オレが仲間になった理由は忘れてねぇだろう?」
戦闘能力だけなら、レイにも匹敵するが性格なのだろうか
「ああ、忘れていないよ。この件が片付いたなら…ね、それまでは指示に従って貰う。いいね?」
ソウタは剣を受け取ると、ニヤッと笑った。異世界人というのは皆こうなのか?と考える。それとも彼が特別なのか、レイに判断するのは難しく、もしここに彼女がいたら…と考えてしまう。
「フィア、君は彼らに接触してここに連れてきて欲しい。その為の転送石を渡す。連れて来られるのは魔王城前までだけど。そこからは君が案内してくれ。出来るかい?」
「はい。
「連れて行く人選は君に任せる。上級魔族でも構わないけど、どうする?」
「アーシャを連れて行きます」
少し不安も残るが、彼女が決めたのなら文句はないと
「リノ、君はソウタ、フィアと共に彼らと
「はい、必ず成果を上げてご覧に入れます」
レイは配下たちと彼らの戦力差を考える。
「それじゃ、よろしく頼むよ。フィアはアーシャと一緒に王都へ行ってくれ。僕もライルにこのことを伝えに行くから」
そのまま王都へ転送魔法を使い、騎士団の
「そう言えば僕は力以外で君に勝てた
レイは大きく息をはくと、石垣を後にし騎士団の詰め所へ向かう。準備が足りないのは事実、だが時間もない。こうしている間にも戦友が命を懸けている。そう考えると徐々に早足になり、顔からは笑みがなくなる。ライルと合流し、魔王城へ戻ると急ぎあの空間へと向かう。
剥製のひびは僅かではあるが、先程よりも大きくなっている。玉座の後ろにある地面を払うと階段が現れそれを降りていく。もう一度これを手に取る時レイは本当の御伽話の勇者になる。
「さあ、行こうか。勇者にしか扱えない聖剣よ、僕に力を貸してくれ」
その言葉に応えるように、聖剣は輝きをさらに増した。
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