第二十八話 あたらなる旅立ち
僕はあの後3日程眠っていたらしい。アオイやカインさんから聞かされた話ではあったけど、僕の
オリジンから授かった加護が今も健在かどうか確かめるために外に出て、目を閉じ、集中していると、やはり精霊の存在を感じられる。目を開ければ
「で、これからなんだけどよ、オレから提案がある」
そんなある日の午後カインさんから、これからの動きについての提案があった。
「いつまでも
行くのは構わないと思うけど、どうも僕らには明確な目的というものがない。アオイには個人的な目的があるんだろうし、カインさんは恐らくアオイと旅がしたいだけなんだろう…それに対して僕は、ただその流れに付いていくだけ。何か共通の目的でもあれば…
「カイン…それにマコトも聞いて欲しい。正直私はまだ復讐を
カインさんと顔を合わせると、彼は
「アオイ…僕は…前にも言ったけど君と一緒に居るために今の場所にいるんだ。本音を言えば復讐なんて止めて欲しいけど、きっとそんな簡単に割り切れるモノじゃないのも理解はしてる。だから…僕の考え方で君が間違っていると思えば、僕は全力で君を止める。それが例えアオイの目的であってもだ、そんな僕で良ければアオイの為に全力を尽くすよ」
「オレもエレノアと一緒に行くぜ?アーシャには個人的な恨みもあるが、
「二人とも…ありがとう。それじゃ今後の事なんだけど、カインの提案通り王国領内を目指そうか。帝国よりも歴史があるから魔法技術は先を行ってるんじゃないかな?」
そうして僕らの次の目的地が決まった。明日の出発に備えて早めに休むと、夜中に目が覚めた。3日も寝ていたんだから無理もないのかな?小屋には寝台が一つしかないのでそこをアオイが。カインさんはソファでイビキを書きながら眠っている。そっと起きだして外へ出ると辺りは耳が痛くなるほどに無音の空間が広がっている。
空を見れば赤と緑の月明りが辺りを照らしていた。目を伏せると昼間より精霊の数に変化があるのがわかる、昼と夜で活動する種類が変わるのかな?何だか人間みたいだ。
「どうしたの?眠れない?」
「まあ…ね。3日も寝てたみたいだから目が冴えちゃって…」
こうしてアオイと話すのも何だか久しぶりのような気がする。
「マコトは本当に強くなったわね、でも…もうあんな真似はしないでね?」
「あの時は夢中で…それを言うならアオイだってそうだよ。自分を
僕たちは互いに笑い合った。オリジンとの出来事は言うべきじゃないだろうな、彼女には余計な気遣いはさせたくない。
「僕はこれから何て呼べばいい?エレノア?」
「今まで通りでいいわよ。今の私はアオイよ、前の記憶は持っているけどきっと別人だから」
もし…全てが終わって彼女が向こうの世界に帰ると言ったら僕はどうなるのかな?戦う決断をしたのを
「改めて、色々迷惑かけると思うけどよろしくね。マコト」
「うん。こちらこそ迷惑をかけるだろうけど、よろしくね」
再び同じようなこと言った事に二人で笑い合えた。いつまでもこんな時間が続けば良いのに…
翌朝、いつまでも寝ているカインさんを起こし出発の準備を整える。彼の装備は動きやすそうな革鎧にシンプルだが強固そうな槍だ。先頭に彼が立ちアオイがその後ろ、僕はその後ろで何だか有名なゲームの隊列みたいで少しおかしい。
「国境だが…どうやって抜ける?少なからず
…あれ?向こうの世界で国を行き来するのに必要なものがあったような気がするが、どうにも思い出せない。オリジンの言っていた忘れるとは、こういう事か。少しづつ忘れていって、いつかは思い出す事すらなくなってしまうのだろう。
「マコト?どうしたの?」
僕の表情を見てアオイが声を掛ける。今は考える事じゃない、決めた事なのだから。
「ああ…ゴメン。少し考え事をしていて。例え遠回りなったとしても出来るだけ人目に触れるべきじゃないと思うな。
「そうね。カイン、ルートは任せるわ。なるべく慎重にね」
「おう!任せとけ、なら街道を外れるが、言ってみれば裏ルートだ。正規ルートと違って、裏商人なんかも使う道だから気を付けろよ」
その指示に従い街道を少しづつ外れ、やがて森の中を進んでいく。アオイが横に来て小声で話す。
「パ**-トみたいのがあればいいのにね」
?アオイの言っていることが判らない…何を言っている?「あればいい」という言葉から向こうの世界の事だろうとは
「そ、そうだね」
そう言って話を合わせるしか出来なかった。
やがて森は一層の深さを増していく。道なき道を歩き、ようやく一息つける場所に出た。
「少し休もうか。…いや、オレが疲れた。良いよな若いモンは体力があってよ」
「カインも随分とオジサマになっちゃったわね、あのころとは大違い」
「うっせー。エレノアだって似たようなモンだろ?」
「残念、私は『まだ』17歳よ?肌の張りが違うわよ」
そんなやり取りをしている二人を横目に、上を見上げると木々が生い茂り空が見えない。僕も座ろうかと腰を下ろそうとすると、精霊たちが異変を知らせてくれた。感知の腕輪には何も反応がない…精霊たちの範囲はどれほど広いのだろう…
「二人とも、精霊たちが異変を知らせてくれました。左前方…距離まではわかりませんが、こちらに向かっている訳ではないようです。どうしますか?」
「おいおい…オレにはなんも感知できないぞ?ま、お前さんが言うなら、そうなんだろうが…進む方向と一緒だな。少なからず影響があるかもしれん、行くぞ」
カインさんを先頭に、慎重に進んでいくと
「マジかよ…マコトがいりゃ不意打ちなんてありえないな」
彼が指さす方向を見るとモンスターが数体、馬車を取り囲んでいる。大きさからみてオークと…ゴブリン、それに犬系のモンスター…
「オークが3、ゴブリン5、ハイウルフ3か…モンスターって
「今いるヤツらは基本は同族でしか組まんよ。指揮するヤツがいるんだろうな、少なくてもヤツらよりは格段に強い…ってことでオレはゴブを倒す」
「ならオークは任せてね…マコト?ハイウルフは任せていい?」
「う…うん。大丈夫だよ…そうだ、アオイの適正は火と光だったよね?カインさんの適正を教えて貰っていいですか?」
「ん?オレは地だけど、それがどうした?」
ひょっとしたら二人の手助けが出来るかもしれない。
「ソウタが言っていた加護を試してみようと思います。二人の攻撃に精霊の加護を…」
アオイの剣には炎、カインさんの槍には大地の加護を…よし、上手く精霊を
「何も変わってないけど…大丈夫なのか?」
「取り敢えず、戦ってみてください」
そうして僕らは茂みを飛び出し、モンスターと対峙する。これが初の
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