第2話 出会い
改札を抜ければ高校迄は一本道で両脇には小さいながらも商店街があり通学時間帯と帰宅時間帯はそれなりに混み合う。どの店も学生をメインターゲットとしているようで、安く軽食が取れるところや文具店、少しお洒落なカフェとコンビニなどが並んでいる。校門の横では毎度の事ながら生徒会のメンバーが服装チェックをしている。それなりの有名高校で進学校ともなれば当たり前の光景なのだろうか。
「
「会長…おはようございます」
生徒会会長
「そういえば今日からだね。妹さんが高等部に来るのは、よかったら是非生徒会に入って貰いたいな。長部君からも言ってくれないだろうか」
「聞いてみます」
当たり障りのない会話をして上履きに履き替え長い廊下を渡ると
僕の名前を探す……
運動も容姿も並以下ならばと勉強だけは頑張った甲斐もあって取り敢えずはAクラスに割り振られていた。1年からの同じクラスの人もいるがほぼ知らない人だらけだ。そんな中ザワッと背筋が震えた。周りの人達は僕なんかに気付きもせず
「気のせいか…」
2ーAの引き戸を開けると視線が集まるが、僕とわかれば皆、元の談笑に戻る。わかっていたことではあるが今年も友達は出来そうにもないな。黒板に
「最後になったが本日より転入生が入るので紹介しよう。入ってきなさい」
「おおー」
「すっげー美人」
「えぇ?可愛い系じゃない?」
様々な感想が飛び交う中、担任は自己紹介を促うながす。
「本日より転入してきました。
…あれ?透き通るようでハッキリと聞こえるこの声って今朝の声に似ているような…
転校生に様々な質問が飛んでいるが彼女は、にこやかに質問をかわし指定された席に着く。
よくよく見れば整った顔、サラッとした
しまった…ジロジロ見すぎたか。
「*****」
聞き取れなかったが何かを言っていたように思えた。慌てて視線を外し授業に集中する。
転校生自体が珍しく休み時間ともなれば彼女の周りに人だかりができていた。今まで住んでいた場所、趣味、部活といった当たり障りのないことから恋人の有無まで…あっという間にクラスに溶け込んでいった
何度目かのチャイムが鳴り、授業の終了を知らせる。僕にとっては
授業中は周りを気にしなくても済むので良いが、昼休みともなれば嫌でも周りの
「神坂さん、お昼どうするの?」
「良かったら学食行かない?」
長い休みともなれば彼女の周りにはより一層の人だかりができる。
…学食への退避は無理か。
??僕は何で彼女を避けるんだ?学食だって広いし鉢合わせるなんてそうそうないのに…
まぁいいや購買で買って何処どこかで食べよう。空を見れば今にも雨が降りそうで外で食べるのは避けた方が良いのかも…いや、逆に誰もいないから気にせず食べられるか…
そうと決まれば財布を取り出し、購買へ向かう。学食が人気なので購買は空いている思ったが空を見れば…
「まぁ、そうだよね」
購買も沢山の人込みで賑わっている。特段これと言って食べたいものがある訳じゃないので人混みが解消するまで離れたところから待っていると肩を叩かれた。
「お兄?どうしたの?」
「かえ…お前か、購買が混んでいるから待ってるんだよ。そっちは?」
「友達と学食。良かったら一緒に食べる?」
妹の後ろにいた友達は明らかに嫌そうな顔をしている。
「僕のことは気にしなくていいから、それじゃ」
気は進まないが人混みに入っていく。
何とか買ったコロッケパンと飲み物を片手に人の少なそうな場所を探している内に体育館裏にたどり着いた。昼休みにまで練習する生徒もいて、
黙々と食べ喉を
「帰りまでに止めばいいんだけど」
徐々に
幸い屋根の下なので濡れる心配はないが時間を見ればまだまだ
「ここがあなたのお気に入りに場所なの?」
不意に声を掛けられ振り返ると転校生が僕を見下ろすように立っていた。彼女は僕の返事も待たず隣に腰掛け空を見上げ、そして僕に構わず話し出す。
「まったく…今朝はいきなり逃げちゃうんだもの、それも人の顔を見るなり…
「すみませんでした。あの時は…その…気が動転してまして」
影が見えることあんなことを他人に言ってもな…信じてもらえないだろうし、言う気もないけど。
でも何で彼女は体育館裏ここにいるんだ?僕を探してっていうのは無いとしても…
その答えはすぐに返ってきた。
「長部誠君、貴方に聞きたい事があるのよ。貴方の事はクラスの皆から色々聞いてるわ、お昼休みは一人でいる事や、お友達がいない事や…」
「だから何ですか?僕が一人でいる事が貴女に迷惑を掛けましたか?別にいいじゃないですか、貴女には関係のないことですし変な同情は止めてください!僕の事を聞いているなら放って置けばいいじゃないですか!」
言葉を最後まで聞かず僕は力いっぱい彼女を否定した。一体何なんだ?今日転校してきたばかりの彼女に何が判るというんだ。だか今朝の一件ではお世話になった事は事実だし理由は言わなくてもお礼は言うべきだ…
「た…確かに今朝の件は助かりました。きちんとお礼も言わなかったのは僕の方に
それだけ言うと彼女に背を向け戻りだした。
「貴方が苦しんでいる原因…それが判るといっても同じ態度なのかしら?そう…例えば視界の端に黒い影が見えたり、その影を見ると気分が優れなくなったり…ね。まぁ整理する時間も必要でしょうから今はそれでいいわ。これだけは言って置きたくて貴方を探し回っていたのよ。いい?よく覚えておいて長部君、貴方のそれは、
………
……
…
彼女は何と言った?僕の症状を知っている?言葉に足が止まった。僕の隣まで来た彼女は追い越しざまにこう言った。
「私には貴方が必要なのだから」
昼休みを終わりを告げるチャイムが鳴るまで僕はそこに立ち尽くすしかなかった…
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