第10話 華麗! 黄金の輝きを纏う美少女
「えっ? まさか!」
俺の声に反応して、宮元先輩が背後を振り仰ぎ「面が邪魔で見えん!」と叫んだ。
もちろん、先輩のパンツが見えたわけではなく、宮本先輩をからかうための冗談だ。
もし本当に見えていたら、人には教えずに、俺だけが見るからな。
「ん?」
天堂院先輩は首をかしげて金髪ドリルを揺らしているから、俺の言葉が何のことなのか分からなかったのだろう。
しかし、台座を支える男達は大いに動揺しだした。
「な、何、まさか、見えるのか!」
「俺にも見せろ」
男達が我先に持ち場を離れ、台座が急激に傾いた。
「きゃっ、きゃあっ」
天堂院先輩がバランスを崩して、台座から滑り落ちる。
「危ない!」
俺は間一髪で天堂院先輩の下に回りこみ、お姫様抱っこの姿勢で受け止めた。
とはいえ、俺の力は落ちてきた人間を支えるほど強くはないので、膝が折れ、腰が曲がる。
だが、何とか、ゆっくりと先輩を地面に降ろすことに成功。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
怪我はないようだが、落下の恐怖で気が動転したらしく声は震えている。
先輩の体は柔らかかったし、グレープフルーツみたいな爽やかな匂いが、ほんのりと漂っている。
もし先輩を抱き枕にしたら、きっと天国の夢を見るんだろうなあ。
軽く妄想していると、先輩が「後ろ!」と悲鳴をあげた。
「げ」
振り返ると、数人の男が俺達に向かって、まさに倒れてくる瞬間だった。
どうやら傾いていた台座を支えようとして失敗したらしい。
「ごめん!」
離れるのは間に合わないと判断し、俺は先輩の小柄な体の上によつんばいになる。
直後、背中に重い衝撃が走った。
「つッ!」
一つ目の衝撃は人間がぶつかったのだろう。
俺は肘を伸ばし身体を固定し、耐えた。
けど二つ目の衝撃は桁違いだった。
一つ目とは比べ物にならないくらい硬く重いものが、肩と側頭部に激突した。
台座か椅子が直撃したらしい。
飛びかけた意識を必死につなぎとめ、両手足に力を込める。
俺の悪い冗談が原因で先輩に怪我をさせるわけにはいかない。
「痛え……。くそ、俺じゃなかったら最初ので意識とんでるぞ……」
つい弱音がこぼれたけど、先輩の安否を確認しないと。
「先輩、大丈夫ですか?」
「わ、私は大丈夫です。貴方こそ大丈夫ですか?」
俺の下で先輩が顔を青くして怯えている。
「や、やばい」
泣きそうな美少女を見ていたら、なんか、顔が勝手にニヤニヤしてきて、頬が蕩けそうになってきた。
「目の前で、美の女神が震えている……」
「しっかりしてください! 幻覚を見ていますわ!」
「幻覚? いや、本当に美しい……お、あ……あれ?」
急に頭がふらふらして、先輩の顔が目前に迫ってきた。
あ、地面も近づいてきている。俺が先輩の方に倒れているんだ。
もしかしてこれは、倒れるときに唇が触れてしまうラブコメ展開じゃないのか?
そう期待したけど俺は倒れた結果がどうなるのか知る前に意識を失った。
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