第13話
「先生、しばらくぐっすり眠りたいんです」
精神科の医師、宮本のところにやってきた
アカリは 現在の窮状を訴えた。
「眠れないのかね」
「ハイ」
アカリは診察台に横になって、宮元を眺めた。
「待っていたまえ。いい薬があるから」
宮本はカプセルの薬と水の入ったコップ
を持ってきてアカリに差し出した。
「少し眠っていくといい。ここなら安心だから」
宮本は柔和な笑顔を崩さなかった。
「あなたは本当に宮本先生?」
「なっ、なぜそんなことを言うんだね」
「わたしの名前は何」
「そっ、それは」
アカリが光速で診察室の隅っこまで移動した。
「やはりあなたは影一族ね」
「バレたら仕方がない。おまえの記憶をもらいたい」
「わたしの何の記憶が欲しいの」
アカリが必殺の構えをした。
「知る必要がない」
宮本も懐から鎌を取り出してカマキリのように
構えた。
宮本が右手の鎌をアカリ目掛けて振り下ろした。
アカリは強烈な力で振り下ろされた鎌を何とか左手で振り払うと
右の貫き手を宮本の腹部に見舞った。
宮本は悶絶し、その場に倒れこんだ。
ホッとして息を抜いた瞬間だった。
誰かがアカリの背中におぶさってきた。
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