第12話

「ここはどこ」

薫が目を覚ましてつぶやいた。

「病院よ」

アカリが薫の顔を覗き込んで

答えた。

「アカリーーーあんた、あれは

いったい」

薫が目を見開いて体を起こそうとする。

「薫、何もなかったのよ」

「で、でも」

「全部、夢なの。そうでしょう」

カオリが薫を寝かしつけようとした。

「うっ、うん」

薫は渋々といったかんじで、また床に

ついた。


「オーイ、二年前の記憶をおくれ」

薫が街角でマッチを売っていると、

黒いコートを着た長身の男が

声を掛けてきた。

男はいきなりコートの中からナイフ

を取り出して大声を上げた。

「頭を切り取らせておくれ。

頭をおくれ」

「キャーッ」

薫の耳が少し切られた。





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