第75話 12-8.


「そう仰るだろうと思って、コンチネンタルブレックファーストの用意を武官室にしてますよ。私も今、コリンズとお先に頂いているところです。……はい、勿論です。では、お待ちしています」

 受話器を置きながら苦笑しているマズアを横目に、2杯目の紅茶を自分のポットに注ぎながらコリンズが声をかけた。

「なんだ? 室長代行か? 」

「ああ。腹が減ったんだと」

 コリンズは思わず笑顔を浮かべた。

「よく眠れたようで、何よりだ」

 そう呟くと、マズアは暫くコリンズの顔を見て首を捻っていたが、やがて話題を変えてきた。

「で、どうなんだ? 『お喋り薬』は未だ効果が出ないのか? 」

「ああ」

 コリンズは口の中のレタスを紅茶で流し込む。

 いつだったか、日本で食べたレタスは美味かった。それに比べてイギリスの、いや、イギリスに限らず欧州の野菜って奴はなんでこれほど不味いのだろうと、ふと思う。

 まあ、アメリカの野菜もどっこいどっこいだが。

「外務省での第4の男と聖ジョーンズ病院の第5の男、あの2名はドクターストップがかかってるから、結局投与、施術したのは第1から第3の3名だ。第3の犯人、メイドに化けた女は何やら副作用が出て投与中止。と言う事で、望みは第1と第2の犯人だけなんだが、0800時マルハチマルマルのネガティヴ・レポートでは未だに喋り出す様子はない、らしい」

 そこまで言ってコリンズは、向かいに座ったマズアの方に身を乗り出して、小声で尋ねた。

「ところでアーネスト。昨夜の会議はどうだった? 室長代行の安全は確保できそうか? 」

 途端にマズアは、下ろしかけた紅茶のカップをテーブルの上10cmでホバリングさせたまま、フリーズした。

 釣れるかどうかは半信半疑だったのだが、実直な旧友は見事に引っ掛かってくれた。

 口に含んだ紅茶を吹き出さなかったのは流石だ、とコリンズは心の中で賞賛の言葉を友人に捧げつつ、その反応を待つ。

「ジャック、貴様! ……な、なんで知ってる? 会議のセキュリティ・レベルは」

 コリンズはマズアの言葉を手で遮り、微かに笑って見せた。

「いや、すまん。カマをかけてみたんだ」

 さすがにマズアは、顔一杯に苦々しさを張り付け、カップを叩きつける様にテーブルに置き、噛み付くように言った。

「まさか貴様、盗聴器とか仕掛けたんじゃ」

「そう疑うな、アーネスト。いくら本職だからって、調査部~軍務局所属の部署だ、作戦行動や戦闘実施行動に問題コンプライアンス・リスクがないか、事実との齟齬がないかを調査する、所謂部内犯罪の調査を行なう警務部や政務局内部監察室とはミッションが異なる~の内偵じゃあるまいし、そこまではせん。ましてや、クラスメイトじゃないか」

 コリンズには、彼の心情は充分に理解できたが、表面上、全くそんな事には頓着しない振りをして、世間話でもする様に言葉を継ぐ。

「いや、タネを明かすと、昨夜の貴様の繕い方が、少し気になったからな」

「何だと? 」

 睨み付ける様な視線で問うマズアの気を殺ぐように、コリンズは皿の上のパセリをフォークで弄ぶ。

「貴様が会議だって事を、あの切れ者の上官が知らなかったってのが不思議でね。真面目な貴様にしちゃ、珍しい事だったからな」

 今度はマズアが苦い表情を見せる番だった。

「それは皮肉か、ジャック? それとも、誉めてくれてると考えていいのか? 」

 クラスメイトいじめはここらでお開きだな、とコリンズは顔を上げ、じっとマズアの眼をみながら話し始めた。

 彼なら、話してもいい、そう思ったからだ。

 クラスメイト、だからかも知れないし、同じ女神を信仰する信徒だからかも知れない。

「昨日の晩……、0300時マルサンマルマル過ぎだったか。俺がトイレへ立つとね。彼女の悲鳴が聞こえたんだ」

 思い入れの篭った、懐かしい想い出を語る様な口調になったのが、自分でも意外だった。

「結論から言うと、彼女は悪夢に魘されていたらしい。俺が部屋へ飛び込むと、室長代行は膝を抱いてガタガタ、それこそ幼女の様に震えていたよ。……聞くと、悪夢を見たと言う。昨日の一連の襲撃事件の体験をベースにした夢に魘されていたらしい」

 一旦言葉を区切り、旧友の眼を見る。

 彼の瞳が一瞬、虚空を泳いだのを確認して、口調を変えた。

「彼女、泣いてたよ」

 マズアは暫くの間、瞼を閉じてなにやら考えに耽っている様子だったが、やがて顔を上げ、意外に淡々とした口調で話し始めた。

「そうか。泣いてたか。……そりゃあ、ショックだったろう。専門家プロフェッショナルのSPでさえ、24時間で6回もの襲撃事件に出会う経験なんぞ、滅多にない筈だ。それを」

 どうやら、俺の予想は外れていたらしい、とコリンズは悟る。

 確かに会議は、涼子の安全に関するそれだったろう。

 だが、その内容は、どうやら自分の予想の斜め上を行くようなものだったらしい。

 コリンズは、とにかく、言いたかったことを言おう、そう決めた。

 どう転んだって、これ以上涼子が苦しむのを見ているのは、嫌だった。


「なあ、アーネスト」

 マズアは、意識的にコリンズから顔を逸らしたまま「なんだ」と答えた。まともに切れ者のクラスメイトの眼を見て会話などした日には、何をどこまで喋らされるか判ったものではない。

「彼女……、室長代行は、もう限界なんじゃないのか? いや、彼女の二つ名が『戦闘妖精』であることは知ってるし、外見の嫋やかさに反して、クールでタフな事だって知っている。だが、今回は違う。彼女は、いつもの彼女じゃないんじゃないか? ……その、こう……。ううむ、上手く言えないんだが、少しづつ、少しづつ、彼女の中の何かが、壊れ始めている。そんな気がしてならないんだ」

 マズアは一瞬、これもコリンズがかけたカマだろうか? と疑った。

 しかし、それは彼の、普段は見せない、途方に暮れたような表情ですぐに、違うと判る。

 何しろ、ポーカーフェースを旨とするプロ中のプロである。

 だが、そんな彼がこんな表情を見せるのは、自分が知る限り、涼子の事を話すときだけだ。

 それでは、ある程度の情報を彼が掴んでいて、今、その情報の確度を上げようとしている、という線はないか?

 何せ、元々は涼子へのストーキングとそれにまつわる軍機漏洩の調査が彼の任務だった筈だ。涼子に関するある程度の情報は事前に彼へ伝達されていた可能性は否めない。けれど、昨夜の会議内容を鑑みると、少なくとも軍人になる以前の彼女の情報は彼には伏せられていただろう。

 ストーカーと情報漏洩スロッパーの件だけを考えれば、基本的に涼子の身に起きた過去の悲劇との因果関係など存在しないことは明白であり、だから彼はただ純粋に、『徐々に壊れ始めている涼子』に気付き、ひたすらこの事件の行き着く先を憂いている、本当に唯、それだけなのだろうとも思える。

”しかし、それにしても”

 マズアは、驚愕の思いを隠せずにいた。

 まるで、自分の隣りに座って一緒に昨夜の会議に出席していたかの様に、コリンズの心配は、自分の急所を突いている。

 だが、話の内容は非常にセンシティヴだ。

 涼子の隠されるべきプライバシーをモロに含む昨夜の会議の内容は、相手が誰であろうと、おいそれと話す訳にはいかない。

 いや、それ以前にこれは、UNDASNという軍事組織が最重要機密レベルを付与した、会議に関わることなのである。

 話す訳にはいかない、と言う事を、話すしかない。

 しかし、それだけでこの後、沈黙で押し通す事ができるか?

 いや、普段の自分なら自信がある。

 何よりも自分は軍人であり、しかも場合によっては軍機以上に重要な機密を扱わねばならない、外交官でもあるのだ。

 だが、しかし。

 会話の合間、チラリ、チラリとコリンズの顔を見ているうちに、その自信がどんどん揺らいでいくのが判る。

 クソッ! こいつ、催眠術でも使ってやがるのか?

 やはり、不用意にコイツの顔など見るんじゃなかった!

「ジャック。実は、な」

 これから自分が、眼の前のクラスメイトに何を話そうとしているのか、判らないままに話し始めてしまったマズアは、寸でのところで『話してしまうところだったかも知れない』話の『主人公』である涼子その人に、救われた。

「おはよう! お腹空いちゃったー、って……、あれ? 」

 涼子はすぐに室内の異様な雰囲気に気付いたのか、ドアを入ったところで足を止めた。

「あー……。ごめん、拙かった? 出直そっか? 」

 後退さり始めた涼子を、マズアは慌てて引き止めた。

「あ、いえ、1課長! 申し訳ありません、お気遣い無用です」

 今、彼女に去られては、自分がその後何を言い出すか、とても自信がなかった。

「おはようございます、室長代行。どうぞ、こちらへ」

 コリンズの援護射撃もあり、マズアは内心ほっと胸を撫で下ろす。

「あ、ひょっとして! 犯人の誰かが、自白でも始めたの? 」

 マズアがソファから立ちあがり、涼子の座るべき席を手で示しながら言った。

「いや、1課長。残念ながら未だ効果は現れていない様です。まあ、その話題ではあったんですが」

「まあ、自白させられないって話題で、盛り上がる訳もありません」

 コリンズがそう言って、白々しい笑い声を上げる。

「そお? ……あ、そうだ、コリンズ! 」

 涼子は顔を急にパッと明るくすると、第一種軍装の上着のポケットから木彫りのキツネを取り出した。

「コリンズ、夕べはありがとうね! このお稲荷様、ほんと、すごいご利益ね。あの後、グッスリ眠れたわ」

 そのキツネにどんな意味があるのか、”オイナリサマ”とは何なのか、マズアには判らなかったが、コリンズの、先程までとは全く別人のような優しい表情で、それがさっき彼の話していた涼子の悪夢に関する話だと知れた。

「そうですか、それはよかった。さあ、朝食をどうぞ。お座り下さい」

「うん、ありがとう」

 いただきますと手を合わせてフォークを取る涼子の姿は、まさしく食べ盛りの小学生を彷彿させる。

 その姿と、昨夜サマンサから聞かされた『石動涼子』が、本当に同一人物なのか、いやひょっとすると夢でも見ていたのではないかと自分の記憶を疑いたくなってくるほどに、眼の前の石動涼子は健康的な美しさでに輝いていた。

 思わず見惚れてしまっていたらしい。

 デスクの上の電話の呼び出し音で我に帰る。

「おう、マズアだ」

 慌てて立ちあがり受話器に飛びつく。

「コリンズ二佐、スコットランドヤードに出張ってる君の部下からだ」

 何事でもないとでも言うように、コリンズはゆっくりとした動作で受話器を受け取った。

「ああ、私だ。うん……、うん……。それで、あっちのほうは? ……うん、うん……。よし、わかった……。15分以内に到着予定」

 受話器を置くなりコリンズは、涼子とマズアを振り返って言った。

「お喋り薬が効き始めた様です。行って来ます」

 ドアに向かうコリンズを、涼子が呼び止めた。

「は、なにか? 」

 振り向くと、涼子がニコニコ笑っていた。

「今日はコリンズも、艦隊IC2へ行く予定なんでしょう? 」

 思わず苦笑を浮かべる。

「ええ。何年振りかで第一種軍装ドレスブルーに袖を通すつもりだったんですが。こうなるとちょっと、行けるかどうか」

 涼子の眉が、一瞬曇る。

 途端にコリンズは掌を返した。

「いや、参ります。観艦式は無理でも、その後のアットホームには、必ず」

 スパイをも手玉に取る涼子の姿を見て、マズアは、さっきカマかけに引っ掛かった仇を取ってもらったような気がして、ほんの少し、気が晴れた。


 朝食途中の涼子を残し、警備体制の件と明日の晩餐会の件、立て続けに2件の打合せを終えて武官室に戻ったマズアは、室内を見て思わず頬を緩めた。

 涼子は応接セットのテーブルに今朝の朝刊を数紙広げて、自分はソファに胡座をかいて熱心に読み耽っている最中だったのだ。

 まるで、少し背伸びした女の子が、父親の真似をしているように見える。

 だが、その瞳が新聞各紙のどこを見ているかは、マズアにはすぐに理解できた。

「如何です、課長。昨日のヒースロー襲撃事件の扱いと違って、各紙とも概ね好意的な扱いだと思うんですが? 」

 涼子は視線を新聞から離さずに訊ね返す。

「うん……。マズア、電波媒体とネット媒体はどうだった? チェックした? 」

 マズアは自分の席につきながら答える。

「ええ、BBCが内務省責任を解説委員に喋らせたくらいですね。海外メディアは未チェックですが。ネットの方はいつも通り、カオスです」

「今、近所のコンビニに、イエロー・メディアをありったけ買ってくるようにって、銀環インファンに行って貰ってるんだけれど」

 UNDASNとしては、やはり昨日の一連の襲撃事件が、世間の眼にどう映っているのかが気になるのは当然だ。

 特に今回は、UNの求心力とUNDASNの力強さを全世界にアピールするために、制服組3,500万人のトップに立つ統合幕僚本部長自らが『広告塔』に徹しているのである。

 涼子のマスコミへの気の遣い様と言ったら、傍からマズアが見ていても、涙ぐましくなるほどのものであった。

 ロンドン・ウィークとは~今日に至るまでのありとあらゆる不測の事態まですべてひっくるめて~彼女にすれば、マスコミの反応即ち、欧州室の仕事に対する評価とニアリー・イコールなのである。

「いや、まあ……。イエロー・ジャーナリズムまで気にする必要はないかと思いますが」

 涼子はやっと新聞から顔を上げて、ソファから立ち上がりながら話す。

「よいしょっと。あ、今日中でいいから、政務別室統括情報課に情報を集めさせてくれるかしら。英国内のネット、SNSでのトラッドも重要だから。あと、そうね、ソユーズ、ラ・マルセイエーズ、シカゴ・トリビューンとワシントン・ポストも忘れずにね。電波媒体はBBCはもちろん、NHKにCNN辺り、特に重点的に、ね」

 ちょっとお手々洗ってきますと子供のような言葉遣いの涼子の背中を笑いながら見送り、統幕の政務別室に連絡しようと電話に手を伸ばした瞬間、呼び出し音がなった。

 スコットランドヤードのコリンズからの外線だった。

「コリンズだ。室長代行は傍にいるか? 」

 情報部が使用するハンディタイプのディジタル暗号変換機を通しているのだろう、普段よりくぐもった声が耳に届く。

「いや、今はいらっしゃらない。……で、どうだった? 」

「ああ。ぼちぼち鳴き始めた。38号議案はどうやら洩れていない。襲撃グループは男4名女1名の5名、在英の協力者はプロの手配屋が1名。今、残った手配屋の面をMI5のリストで面通し中だ」

 マズアは少し声を落として訊ねた。

「そのプロの手配屋、フォックス派シンパなのか? それとも純粋なビジネスなのか? 」

「それは未だ判らん。と言うより、彼等も知らされていなかったような感じがあるな」

 コリンズの声も少し沈む。

「やはり、薬だけでは効果が弱いし、安定しない。もう少し時間が必要だろうな」

「時間って、いったい」

「まあ、待て、アーネスト」

 コリンズは、マズアの言葉を押し留める。

「室長代行には、必ず『後、襲撃は最低2回』と報告しろ。いいか、『後2回』だ」

 マズアの返事も聞かず、回線はそのまま切れる。

 が、マズアにはコリンズの言いたい事が、手に取るように判った。

 後、2回。

 そのうちの一回は、フォックス派。

 もう一回は、涼子を狙う、『誰か』。

 溜息を吐きながら、涼子の指示通り統幕政務局政務別室へ連絡を入れ終わったのと同時に、涼子がリザと銀環を連れて武官室に戻ってきた。

「マズア、少し早いけれど、そろそろ行きましょうか? 」

「パレードの影響でしょうかね。外へ出たら結構、道、混んでましたよ」

 ゴシップ紙が山ほど入った重そうなレジ袋をソファに置きながら、銀環が言う。

「さっき、スタックヒル補佐官が車の用意をされてました」

 リザの言葉に頷きながら、マズアは涼子に向き直った。

「1課長。先程、コリンズ二佐からポジティヴ・レポートがありまして」

 涼子の反応を心配しながら、マズアは『後、2回』を含めた報告をしたが、結果的に彼の心配は杞憂に終わった。

「よーっし! 後2回ね? それだけ判ればもう充分だわ。ありがと、マズア! 」

「あ、あの、1課長? 」

 驚いた表情を隠しもせず、リザが恐る恐ると言った風に声を掛ける。

「あの、なんだか嬉しそうに見えるんですけれど? 」

 俺もそう思う、とマズアは思わず首をガクガクと振ってしまう。

「後、2回も危険が待ち受けているかも知れないんですよ? 」

 銀環が憤りとも不思議とも言えない、複雑な表情を浮かべて言うのに、涼子は見事な笑顔で答えた。

「後何回襲われるか判らないなんて蛇の生殺し状態よりは、数倍マシな状況じゃない。ミクニー戦でもそうでしょう? 敵の勢力や残存行動能力とかが判明している敵と不明な敵、例え味方劣勢だとしても戦い易いのは勿論、前者だもの」

 これ以上ないくらい見事な笑顔で、それ以上に納得できる答えを返してくれた涼子の顔をぼんやりみつめていると、涼子が小首を傾げて尋ねてきた。

「どうしたの、マズア? あの、私……。なんかヘンなこと言ったかしら? 」

「い、いえ。それよりも自分は、1課長がもっと心配されたり不安に思われたりするかと」

 マズアの言葉にうんうんと頷くリザと銀環、三人の顔を等分に見つめていた涼子は、再び、ひまわりのような明るい笑顔を浮かべて見せた。

「あのね? これは戦争と一緒なの。戦時下における情報っていうのは、ゼロじゃない限りは決して最悪じゃないの。例え、それが贋情報でもね。ましてや、今度のみたいに精度の高い情報だったらなおのこと。私達も、腹が括り易いってものでしょう。……あ、この事、コルシチョフ部長には? 」

 贋情報、という涼子の言葉に、まさか見抜かれているのではと心臓を跳ね上がらせていたマズアは、慌てて最後の質問に縋りつき、答える。

「あ、いえ、まだです」

「コルシチョフ部長でしたら、ホテルから直接、サザンプトンへ向かわれた筈です。もう、到着されている頃かと」

 リザの答えに涼子は頷き、マズアに再び顔を向けた。

「じゃ、部長への報告、それと統幕本部長達への伝達もお願い。それが済んだら、こっちもそろそろ出発しましょう」

「イエスマム」

 マズアは立ち上がりながら、涼子の表情を窺う。

 確かに、目に見えて元気になっている。元気、というか明るくなった。

 キャッキャッと騒ぎながら、お互いの服装を確認し合っている~今日は英国王ご臨席の観艦式という事で、昨日の戴冠式同様、第一種甲軍装だ~涼子達女性陣の姿を見ているうちに、マズアは、昨夜来、ダウナー気味だった気分が、少しづつアップしつつあることに気付いた。

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