第139話 悪運尽きて(その3)
「おらぁ! 死ねよ!」
「出血させずに始末しろ! あとで地面の掃除が面倒だろうが!」
「どっちが優勢なんだ?」
「さあな。橘の奴が、この住宅地建設現場にいる戸高高志の手下たちを一人戦闘不能にすれば、十万円出すって言ったんだ。死んだら、知り合いのアスファルト工場に運べば足はつかねえさ。とにかくボコって稼いどけ!」
「銃が使えないのがなぁ。向こうに、ちょうど殺してやりたい奴がいるんだよ。あの野郎、俺のシノギに手を出してきたからよぉ」
「銃ナシでなんとかしろ。向こうも条件は同じだ。買収した警察幹部が銃はまかりならんと言っているから仕方があるまい」
「金属バットで頭を潰してやらぁ」
「(ひぃーーー!)」
土御門蘭子さんと赤松礼香さんによって誘拐されてしまった私は、彼女たちの同志……土御門一族から離脱したり、彼女たちの考えに賛同して参加した地方の除霊師有志たちと一緒に、戸高蹄鉄山を囲む住宅建設現場へと侵入しました。
でもそこでは、あきらかにカタギじゃない人たちが派手に喧嘩をしていて……中には金属バットで殴られて頭が凹み、意識がない人も……。
土御門蘭子さんたちも、その仲間たちも、腕っ節には自信がないようで、その様子を隠れて見守るのみだったのです。
「(広瀬君、私以外、みんなおかしいよぉ!)
それは、沙羅姫さんが逃げ出すわけだよ。
土御門蘭子さんと赤松礼香さんが独善的すぎて、彼女たちに従っている人たちもなんか変だもの。
「蘭子様、どうしますか?」
「野蛮な人たちの潰し合いが終わってからでないと、動けませんね」
「確かに、私たちって腕っ節は微妙ですからね」
少なくとも、この二人とそれに従っている除霊師たちはみんな弱そう。
戦っているアウトローな人たちに勝てそうな気がしないから。
「戸高高志の犬たちと、安倍一族の犬たちですか。よくも駄犬ばかり集めたものです」
「どうやら、すでに両者は戸高蹄鉄山に入ってしまったようですね」
「先を越されましたか……」
「(それでよかったような……)」
勝手に土御門蘭子さんから事情を聞かされてしまったけど、鬼の晴広なんていう、あの安部晴明ですら除霊できずに封印したような悪霊。
私たちが勝てるわけないから、無理に手を出さない方がいいような……。
先に戸高蹄鉄山に入れた人たちが、確実に除霊できるなんてことはなく、むしろ死が早まってしまったのでは?
「あのぅ、もう引き揚げた方がいいのではないかと……」
アウトローな人たちに見つかると大変だし、ここで隠れて様子を伺っているだけでも悪霊に殺されてしまいそう。
「木原さん、ご安心を」
赤松礼香さんが自信満々にそう言うけど、全然安心できないよぉ。
「なんのために、あなたをここに連れて来たのか。それは、広瀬裕と沙羅姫様をここに誘き寄せるためなのですから」
「広瀬君と沙羅さんを?」
「彼らなら、あの野蛮なチンピラたちにも、鬼の晴広にも対処できますからね。そして今頃は……」
「今頃は?」
「戸高高志も、岩谷彦摩呂も終わりでしょう」
「それってつまり……」
先に戸高蹄鉄山に入った人たちは、もう死んでしまったってこと?
そしてそれがわかっていながら、この二人は……。
「なんて酷い!」
「酷くはないですよ。だって、どうせ誰が止めても、 彼らは聞く耳なんて持つわけがないのですから。彼らは、自ら選択して無謀な死を遂げるのです。愚か者ですから」
確かにそうかもしれないけど、それをただ見守っているあなたたちが、それを言うべきではないと思います。
大体あなたたちだって、誘拐なんて犯罪じゃないですか。
「(ううっ……言えないけど……)」
この人たちはおかしいから、もしそんなことを言ったらなにをされるか……。
「それで、これからどうするんですか?」
戸高蹄鉄山では、なにかよからぬことが起こっているみたいだけど、その周辺では二つの反社会的な危ない人たちが戦っていて、二人はそれを隠れて見ているだけ。
それなら、どうして私を誘拐なんてしたのかしら?
意味があるとは思えないのだけど……。
「とにかく、今は待てばいいのです。待っていれば、まずは邪魔な戸高高志と岩谷彦摩呂が勝手に消えてくれるのですから。目的を達成するために、無駄な労力を使うなんて無駄じゃないですか」
「無駄って……」
この赤松礼香さんって人。
自分がとても賢いと思っている節があって、なんか嫌だな。
「戸高高志と岩谷彦摩呂が死ぬのが早いか、広瀬裕さんが、あなたを探しにここまで来るのが早いか……」
「菅木議員もいますからね。今戦っている、人間のクズたちの排除は可能でしょう。そして広瀬さんは、否が応でも戸高高志と岩谷彦摩呂を殺した鬼の晴広の除霊をせざるを得なくなります」
「広瀬君に、鬼の晴広を除霊させるためにこんなことを?」
名家のお嬢様ぶっているけど、土御門蘭子さんもなんて酷いことを……。
「誤解なきように言っておきますが、私はなにもしていませんよ。戸高蹄鉄山に封印された鬼の晴広の情報を掴み、周辺の土地をすべて買収したのは戸高高志です。現当主と長老会を密かに抹殺して安倍一族の新当主となり、戸高高志よりも先に鬼の晴広を除霊して、初代安倍晴明を越えるなどと無謀な考えに至って行動したのは岩谷彦摩呂自身です。私と礼香さんはその情報を掴みましたが、残念ながら止める方法がありませんでした」
確かに、この二人についている除霊師の数は決して多くは……。
「第三極を謳っていますけど、戸高高志と岩谷彦摩呂の勢力には遥かに及びません。ならば、頭を使うしかありませんから」
土御門蘭子さんが言っていることはわからなくもないのだけど、どこか引っかかる。
それがなんなのか……そうだ!
「ならば最初から広瀬君に協力して、少しでも犠牲者を減らすのが正しくなかったのですか? 戸高高志さんと岩谷彦摩呂さん本人はともかく、彼らに従っていた人たちに罪はありません!」
私が、土御門蘭子さんと赤松礼香さんに感じた違和感はこれだった。
先日、広瀬君から除霊師の質が落ち続けていることを聞いている。
それもあって、除霊師としての才能が発露した私を鍛えているのだと。
そんな状況下で、貴重な除霊師を無駄に死なせる策を、さも賢げに語るこの二人に違和感を覚えたのだ。
「罪がないですって? ありますよ」
「そうです。戸高高志と岩谷彦摩呂の本質を見極められないような、駄目な除霊師たちなんて、いてもかえって害悪です」
「今の除霊師界に必要なことは、小さくても確固たる核を作ることなのですから」
「蘭子様のおっしゃる通りです。無能は足を引っ張りますからね」
「……」
この二人は、自分たちが世界一賢いとでも思っているのかしら?
だから、将来の除霊師界に必要な人と無用な人を振り分ける資格があると思っている。
そんな資格があるようにはとても思えないのに……。
「独善的すぎます!」
「そうかしら? 独善的なのは、岩谷彦摩呂本人と、なにも疑わず彼に従う無能な安倍一族の連中と、貧すれば鈍するで、戸高高志の金に靡く土御門家の老害たちでしょうに」
「彼らを生かしておくと、その時は、岩谷彦摩呂と戸高高志に騙されていた、 従わざるを得なかった。これからはしっかりと除霊師として働きます、と反省しながら言うでしょう。ですが……」
「本質が無能なので、またすぐに騙されて、私たちの足を引っ張るようになるはずです。それならば、今のうちに戸高高志と岩谷彦摩呂と共に死んでいただいた方が将来の手間が省けますから」
「そんな言い方!」
「木原さん、ではあなたは今から戸高蹄鉄山に走って行って彼らを救出しますか? 殺し合いをしている野蛮な連中を突破して」
「忠告しておきますが、もしどちらに捕まっても、若い女性はろくなことになりませんよ。現代社会で、金のためにこのような殺し合いをする連中と、彼らを用いてでも、鬼の晴広の除霊を先に成し遂げようとする、戸高高志と岩谷彦摩呂。そんな彼らに従っているような下等な連中は、いなくなった方がこの世のためなのです」
「さすがは蘭子様、実に素晴らしい考えです」
「……」
こんなことはよくないと思っているのに、この二人に言い返せないなんて……私は……。
「ご安心なさいな。すぐに広瀬さんが、鬼の晴広も、戸高高志と岩谷彦摩呂と彼らに従う除霊師たちの悪霊も除霊してくれますから」
「他力本願もいいところですね」
今の私には、土御門蘭子さんに皮肉を言うことしかできなかった。
「なんともで言えばいいのです。最後に私が勝てばいいのですから」
「鬼の晴広を除霊できないあなたが、鬼の晴広を除霊した広瀬君に対して、どう優位に立つというのですか?」
この二人の除霊師としての実力は、広瀬君に遠く及ばない。
新米除霊師である私にも、それだけは理解できた。
「簡単なことです。除霊師としての実力で戦わず」
「表向きの地位ではなく、日本の、いえ世界の除霊師界の実権を握ればいいのですから」
「実権を握る?」
「沙羅姫様と広瀬裕さんを結婚させて新しい土御門家を復活させ、私と礼香さんも彼の子供を産んで、私たちが新しい土御門家の実権を握るのです」
「広瀬さんは、まだ高校生で世間に疎い部分もありますし、巨大な除霊師一族の運営に慣れていませんからね。私と蘭子さんが実務を取り仕切れば……」
「戸高高志に従った老害と無能たちの駆除もできて、新しい土御門家の誕生ですわ」
この人たち、江戸時代の人間なのかな?
第一、広瀬君が……あの人はプレイボーイだった!
この二人は綺麗ではあるから、彼なら引っかかってしまうかもしれない。
「そっ、そんなに都合よく行くわけが……」
「除霊師のことなどなにも知らないあなたには理解できないでしょうが、私と礼香さんならそれが可能なのです」
「さて、そろそろ 戸高高志と岩谷彦摩呂は、悲惨な末路を迎えたでしょうか?」
と、赤松礼香さんが口にした直後、殺し合いをしていた双方のアウトローな方々のものと思われる断末魔のような叫びが、戸高蹄鉄山に近い地区から聞こえてきました。
「あの……一体なにがあったのでしょうか?」
あきらかに、なにかよくないことが起こっていると思うのですが……。
「礼香さん、もしや鬼の晴広の悪霊が戸高蹄鉄山から出てきたのでは?」
「もしくは、鬼の晴広に殺された除霊師たちが悪霊となって、ゴミたちを襲っているのかもしれません」
「誰か偵察に!」
「「「「「……」」」」」
ところが、土御門蘭子さんの要請に応える除霊師たちは、一人もいませんでした。
それはそうでしょう。
いまだこの住宅建設予定地には、双方の雇ったアウトローな方々がウロウロしてるのだから。
腕っ節も大したことなさそうな彼らでは、一方的に殴られて終わるでしょう。
「なんだ、こいつは!」
「やめろぉーーー!」
「ぎゃーーー!」
次第に、戸高蹄鉄山を囲む住宅建設予定地で、二つのグループに分かれて争っていたアウトローな方々の悲鳴が増え、こちらに近づいてきました。
一体なにが起こっているのかと思い、戸高蹄鉄山の方を見ると……。
「肉ぅーーー!」
「肉だぁーーー!」
「血と肉ぅーーー!」
「おい! 殿山も、後ろの連中も。随分と顔色が悪いが大丈夫か? その服装は戸高社長に従っていた除霊師じゃないのか? おいっ!どうして味方の俺に! やめろ! こら!」
私たちが見ている前でアウトローな人が、肌が土気色でまるでゾンビみたいな仲間に襲われてしまい、襲撃に除霊師の格好をした人たちも加わって、あっという間に動かなくなってしまいました。
「あきらかにおかしいですよ。ゾンビみたいです」
「木原さんは除霊の世界に詳しくないから知らないでしょうが、ゾンビなどというものは実在しません」
「蘭子様の仰るとおりです。木原さんも除霊師になるのでしたら、そのくらいは知っておいた方がいいですよ」
二人が私をバカにしますが、その間にも土気色のゾンビみたいな人たちが続々と戸高蹄鉄山の方から出て来て、アウトローな方たちを次々と襲っていきます。
不思議と、アウトローな人たちは誰もゾンビみたいな人たち……面倒なのでゾンビに統一します……に勝てません。
金属バットや鉄パイプで殴られ、頭が割れて脳味噌が飛び出てもゾンビたちは動きを止めず、そのままアウトローな人たちは首に噛みつかれ、首の肉を食い千切られ、大量に血を流して倒れてしまう。
そしてしばらくすると、ゾンビに殺された人たちも肌が土気色になって起き上がり、近くにいる人たちに次々と襲いかかって行きます。
「ゾンビじゃないですか」
私は小声で、二人に文句を言いました。
ゾンビは実在するじゃないかって。
「あれをゾンビと言わずに、なんて言うのですか?」
「あんなものは見たことが……」
「蘭子様、気がつかれました!」
「「「肉ぅーーー!」」」
住宅建設予定地にいたアウトローな人たちはほぼ全員がゾンビに殺され、自分たちもゾンビにされてしまったようです。
さらに増殖したゾンビたちは、隠れていた私たちを見つけて襲いかかってきました。
「みなさん、ここは除霊師としての実力を見せつけてあげましょう」
「蘭子様、あそこ!」
「あそこ? あれは……、岩谷彦摩呂さんと戸高高志さんではありませんか。戸高家次期当主と、安倍一族の新当主が随分と無様ですこと」
蘭子さんは、ゾンビの中に顔見知りを見つけたようです。
随分なイケメンのゾンビと、風船みたいに太ったゾンビ。
彼らが、岩谷彦摩呂さんと戸高高志さんなのですか。
二人が嫌いらしい蘭子さんは、哀れ、ゾンビになってしまった二人を、仲間の男性除霊師に撮影させていました。
「ミイラ取りがミイラならぬ、ゾンビ取りがゾンビですわね。 あなた方の無様な様は、日本除霊師協会に送りつけて差し上げましょう。他のゾンビたちは、除霊してしまいましょう」
「任せてください、蘭子様。みなさん、出番ですよ」
礼香さんとカメラマン役の男性除霊師以外の全員が、お札を手にしてゾンビの除霊を開始しました。
ゾンビに投げつけたお札が盛大に燃え上がり、青白い炎に包み込まれます。
「案ずるより、産むがやすし。岩谷彦摩呂さんと戸高高志さんの悪霊もしっかりと除霊して、ご家族に除霊代金を請求して差し上げましょう」
蘭子さんはゾンビの除霊に絶対の自信があるようですけど、私はどこか違和感を覚えていました。
確かに私は、まだ怨体の浄化しかしたことがありません。
でも、まだゾンビたちは除霊されていないような……。
「あの…… 油断はまだ禁物ではないでしょうか?」
「木原さんは、なにをおっしゃるのかと思えば……」
「とっておきの高価なお札を使っているから大丈夫ですよ。さて、次の悪霊は……」
二人は、ゾンビの除霊に絶対の自信を持っていますが、ゾンビを包み込んだ青白い炎が晴れると、そこにはまったくダメージを受けたようには見えないゾンビたちが立っていたのです。
「まさか! 高価なお札を使ったのに!」
「蘭子様?」
「一時撤退です!」
ところが、その撤退すら至難の技でした。
すでに、私たち以外のすべての人間が、ゾンビと化していたのですから。
アウトローな方々もゾンビ仲間として、残された数少ない人間である私たち三人と、十数名の除霊師たちに襲いかかります。
「お札が! お札が効かない!」
「完全に囲まれてる! これでは逃げることすら……コラッ! 離れろ!」
「助けてくれぇーーー!」
多数のゾンビたちに襲われ、二人に従っていた除霊師たちも、一人、また一人と首を食い千切られて殺され、ついには私たち三人だけになってしまいました。
そして、殺されてしまったはずの除霊師たちもすぐにゾンビとなって復活し、私たちは完全に囲まれてしまいます。
「どうするんですか?」
頭を使って漁夫の利を狙おうとしていたら、思惑が外れて数百体のゾンビに囲まれているなんて、こんな間抜けな話はないじゃないですか。
「礼香さん?」
「こんなこともあろうかと」
と言って、礼香さんが取り出したものは、 大きな拳銃でした。
どうしてそんなものを?
「ゾンビならば、こうやって頭を吹き飛ばせば!」
「ゾンビの欠点が頭なのは、映画の設定なのでは?」
礼香さん、自分がゾンビなんていないって言っていたくせに……。
彼女が銃を撃つと、ゾンビの頭部が半分吹き飛びました。
ちゃんと当たるんだ。
「これで一体目! あれ?」
「動いてますよ、ゾンビ」
なんと、 頭を半分吹き飛ばされても、ゾンビは動きを止めませんでした。
そして頭の欠けた部分をよく見ると、半透明な霊体が重なっているのが見えます。
つまりあのゾンビは、死体と悪霊が重なった状態で、だから頭を吹き飛ばそうが……。
「もう一発! これで!」
二撃目の銃弾が、ゾンビの足を貫通しましたが、ゾンビは動くのをやめません。
肉体をいくら傷つけても、それに重なっている悪霊がいる限り、ゾンビはその動きを止めない。
これらはゾンビに見えるけど、なにか別の厄介な悪霊に関わるもののようです。
知識がないのがもどかしいです。
「肉体を欠損した部分に悪霊の部分が露出しているのなら、このお札で!」
続けて礼香さんは、頭部の一部が欠けたゾンビにお札を投げつけました。
またも盛大に青白い炎が上がりますが、それが晴れると、そこにはノーダメージだったゾンビが……。
「(根本的に、攻撃力が足りないように見える)危ない!」
銃撃、お札攻撃と続けた礼香さんでしたが、ついにゾンビに捕らえられてしまい、そのまま首を齧られてしまいました。
「礼香さん!」
「蘭子さま……助け……て……」
「ひぃーーー!」
そして恐怖のあまり、私と礼香さんを置いて逃げ出そうとした土御門蘭子さんも……。
元々ゾンビたちに囲まれていたので逃げ出せず、すぐにゾンビたちに捕まり、その首筋を噛まれてしまいました。
「そ、そんな……わたしは……つちみかどけの………」
そして、ついに生きている人間は私一人になってしまいました。
「どうしよう……」
多くのゾンビたちに囲まれ、私もいつ首筋を噛まれて殺されてしまうか……。
どうにか生き残ろうと周囲を探りますが、完全にゾンビたちに囲まれた状態のうえ、先ほどゾンビに噛まれて死んだ二人もゾンビと化して、私の隙を伺っています。
「なにか武器は……あの二人がお札を全部使ってしまったから……もう!」
偉そうだったのに一体もゾンビを倒せなかったから、 元々当てにはしていなかったけど……。
「どこかに武器……」
懸命に周囲を探ると、先ほど二人の前にゾンビにされてしまった、デジタルビデオカメラを持った若い除霊師。
彼の持ち物であったデジタルビデオカメラが落ちていて、さらにその横には、 使わなかったお札の束が……。
「もし、私のお札攻撃が通用しなかったら……でも、このままゾンビたちに殺されるよりは!」
私は駆け足でお札と、念のためデジタルビデオカメラも拾い、すぐに一番近くにいたゾンビにお札で攻撃をしました。
すると……。
「ニクゥーーー!」
あの二人がお札を使った時よりも、大きな青白い炎があがり、それが晴れると、ゾンビは完全に消滅していたのです。
「これも、広瀬君の訓練を受けていたからかしら? とにかく、 生き残れそうな気がしてきた!」
私は、まずはこの住宅建設予定地から逃げ出すべく、進路上のゾンビたちをお札で除霊しながら走り始めました。
「どうにか逃げきる! 難しいかもしれないけど、一秒でも長く生き残れば……広瀬君が……」
普段はプレイボーイだけど、除霊に関しては真面目だったし、こう見えて私も女の子だ。
きっと彼が助けに来てくれると信じ、私は進路上のゾンビをお札で除霊しながら、住宅建設予定地の外へと走り出すのでした。
きっと、広瀬君は助けてくれるよね?
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