こどもの領分 *

 きのう、ひとり、この建物の外に「おとな」が放り出されたらしい。彼らは私たちに聞こえないようにその話をしているつもりらしいけれど、案外「こども」の耳は良いものだ。彼らはそれを知らない。わざわざ知らせてあげる親切をするつもりも、ない。

 ただ、その「おとな」はいつものように、病気にかかったために外に放り出されたのではなかったらしかった。怪我が、頭が、と、いつもの病気とはまったく関係のない単語が、「おとな」たちの間で行き交っているのを聞いたから、そう思った。

 じゃあ、なんでその「おとな」は外に放り出されたんだろう。

「そりゃあ、役立たずになったからじゃないの」

 彼は面白くなさそうにそう言った。サイズの大きな普段着を着たまま床にあぐらをかいて、柔軟運動をしている。大きく開いた襟ぐりから、真っ白い肌がのぞいている。それへどきりとする。私は、彼みたいな動きは出来そうもなかった。せめて、もう少し襟の詰まった服がほしいと思う。そんな願いは、ここでは叶うこともないだろう。みんながみんな、同じ服を着せられている。もっと大きくならないと、「おとな」にならないと、これと違う服を着ることは出来ないだろう。ただ、同じ「おとな」になるのでも、このあいだのハルカちゃんのように、腹を大きくふくらませるのは嫌だった。あんな恐ろしい。けれども私たちは、あんな恐ろしい姿になることを、せまられているのだった。

「わたしも役立たず、かなあ」

「こら、なんでそうなる」

「だって」

 彼が背中を丸めていたのを伸ばして、、まっすぐ私をにらんだ。

 袖から出た白い腕が私の方へ伸ばされ、彼がぺちんと私のほっぺたを叩く。近い距離で真っ直ぐに私を見つめる黒い目は、何故だか、さっきの言葉の通り、怒っているようだった。

「私、ハルカちゃんみたいになるの、怖いし、日課だって、好きじゃない」

「あんなの、好きになれるやつそうそういないだろ。後、ハルカみたいになるのだって、怖くないわけないじゃないか」

「でも、ルイちゃんはもう何回もなってるって。怖くなんかないって」

「あいつはあいつ、お前はお前だろ。なんでそんなにへにゃへにゃになってんだよ」

 面白くなさそうに、彼はぐっと眉毛を寄せて、むうっと唇をとがらせている。ぺちぺち、繰り返しほっぺたを叩かれると、なんだかおかしくなってきた。ふふっと笑ってしまう。それで彼は満足げにうなずいて、私のほっぺたから手を離すのだった。そのぬくもりが離れていってしまうのは、なんだか寂しい。ひどくひどく、寂しい。

「そんなかおするなよ」

「そんなってどんな顔よ」

「んー……寒そう?」

 彼はこてんと首を傾げる。そう言う言葉を選んだのはわざとなんだろうか。全然違うよ、なんて言葉よりもまた、先に、笑い声をあげてしまう。

 ずっとこうしてお話ししていられたらどんなに幸せだろう。ほかの子たちは、本を読んだり、コンピューターゲームをしたり、映画を見たりするのに忙しくて、部屋の隅っこで小さくなっている私たちのことなんて、誰も気にしていないみたいだった。

 窓もない白い部屋で、私たちはただただ、変わりばえのしない毎日を暮らしている。

「……日課、いやだなあ」

 その中でも一番変わりばえのしない、私が一番きらいなものの名前を出すと、彼ははあとため息をつく。呆れられてしまっただろうか。そうではないようだった。とても、つらそうな、痛そうな顔をしている。

「俺だって、いやだよ」

 ぎりぎり喉からしぼりだしたような声だった。この話の続きで彼がそんな声を出すなんて思いもしなかった。私は目を見開いてぱち、ぱちとまばたきをする。彼は俯いたまま、痛そうな表情をしているまま。

 彼は、あぐらをかいた足の上へ、両手を重ねて置いている。私は自分の手を彼の手へ伸ばした。さっき、私のほっぺたを戯れのようにぺちぺとと叩いていた手。そっと持ち上げて、包み込むと、彼の体温が分かった。

 彼が顔をあげると、すぐに目があった。彼はひどく驚いたみたいに、まん丸な目をしていた。いたずらが成功したときみたいに、いい気分になる。ふふふと笑えば、彼も私にちょっと遅れて、あははと笑った。

 そのとき、鐘が鳴る。本物の鐘を鳴らしているのでない、録音された電子の鐘の音が鳴る。

 日課の時間だ。

 彼の表情がぴしりと強ばる。包み込んだ彼の両手にも、きゅっと力が入った。彼のさっきの言葉はうそじゃなかったんだと、よく分かる反応だった。だからせめて、その手に入った力を抜いてあげようと、彼の両手をさっきまでよりも少しだけ強く、包み込んで、引き寄せる。

 この手を離してしまいたくないなあと、思った。


 白いシーツの上に仰向けに寝転がって、脚を広げさせられて、自分の体の上には、おとこのこの体がおおいかぶさっている。一緒に育った、彼とは違うけれどよく知っているおとこのこ。

 彼よりも骨張った手が、広げさせられた私の脚を抱えている。抱えられた脚の根本、股の真ん中の、おしっこを出すのとは違う穴に、おとこのこのかたくなったおちんちんが、出たり入ったりを繰り返ししている。

 汗のにおいがする。

 お腹の中が気持ち悪い。

 毎日していることなのに、ちっとも慣れない。私は、この「日課」がきらいなままだ。

 おとこのこがうっとうめいて、腰を私に押しつけたまま、動きを止めた。少ししてから、おとこのこは少し腰を揺すってから、体を離す。おちんちんが穴から抜けていった。さっきの一瞬で、私のからだの奥の方へ、おとこのこの体液が吐き出されたのだろう。それが「日課」の目的だった。目的が達成されたなら、わざわざ奇妙な場所でくっついている必要なんてなかった。

「終わり、終わり。帰ろうぜ」

 さっきまで私におおいかぶさっていた男の子は、はやばやとベッドの周りへ散らばった服を拾い集めて、それに袖を通した。さっきまで私の中を出入りしていた部分は、しぼんでしまっている。ズボンをはけば、その部分はもうすぐに見えなくなった。

 のろのろと私が服を拾い集めている間に、おとこのこはサッサと部屋の出口へと向かっている。しかし、ドアを開けたところで、誰かにつかまったようだった。誰か、「おとなな」人。私とおとこのこが「日課」をこなしている間、ドアにはりついて私たちをみはっている人たち。

 その人達はおとこのこに質問をして、おとこのこはそれに色々に答えを返している。その人は胸の前に構えた板の上へ、おとこのこが答える度にペン先を走らせていた。ここまでは、言葉の内容は聞こえてこない。けれども、問答が終わったのは、声が止んだからすぐに分かった。

 そうすると、その人もおとこのこも、私のことをちらりとも見もせずに、扉を開けて部屋を出て行く。ドアが閉まる音がして、まったく、一人きりの狭い部屋になった。しんと静まりかえって、ワンピースを胸の前で抱えた私の、自分の息の音だけが聞こえる。それから、さっきまで近いところにあった、汗のにおい。すん、と鼻をならすと、一層強く感じられる。

 脚は、いつものように痛かった。思いっきり広げられたからかもしれない。そうじゃなければ、あんなものを体の真ん中へ、さしこまれていたからだろうか。あれが、私にはどうにも気持ち悪いのだ。おとこのこは、あれをしている間気持ち良いらしいけれど、それは私が感じているのとえらく違った気分に違いない。お腹のそこからじわじわと、良くないものが広がっていって、自分お腹の中で自分がもう一人眠っているような、そんな奇妙な気さえした。その想像が、自分のまわりの子達と重なって、また気分が悪くなる。

 「日課」の結果で、お腹の膨れていくことになったおんなのこ達。仲の良い子もそうでもないのも、もう何人も見てきた。私は自分がそうなるのがこわい。ひどく、こわい。

 ベッドの上で膝を抱えながら、自分の平らなままのお腹をおさえる。なんだかとても心細くって、涙が出てきそうだった。


「すごいひみつを見つけたんだ」

 そう言って、彼は私の手を引いて部屋を抜け出した。本を読んだり、コンピューターゲームをしたり、映画を見たりするのに忙しいほかの子達は、私と彼が連れだって一緒に歩いていることになんか、目もくれない様子だった。

 部屋を出ると、白い廊下が伸びている。廊下は緩やかなカーブを描いていた。天井の丸い窓から、オレンジ色の明かりが差し込んでいて、天井にぽつ、ぽつとその色の丸い模様が描かれている。彼は私の手を引いて、その明かりの方へと進んだ。

 黙ったまましばらく進んで、何もないところで立ち止まる。床にも、天井にも、特別何もないその場所で、彼は真剣な表情になって、しゃがみこだ。こんこん、こんこんと扉のノックと同じにようなニュアンスで床から、壁へと手を移動させていく。そして、ある一箇所でノックの手を止めた。ノックの代わりに、両手を壁の一部分へ添える。すう、と息を吸い込むとその息を吐くのと一緒に指先へうんと力を込めたようだった。

 ずり、と壁がずれる。一度動き出した後の変化は滑らかなもので、あっという間に、壁の一部が回転して、そこにはぽかりと黒い穴が現れた。私はびっくりして、目を見開いたままつぶやく。

「すごい……」

「だろう?」

 彼は立ち上がりながら、黒い穴を見つめる私にそう相槌を打った。ぽかんとしたままの私の手を引っぱって、すぐに、その穴の中へと踏み出していく。ほとんど走りだそうとするような早足だった。

 穴の中に入った途端、足元で鳴る音が変わる。私と彼が踏みしめる度、かんかんと、金属を叩くときの、よくよく辺りに響き渡る音が、私と彼の足元からは聞こえてくる。

「階段、気をつけて」

 彼が短くそう言った後、私の脚がはじめの段を踏みしめる。相変わらず彼が私の手を引いてくれているけれど、進んでいる道は外の廊下よりも急に、弧を描いているらしい。薄暗い中ではあまりよく周りが見えないけれども、私たちが今すすんでいるのとは逆方向にも、同じように弧を描いた階段が続いているようだった。ひとつ何か間違えれば、どこまでも、滑り落ちてしまいそうだなと考えると、ぞっとした。

 彼が、急に立ち止まる。あまりに急だったものだから、私は彼の背中へ鼻の頭を思い切りぶつけてしまう。がん、と一際大きな足音がした。

「どいてください」

 彼が、緊張した声で言った。どうやら、私たちの進む先に誰か居るらしい。私は彼の手を解かないまま、自分の立ち位置だけを彼の後ろから横へと変えた。

 私たちの居るのより少し上の段へ、ひとが立っている。そのひとは、私たちもよく知っているひとだった。「主任」と呼ばれる、眼鏡をかけた若い男の人だ。その人はいつも白衣を着ていて、私たちの勉強や、遊びを見てくれる。かと思えば、「日課」を嫌がる子に対して、冷たくて厳しい言葉を浴びせていたりもする。一言でまとめると、えらい人だ。「おとな」だった。

 なんでその人がこんなところにいるんだろう。そして、彼はこんなにも緊張しているんだろう。

「あなたたちは、ここから出るつもりですか」

 私が不思議に思っていると、主任さんがそう尋ねてきた。私は、びっくりして彼の方をうかがい見る。そんなことちょっとも聞いていない。

 横を向くと、彼は緊張した表情のまま、かたく唇を結んで、深く、しっかりと、うなずく。それを見て、私はますます目をびっくりした。

 ここを、出る。この階段がその為のものなのも驚きだし、彼が、そんなことを考えているのにも、驚いた。それに、私を連れて行こうとしているのにも。

「あなたはどうなんですか」

 主任さんが、今度は私へ向けてそう尋ねてきた。思わず、肩が小さく跳ねる。彼はちらりとこちらをうかがったようだった。

 そんなこと聞かれても困る、というのが正直なところかもしれない。だって今、たった今、私はそんな話を聞いたところだ。それで決めろ、なんていうのはとても乱暴じゃないだろうか。

 けれども、私の手を握っている彼の手の力が、急に弱くなったのが、私はなんだか腹立たしくって、彼の手をぎゅっと強く握り返しながら、口を開いた。

「私は、この人についていきます」

 彼がびっくりしたのが、主任さんを見たままでも分かった。少しして、彼が私と同じぐらいか、それよりも強い力で、手を握り返してくれた。

 主任さんは、黙ったままで私と彼とを見比べている。その表情は少しも変わらない。戸惑いも、憤りも、悲しみも、何もその表情は語っていない。変な感じがした。どこまでも冷静に、感情を見せないことが、「おとな」になる条件なんだろうか。それは、あまりうれしくないと思う。そういう風になることを求められるんだったら、彼と一緒に、今からここを出た方がよっぽど良いと思った。

「外の状況は知っていますね」

「ああ。人間に寄生して発芽する植物が、地表を覆い尽くしてる」

「そうです。君たちは……もう、それによって死んでも可笑しくない年齢だ」

 死。授業で昔学んだ知識と一緒にその単語を並べられて、心臓の音が早くなる。嫌な汗が手のひらに滲むのが分かった。

「行ったら最後、ここへもう一度入ることは出来ない。あなたたちは間違いなく、植物の種子を運んでくるから。——それでも、行くんですね」

 最後は疑問を尋ねるのではなくて、決まっていることを改めて確かめたのような言い方だった。彼は主任さんの言葉にまた、大きく頷く。私もまた。彼に続いて頷いた。

 主任さんは、顔を俯かせて、長く息を吐きながら、自分の体を壁の方へ寄せた。階段の内側に、一人分ほどの幅の道が出来る。彼がすぐに、私の手を引いて、ほとんど走っているような調子で歩き出した。主任さんの横に出来た道を通って、足音を鳴らしながら、かんかんと階段をのぼっていく。

 数段のぼったところで、彼は不意に立ち止まった。今度は背中にぶつかることなしに、私も立ち止まる。彼は肩から上だけで後ろを振り向くと、視線を主任さんの方へ向けた。私も同じ方を見る。主任さんも、肩から上だけを私たちの方に向けて、こちらを向いていた。

「俺たちを、止めなくて良いの」

「ええ」

 そう答えた主任さんの声は、なんだかとても疲れているように聞こえた。無表情なままだけれども、わずかに、ほんとうに僅かにだけ、笑っているようにも見える角度に唇の端を持ち上げながら、主任さんは言葉を続ける。

「私はどうやら、どこか壊れてしまっているようなので」

 その声は疲れ切って、沈み込んで、どこか、悲しそうに聞こえた。


 階段が無くなったところで、彼は今度は低い天井へと手を伸ばした。さっきと同じようにこんこん、とノックと同じ要領で叩いていく。そして、ある一ヵ所で手を止めると、両手をその一箇所へと伸ばして、天井を押し上げる。がこ、と音を立てながら、天井は上へと開いた。その穴から、彼は上へのぼる。私も彼に続いた。手を借りなくてものぼることが容易なぐらい、天井は低くなっていた。

 天井をのぼった先は、部屋のようになっていた。私は、押し上げられていた床を元に戻してから、きょろきょろと狭い部屋の中を見回す。殺風景だった。何も置かれても居なければ、窓もない。床も、さっき押し上げた天井を戻してしまった今だと、ただの一枚ののっぺりとした床にしか見えなかった。

 壁も同じように、三方はのっぺりとしていたが、残りの一方だけは違う。何やら丈夫そうな、金属製の扉があった。その扉は厳重にロックがされているようで、扉自体にも円盤状の取っ手がついているし、その横には、ほかのところでも見たことがあるような、カードをかざしたり、番号を入力したりするような機械が備わっている。

 彼は、その機械の前へと進んだ。そうして、ゼロから九まで番号を入力する部分へ、素早く長い数字の羅列を打ち込んでいく。

「どこで覚えたの」

「こないだ。カードが無くても、扉を開けてた」

 そう言いながら、彼の手は数字を打ち込み終わったようだった。素っ気ない電子音と一緒に、機械の右側の緑色のランプが、赤色に変わる。彼は安心したように溜息をつくと、扉についた円盤状の取っ手へ、手を伸ばした。それを動かさないまま、私の方を向く。

「本当に、ついてきていい? 今なら、君だけでもあそこへ戻れる」

 彼の目は、真剣そのものだった。静かに、私に覚悟を聞いていた。そのまなざしが、厳しくて、心地良くて、私は小さく笑みを零す。扉の方へと足を進めて、彼の隣に立ち、円盤状の取っ手に伸ばした彼の手の上へ、自分の手を重ねた。

 戻ったところで彼は居ない。彼は居ないのに、あの大きな部屋には居なくてはいけないし、毎日の「日課」もこなさないといけない。——彼と一緒に、何があるのか分からない外の世界へ行くのよりも、そのまま毎日がずっと続いていく方がよっぽど、私には恐ろしかった。

「今更、馬鹿言わないで。私、君についていくの。君が、好きだから」

 私の最後の言葉を聞いて、彼は目を丸くした。今更、驚いているみたいだった。今まで気付かなかったなんて、本当に馬鹿みたい。そう思ったけれど、私の顔に浮かぶのは笑顔だけだ。

 どこか照れくさそうに彼も笑みを浮かべて、彼の手に重ねた私の手の上に、更にもう片手を重ねた。だから私もまたその上へ自分の手を重ねる。彼の手がゆっくり、ゆっくりと円盤を左へと回した。きゅる、きゅるとかすかな音を立てながら、円盤はまわっていく。一周、二周、三周、と回したところで、円盤は止まった。これ以上は回らないらしい。

 彼が深呼吸をする。私もそれにならった。それから、彼と目を合わせて、一度、うなずく。円盤をぐっと、外へ向けて押した。少しの抵抗の後、すぐに、扉は滑り出す。

 開いた隙間からは、温かい風が吹き込んできた。その風へ目を細めながら、最後まで扉を押し開けようとする。扉が外へ向かって開くのと一緒に体を前に進めた。あまり大きくは進まないうちに、扉も動かせなくなる。

 立ち止まって、円盤から手を離した。すぐに、彼の手が私の手を握る。私はそれがうれしくて。ゆるく、彼の手を握り返す。

 私たちの目の前には、緑色の絨毯が広がっていた。この建物の屋上らしいわずかに見える白い床の端から、私たちが居る扉のすぐそこまでが、緑色の絨毯で覆われていた。その絨毯は、ときどき、人の形のように盛り上がっている。これが、病に倒れた人のなれのはてなのだと、すぐに理解が出来た。

 空は橙色に染まっている。遠くに、丸い橙色をした明かりが見えた。緑色と橙色の境目へ。その丸い明かりは沈んでいこうとしているようだった。その明かりを見ていると、何故だか、胸が締め付けられるような気持ちになる。

 彼の手が、私の手を改めて強く握った。私はその手を確かに握りかえしながら、前を向く。彼の隣で、前を向く。

 私たちの目の前から、遠く向こうまで。見渡せる限りの世界は、緑色に染まっていた。

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