第2話:そりゃないぜ、宇野さん!
私がクラシック音楽に耽溺したきっかけは、ショルティ/ロンドン交響楽団によるベートーヴェン。交響曲第5番「運命」を聴いたのが始まりだ。
詳細はまた別の機会に述べるが、涙を流すほど感動したことが今日までクラシックを聴き続ける種となり核となった。
感動を持続させるには、何か虎の巻のような物を読む必要がある。時を同じくして出版されたある本との出会いが、私のその後を決定づけた。
それが宇野功芳(1930〜2016)による、『クラシックの名曲・名盤』(講談社現代新書・1989年版)である。
私にクラシックを聴くきっかけを与えてくれたショルティも取り上げてもらえているだろうか。ドキドキしながらページを手繰った。
カラヤンなんて、どこが良いのかわからない。いきなり、当時帝王と称されていたヘルベルト・フォン・カラヤンをこき下ろしていた。
同じベートーヴェンを聴くなら、現役なら朝比奈隆、往年の名指揮者ならヴィルヘルム・フルトヴェングラーが断然いい。
まだクラシックビギナーに過ぎなかった私にとっては、見ること聞くこと(文章を、聞くと表現していいのやら)目新しいことばかり。
で、肝心のショルティはというと…。ショルティのベートーヴェンなんて、無機質でいただけない。完全に瞬殺扱い。目が点に。
そ、そ、そんなあ…。そりゃないよ、宇野功芳さん。ショルティのベートーヴェンで涙を流した私の立場って…。
他にも、
"メータのブルックナーなんて聴きに行くほうが悪い。ブルックナーを聴く人間は、それくらい知ってなくちゃいけない。"
後にベートーヴェン、ブラームスと共に長いつき合いになるブルックナーについても一家言があるらしく読者まで叱りつける始末。
正直、言いたい放題もいい所。が、逆にその思い切りの良さが読んでいて心地よい。幸か不幸か、宇野功芳という音楽評論家の存在を知ったことが私のクラシック人生に多大な影響を与えた。
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