第4話→

「つっかれたー!!」机に突っ伏して寝込んでいたら、隣で舞阪さん(アリスちゃん)がクスクス笑っている。


 1組と2組合同の体育は、バスケットの試合だった。


 何故か、2組に一人妙にノリの良い奴がいて、奴が言った、

「お前達1組を倒さない限り、俺達は前には進めないんだ!!」


 と言う煽りが、何となく試合自体を芝居がかって面白がってヒートアップさせて行った。


 心の中で(別に成績順でクラス分けされてる訳でも無いだろうに)と思いつつも、そこはノリで動いている男、歌川清水16歳、マントに仮面でも着ていたら似合いそうなポーズで、


「フハハハ!!ならばやって見るが良い、貴様らの希望も未来も、全て叩き潰してやろう!!」


 右手を大きく広げて、声高らかに宣言する。


「そう、このバスケ部三人衆が!!」


 うちのクラスのバスケ部の三人を指差す。


「歌川、お前じゃないじゃないかよ!!」「何でお前が、偉そうなんだよ!!」「引っ込め歌川!!」「消えろイケメン!!」「女子に後ろから刺されちまえー!!」


 凄い、ブーイング。


 ねぇ、女子に後ろから刺されちまえって何さ。


「僕と戦い戦いたければ、この三人を倒してからにするが良い!!」


 フハハハ!!と更に笑って2組を煽る。


「待っていろ歌川、俺達は貴様を倒して見せる!!」2組のノリの良い奴が、握りこぶしをして、僕を睨み付けてきた。


「キャー歌川君格好良いー!!夢路うざーい」


 応援してくれる子達に小さく手を振ると、僕に対しての声援が聞こえる。成る程、2組の彼は夢路君って言うのか?


 芝居っ毛たっぷりの寸劇に笑う者あり、冷やかす者あり、


「さぁ、僕を倒したければ三人衆を倒してから来るのだな!!」


 そう言いつつも、さて、いつまでこの寸劇を続けようか?と考えていると。


「歌川ー!!お前もメンバーだろう?さっさと並べ!!」


「はいはーい、すぐ行きまーす」


 はーいと、手を上げながらコートに走っていく。


「なんだよ、お前もメンバーじゃねぇか!!」


 話にオチがついた様で、みんな大爆笑していた。


 失礼しましたーと、コート内に入ると、コートの隅で神楽と一緒に座っている舞阪さんが、こちらに小さく手を振ってくれた。


 何となく、にやけが止まらない、夢路君には悪いけど簡単には勝たせてやらないぜー!!


「優人、ボールカム!!」同じチームの優人にボールを渡す様に要求する。


「歌さん、真島目モードだー!!珍しいー!!」

 優人の嬉しそうな声に、


「ボールドンドン回せよ!!」と大きな声で叫ぶ。男がやる気になる時なんて、大抵いつも一緒なんだよな。


 バスケ部三人衆が、「見せ場、残しといてくれよー!!」と手を上げてくる。

 僕は、軽くドリブルをしながら、どうゲームを組み立て様か考えていた。




 と言う訳で、最初に戻る。


「お疲れ様でした」


 舞阪さんの声に、ニッコリ微笑みながら。

「これは、明日から、しばらく筋肉痛かなぁ?」

 実際、少し頑張りすぎた気がする。

「歌ッチ、さんぴー凄かったもんねー!!さんぴー!!」

 神楽が背中をバンバン叩いてきた。地味に痛い。


「スリーポイントシュートな!!スリーポイント、まぁ、神憑り的だったけどな!!7本中5本は入りすぎだわ」と、ハハハと笑う。


「2組の夢路、涙目だったよね、流石、歌ッチ、謎燃えしてたわ」


「こう見えても、中学の時は部活の最中にいつもスリーの練習してたからな」


「バスケ部だったんですか?」


「ううん、バレー部」


「え?」


 舞阪さんの謎?な顔に笑っていると、


「歌さん、バレー部なのに、部活中にバスケやってる先輩って言われてたもんな」と笑いながら補足を入れてくれた。


「……まっあねー、周りの温度差について行けなかったのさ、バレー部の後輩達には、不真面目な先輩で悪かったよ」


 机に突っ伏したまま、右手をちょっと上げてヒラヒラさせる。


「大丈夫、後輩達、みんな歌さんの事大好きだから」


 ニヒヒと笑う優人に、ハイハイと言って、僕は大きな生欠伸を一つする。


「私には良く解りませんが、色々あったみたいですね?」


 まるで自分の事の様に、辛そうな顔をする舞阪さんに、何処か他人事の様に僕は薄ら笑いを浮かべながら、


「……別に何にも無いよ、誰も痛い思いした訳じゃないし、苦しい思いをした訳じゃない、本当に、周りとの温度差に嫌になっちゃっただけ……おっとそう言う訳で僕は、次の授業迄寝ます。寝てたら、舞阪さん、優しく起こしてねー」


「安心しなー、俺達が歌さんが安眠出来る様に耳元で愛を囁いてやるよー!!」


「うっせぇ、やめろ殺○ぞ優人!!」


「ヒッヒッヒッ、では一番手は、舞阪さんどうぞー!!」


「えっ?でも、歌川君起きてますよ?」

 戸惑う、舞阪さん。


「グーグー、僕もう食べられにゃい」

 おぅおぅ、男子たるもの、美人の囁きを聞かずして健康的な睡眠男子を名乗れるかー!!


「寝てる寝てる、歌さん寝てる!!」堪えられなくなってゲラゲラ笑う優人と神楽。


「ぶふっ、ほら舞阪さん、起こさないと!!」

 あんまり煽るな、ちょっと舞阪さんが不憫に思えてきた。(元凶だけど)


「えーーっ?」戸惑いつつも、どうしようか迷う舞阪さん。


 うん、僕は寝てる。聴覚に全神経を集中させながら集中ー、集中!!


 何かが、耳元に近づく気配がする。優人や神楽がからかう為に?まさか、舞阪さんがやるわけ……シーンとする。


 奴ら、俺を一人に置き去りにしてからかうとか?それとも、神楽辺りなら突然、ワーッと言う大声を出して驚かせるとか?


 そんな事したら、あいつらしばらく俺の家出禁にしてやる。


 ちょっとだけカサッという音がして、つい身構えてしまう。


 どんな悪戯が?


「あの……歌川君、起きてください。授業はじまっちゃいますよ?」


 あぁ、天使の声を聞いた。


「おっ起きてください。体育頑張ってましたけど、まだ他の授業がありますよ」


 俺は、ゆっくり体を起こして、ニッコリ微笑む。


 そして、舞阪さんの手を掴み、


「お願いします。毎晩子守唄を歌って下さい!!」


 脳が勝手に、馬鹿な事を言い出した。


 そして机を見て、有ることに気付き、もう一言、添えた。


「あっ、絵本の読み聞かせとかでも良いかも?」


 それを聞いた友人達は更に笑い、


「歌ッチ、眠れない夜の赤ちゃんプレイはヤバイよ!?」その安定の下ネタを聞いて、周りにいた人達迄、爆笑を始めてしまった。


「もうっ、からかわないで下さい!!」


 舞阪さんの大声って、初めて聞いた様な気がした。


「全く……本ねぇ」僕は、机を見下ろして書いてあった落書きを眺めた。



 ☆☆☆


 舞阪 side


 お陰でお友達が出来ました→お隣さんは、本が好きらしいよ?


 歌川 side New


 有能→お隣さんは、本が好きらしいよ?特に紙媒体。



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やじるし→君に届け まちゅ~@英雄属性 @machu009

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