第6話 肩を並べて。元カノ出現!?

「おはよう、蓮霞」

「おはよう、玲」


「やっぱ、そっちがお前らしいな」

「私も落ち着く」




また元通り


今日から距離をおいて別行動


いつも隣にいた玲とは


肩を並べて歩けない


憎まれ口叩きながら


通っていた時間がなくなるのが


何となく寂しく感じるのは


気のせい?





そんなある日の学校帰り。




「あっ! ……玲……」




前にいる玲の姿に声を掛けようとしたが声を掛けるのは辞めた。


本当なら簡単に声をかけられたのに彼の背中を見つめながら距離を保ち、一歩一歩、歩いていく。




「隣を歩く事はあっても、いざこうして 見ると違う発見あったりするなぁ~」



と、思った瞬間だった。




そして、マンションに着きエレベーター前に向かう。


一足先に乗り込む玲。


私は次に乗ろうと思っていると。





グイッと私の腕を掴み引き寄せた。




「きゃあっ!」



私は抱きしめられるように玲の胸の中にすっぽり収まる中



「おかえり~ストーカーの津谷 蓮霞さん」

「ス、ストーカーって……」

「だってストーカーみたいに後ついて来っから」

「し、仕方ないじゃん! 同じマンションだし同じ帰り道なんだから!」



そう言いながらも顔をあげる視線の先には、キス寸前の至近距離にある玲の顔。



ドキーッ

心臓が飛び出す勢いで胸が大きく跳ねた。



押し退ける私。



「だ、第一、この容姿じゃ、また目つけられるしむやみに声掛けれないし……」

「まーな。なあ、蓮霞」

「何?」

「今度デートしよう!」

「えっ? デート?…別に良いけど…」

「やけに素直じゃん」


「えっ? いや……別に断る理由ないし。色々、お世話になったお礼にと思って」

「俺、何かした?」

「私みたいな奴に彼氏役してくれたから」


「あー、でも、あれは俺自信の本音だから俺が得してるだけだし」







お礼とは言ったものの出掛けるのは嫌じゃない。


むしろ出掛けたい。


一時期、恋人として過ごしていた期間、玲の色々な部分をみて、私の心に変化が起き始めていた。


まだ好き迄には至らないけど、私の恋が始まりそうな予感がした。


だけど異性に対する苦手意識と怖いイメージは、まだまだ消えていないけど、前のようにはないと





そして ―――



「蓮霞 準備出来た?」



玄関のドア越しから声がする。



カチャ

玄関のドアを開けると、玲の姿。



ドキン

胸が高鳴る。



私達は出掛けた。



しばらくして ――――




「ちょ、ちょっと待ってよ!」

「お前がノロなんだろ?」

「あんたって優しさかったり冷たかったりだよね!」





私達は騒ぎつつも

街中デートを楽しんで過ごした。




今日1日だけのデート


今日だけあなたの隣で


また明日から


別々の道を


歩くんだよね……?






その日の夕方。



「また出掛けような」

「うん」

「うんって……」

「えっ? 何?」


「いや……俺、嫌だって断られるんじゃないかと思ったから」

「えっ?あー別に出掛けるのは嫌じゃないよ。まあ、色々、心の闇はあるけど……」

「心の闇って……」


「正直、男の子って苦手意識が強いんだけど……玲と接するようになって少しは大丈夫かな~って……そう……」




ドキン


キスされた。



突然の出来事に胸が大きく跳ねた。



「……悪い……」

「……ううん……」






期間限定の恋人して


オデコにキスはされていた


初めて学校でされた時は


正直驚いたけど


しばらくの間の期間だからって


自分にそう言い聞かせていた



だけど


今日に限って


まさかの唇のキスは


不意をつかれた…………






エレベーターをおりる階に止まり私達はおりる。





すると ――――



「加須音(かずね)……?」



玲がエレベーターからおり少しして女の人の名前を呟いた。




「えっ?」



私は玲が見つめる視線の先に視線を向けると玲の部屋のドアの前に女の人の姿。




「……俺の元カノ」



ズキン

胸が痛かった。




「そ、そうなんだ」



元カノが私達の方に振り向き目が合う私達。



「れ、玲、そう言えば私、買い物すんの忘れてた」


「えっ?」


「今日はありがとう。またね」

「あっ! おいっ!」




私はエレベーターの方に歩いて逆戻りした。





「……全く……分かりやすい奴。元カノだって言ってんじゃん」



「ごめん玲。お邪魔だったみたいね」

「全くだ。元カノって言ったけど逃げるように俺の前からいなくなるし」

「女の子は気にするから」


「で? 何? 恋の悩み? 良くもまあ自分(そっち)からフっておいて相談ですか? 渡部 加須音(わたべ かずね)さん」


「……玲しかいなくて……」

「取り合えず立ち話もなんだからどうぞ!」





そんな私は近くの公園のベンチに腰をおろしていた。



「今の人……確か……」



私は以前眼鏡を拾ってくれた女子生徒を思い出した。


彼女は美人な人で優しい人のイメージがあった。


玲の元カノと聞いて私は複雑だった。





しばらくして ―――



「蓮霞さん」




名前を呼ばれ振り向くと、そこには元カノの姿。




「ごめんなさい。名前呼んだけど馴れ馴れしかったかしら?」

「いいえ。大丈夫です」

「せっかくのデートをお邪魔してしまってごめんなさい」

「いいえ」

「隣良い?」

「はい」


「玲とはいつから?」

「えっ?」

「付き合ってるんでしょう?」

「あ、いいえ」

「えっ? そうなの?」


「はい、今日は偶々デートに誘われて」

「そうなの?」

「はい」


「玲にはまだ過去の事話していないので……玲は好意があるみたいですけど。以前……あの呼び出された次の日から付き合っている事にして……友達として出掛けただけで」


「そう。私は、彼氏の相談にのって貰った所なの」


「彼氏の相談?」

「そう。彼氏が私以外の女の人と歩いているの見かけちゃって」

「えっ?あなたみたいな美人な彼女がいながら? あっ! すみません……」

「ううん。問い詰めたら友達って言うんだけど信じられなくて……」

「それはそうですよ~」



私達はしばらく話をしていた。





その日の夜。



コンコン

ドアがノックされる。



「蓮霞いる?」



ドア越しから私の名前を呼ぶ声。

玲だ。


私は玄関を開ける。



「玲? どうしたの?」



取り合えず中に入れる。



「お前、元カノと面識あったんだな」

「あ、うん。まあ……私が呼び出された時に優しくしてくれた人」

「あー、そういや加須音言ってたな~」




玲から元カノの名前を聞くと、何処か複雑になる。




「なあ……お前の過去…聞く事無理か?」

「……それは……」

「正直気になるけど、無理に聞こうとは思わねーけど……俺自身も聞くのが怖いかも……」

「玲…が…?」

「いやだってそうじゃん! どんな爆弾発言あるんだろう?って……」



私はクスクス笑う。



「そんな爆弾発言する大袈裟な内容じゃないと思う。多分……」


「多分って……」



頭をポンポンとする。



「悪い。お前の言いたいと思った時で良いから」

「玲……うん」

「じゃあ部屋戻る」

「うん」

「おやすみ」

「うん……おや……」



キスされた。


ドキン

胸が高鳴る中、私を抱きしめた。


そして、抱きしめた体を離し私の部屋を出て行った。




玲の優しさや行動は私の心を虜にする。




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