第5話 速水 玲のファン、期間限定の恋人同士
私達は出掛けた事で、その日、まさか私の隣人が速水とは知らずに、その日明らかになった。
今じゃ当たり前の登下校。
これが、私の容姿を見て良く思っていない人が現れ ――――
「ねえ、あの女、彼の何?」
「本当」
「最近、やけに親しいし、いつも一緒だよね?」
「別に可愛い訳じゃないのにさぁ~」
そして、ある日の学校帰りの放課後。
「ねえっ! ちょっと顔貸してくんない?」
「えっ?」
突然、数人の女子生徒に囲まれ呼び出しをくらい連れて行かれた。
「あのー……一体……」
「あんた、玲君の何?」
「えっ!?」
「かなり親しいみたいだしさぁ~。彼女いないって話だし一体、彼の何なの!?」
「………………」
≪コイツらこそ速水の何なわけ?≫
「何か言いなよっ!」
「口あんでしょう!?」
「あなた達こそ何ですか? 私達は別に誤解されるような関係じゃありませんので! 失礼しますっ!」
グイッと掴まれ押し飛ばされ眼鏡が落ちる。
「……っ!」
「余り彼に近付くとタダじゃ済まないからっ!」
そう言うと私の眼鏡を踏み潰すと彼女達は去って行った。
「……一体……何なわけ?」
「はい、大丈夫?」
踏み潰された眼鏡を拾ってくれると私に渡してくれた。
「……すみません……ありがとうございます」
≪うわぁ~美人な人≫
「彼女達、速水 玲君のファンらしいわよ」
「ファン!?」
「ええ」
≪芸能人じゃあるまいし≫
≪ファンって……そんなの存在してたわけ?≫
「そ、そうなんですね…」
「だけど、あなた、それだけ美人なら目つけられないかもしれないのにもったいないんじゃない?」
「……あー……ちょっと……理由(わけ)あって……眼鏡掛けているんです」
「そうなの?」
「はい……同性ならさっきみたいな事で済むんで……異性だと違う問題(こと)に巻き込まれるので……」
「違う問題(こと)?」
「はい。自分で言うのもおかしいんですけど、確かに私は美人だって……異性にも言われた事あったんですけど……男騙してるんじゃないかとか言われ、危険な目にも遭った事もあったんで……」
「見た目で勝手な思い込みされてるのね……」
「はい……だから男の子に対する恐怖心とか苦手意識があって……」
「そう……」
「すみません。私の話なんてどうでもいいですよね。ありがとうございます」
私は帰る事にした。
「眼鏡……買わなきゃ」
眼鏡の件で店に寄り、すぐに眼鏡は出来ないとの事だった。
私は、学校に行くのに抵抗があった。
次の日 ―――
エレベーターに乗った直後、扉が閉まり始める。
「すみませんっ! 乗りますっ!」
私は『開』のボタンを押した。
「すみません……助かり……えっ!? 津谷!?」
「うん……」
「何で?」
「えっ?」
「いつもの容姿は?」
「ちょっと……」
「ちょっとって何だよ! あっ! もしかして彼氏出来たとか?」
「違いますっ!」
「ええーーっ! ……マジかよ……」
ちょっとイジケモードの速水。
「えっ?」
「それ絶対駄目っ!」
「速水?」
「学校にそれは禁止っ!」
「な、何で? 」
「眼鏡なしで、お下げ髪すれば良いじゃん!」
今日の私の容姿は、眼鏡なしの髪下ろしバージョン。
つまり、滅多にしないプライベート用といっても過言ではないだろう?
正直、この容姿はしたくないのが私の本音だ。
≪い、いつもの速水じゃない気がするのは気のせい?≫
「それは……」
「理由は?」
「えっ? 理由!?」
「どうして今日は、その容姿なわけ? 絶対ファン増えるパターンじゃん!」
「ファン……って……あっ! じゃあ、そのファンの奴等に言ってよ!」
「えっ?」
「私、あんたのファンから呼び出しくらったんだからねっ!」
「えっ!? ……俺の…ファンって何?」
「あんたに近付くなって! 私はあんたの何? って言われて意味分かんなくって…そうしたら、偶々優しい人が、速水のファンだって教えてくれたの! あんたのファンに眼鏡踏み潰されたんだからね!」
「……俺……そういうの頼んでねーし…他人に迷惑かける奴すっげー大嫌いなんだけど?」
「知らないわよ! とにかく私だってこの容姿は嫌だけど、お下げ髪して眼鏡かけている容姿が出来ないし、1つでも欠けてたら嫌なの! 私は、いつもの容姿か、これ以外の容姿はしないから」
エレベーターが到着し、降りるのと同時に私の手を掴まれた。
ドキッ
胸が大きく跳ねた。
「だったら考えがある」
「えっ?」
「俺達が付き合っているようにすれば良いじゃん!」
「つ、付き合う? な、何言って…む、無理だよ! あんたには彼女いないって分かってんだよ!」
「そんなの昨日までの事。今日から彼女がいる事にすれば良い。実は彼女がいましたって! お前のその容姿知らないんだろうし」
「簡単に言わないでよ!バレるに決まってんじゃん!」
「バレねーよ! 俺がさせねー!」
ドキン
速水の言葉に胸が大きく跳ねた。
「速水…」
「俺達が付き合っているようにすれば男も寄らねーし、一石二鳥」
「無茶苦茶だよ……そんなの…」
「例え好きじゃなくても、俺はお前を他の男にとられたくねーんだよっ!」
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
いつもの容姿じゃない私がタイプだって事は言われていたけど、いつもの容姿は別なのは正直複雑な心境。
だけど ―――
≪違うように見えたのは、そのせい?≫
≪嫉妬みたいなやつ?≫
「眼鏡かけていたのも、その容姿隠したいからだろう?」
「…それは…」
「だったら他の男達を寄せ付けないようにするには、それしかねーじゃん。付き合ってますってわざと見せつけておかなきゃ」
「速水…」
「今日から苗字禁止っ!」
「えっ?」
「いつもの学校の容姿に戻るまでは期間限定だからな! 蓮霞!」
ドキッ
異性から初めて名前を呼ばれ私の胸が大きく跳ねた。
私達は恋人繋ぎして登校する。
「そういや…お前過去に間違って部屋に来た時、眼鏡置いてなかった?」
「眼鏡……? あっ!」
何となく記憶にある。
「じゃあ、もしあるなら返して!」
「やだ!」
「えっ!? や、やだって……だって眼鏡 返したらいつもの容姿で登校出来るし!」
「確かにそうだけど、こんな経験出来ないし。楽しみたいし!」
「あのねー」
そして、学校に着く私達。
私達以外にも沢山のカップルがいるので問題なくクリア出来た。
帰りも待ち合わせ場所を話し合い、別れ際、私のおでこにキスをした。
ドキッ
不意のおでこキスに胸が大きく跳ねる。
≪は、反則っ!≫
「じゃあな蓮霞。後でな」
そして、頭をポンポンとすると去って行った。
ズルい!
ズルい!
ズルい!
私の心臓持たないっ!
「蓮霞!」
グイッと背後から抱きしめられる。
「きゃあっ!」
振り返ると、果緒瑠がニヤニヤとしている。
「ちょっと!聞いてないよ!蓮霞っ!私に内緒で、いつから付き合ってんの?」
「えっ? あっ!いや……これは……」
「こらぁ~吐けぇ~」
「ごめ~ん!」
果緒瑠にも説明は日を改めてきちんと話すからしばらくそのままにしておいてほしいと伝えた。
今日から期間限定の恋人同士で、速水…いや玲のファンにバレないように過ごす事が条件だから。
もしバレた時は、付き合っていた事にして、何かあったら俺に言えと玲が言ってくれた。
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