第2話 婚約者の話と婚約者
数年後。
邑岐 鮎花。16歳。
高校1年生。
ある日の夜 ――――
「お父様、お話って?」
「鮎花の婚約者を見付けないといけない年頃だ」
「婚約者!? いや、まだ良いです!」
「そう言われても既に話は来ているんだよ」
「知らないわよ。私よりも神崎に後継者に譲ったら? 女の人も募集してみたらどう?」
「鮎花っ! そういうわけにはいかないんだよ」
「どうして?」
「神崎君は、ここの屋敷に仕えた執事なだけなんだ」
「………………」
「とにかく会うだけ会いなさいっ! その後どうするかは自分の気持ちを素直に言って貰えば良い」
「お父様……」
私、邑岐 鮎花は、お嬢様育ち。
母親は、いない。
気付けば、お父様一人で私を育ててくれていた。
母親の事は私の思い出の記憶には一切ないのだ。
生きてるのか?
死んでいるのか?
その事さえも私は知らない。
「それから、お前に話をしておきたい事がある。これは大事な話だ。パパに何かあった時、お前を助けてくれる人が必ず現れるから、その人の言う事を聞くんだよ」
「神崎以外の言う事をきけだなんて……」
「神崎君は邑岐家に執事として仕えた人間なんだ。ただし、お前を助けてくれた人もお前の良き理解者になると思う」
「そう…なんだ…分かった」
この後、事件に巻き込まれる事など知るよしもなく ―――
ある日の休日。
「お嬢様、お出かけですか?」と、執事の神崎。
「友達とショッピングに行って来ます」
「送迎は大丈夫ですか? 何かあったら遅いですよ」
「運転手付きのショッピングなんてしたら自由が利かないから嫌。自分達のペースでショッピングを楽しみたいの! 迎えならショッピングの終わった後に連絡する」
「さようでございますか。承知致しました。楽しんで」
「行って来ます」
「行ってらっしゃいませ。お気を付けて」
私は出掛けた。
その日の帰り道の迎え待ち ―――
「彼女達、何してんの?」
「凄い荷物だね」
「送ろうか?」
「いいえ! 大丈夫です! 迎え待ちなので」
「迎え待ち?」
「彼氏?」
「もしくは良い所育ちの女の子?」
そこへ ―――
「お嬢様。お待たせ致しました」
「あっ! 神崎」
「お嬢様ぁっ!?」
「や、やっぱり……し、失礼しました」
彼等は去って行った。
「彼等は? まさかっ! お嬢様、男の方と一緒にショッピングをされていたんですかぁっ!?」
「ち、違いますっ! 声を掛けられて困っていたんですっ!」
「さようでしたか。安心しました。それでは帰りましょう。しかし……声を掛けられたということは……もう少し遅ければ連れて行かれていた可能性があったという事ですよね?」
「えっ?」
「お嬢様達は、女性なのですから気をつけておかないといけませんよ?」
「大丈夫ですよ!」
「お嬢様っ! あなたは邑岐家のお嬢様なのですから特にお気を付けて行動されて下さい!」
「は~い」
「全く。自覚が足りません」
「そんな事言われても……」
「何かあったら遅いんですからね」
「分かってます!」
「分かってません! 専属 SP 付けていた方が良いんじゃないんですか?」
「ええっ! やだ! 自由がなくなる」
「だったら……もう少しお嬢様らしくされて下さい」
「……はーい……」
幼い頃、神崎と一緒に遊んで馬鹿な事ばっかりしてお父様に怒られていたのが、今じゃ神崎にも怒られている事が多い気がする。
もっと自由な所に生まれたかった。
だけど、そうだとしたら神崎 昴とは出逢えてなかったのかな?
神崎 昴は、あの頃と変わってしまった……?
私が子供なのかな?
昴君と言っていた頃の彼じゃない。
どう見ても昴って呼んだ方があってる位、彼は一人の男の子というより男の人に変わったから……
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