私の執事は・・・

ハル

第1話 炎に包まれて

「じーじ」

「おお、鮎花ー、今、じーじと言ってくれたねー」



「ばーば」

「まあ鮎花ちゃん、お上手に言えたねー」



私、邑岐 鮎花(ゆうき あゆか)3歳。




その日の夜の事。




ドーーーン……





屋敷内に突然の爆発音が響いた。



「鮎花っ!鮎花っ!起きなさい」

「……ん」

「鮎花ちゃんっ!起きてっ!」


「……なぁに? じーじ……ばーば……もう朝なの?」

「違うよ。火事なんだよ。さあ逃げよう」

「……?」

「お屋敷が燃えているんだよ。外に出よう!鮎花ちゃん」



「火事? 燃える?なぁに?」



3歳の私にはすぐに理解するのに時間がかかった。

しかも、寝ている所を起こされたから尚更だ。


私を抱きかかえで逃げる方法しかないと判断し始めている中、火の手はすぐそば迄来ていた。




そこへ ―――――



「二人共先に逃げて下さいっ! 鮎花は俺が連れてくるから!」


「昴(すばる)」

「早く!」

「ああ、じゃあ頼んだぞ!」



祖父母は先に逃げる。




「鮎花、逃げるよ!」

「逃げる? ……うん…」






次の瞬間―――――




バリーン……




バリーン……



屋敷の窓硝子が割れる。



「鮎花っ! 昴君っ!」

「おじさん!」

「パパ!」




すると火の手が私達を囲んだ。




「熱い……熱いよ…パパ…」




バリーン……




バリーン……




再び窓硝子が割れた。




その時だ。





「俺が必ず二人を連れ出します! あなたは逃げて下さいっ!」


「…君は……」

「通りすがりの者です。俺はあなたの味方です。一先ず、外に出ましょう!」

「ああ、分かった!」




バサッ

火を布で被せ、逃げる道を作る人影。



「さあ、来いっ!」

「鮎花、先に」




そう言われる中、私は昴君の手を掴み私達は助けに来た男の子に助けられた。




「鮎花っ! 昴君っ!」

「鮎花ちゃん! 昴っ!」




父親と祖父母に抱きしめられる。



「すみません。ありがとうございます!助かりました」

「いいえ」



そう言うと助けてくれた人は帰って行く。



「パパ…お兄ちゃんは?」

「もういないよ」

「いなくなっちゃたの?」

「ああ」

「…そっかぁ…」



私達を一瞬にして恐怖にさせた炎。


私はそれ以来火の存在がしっかり記憶に刻み込まれ炎を見るだけで私の足は立ちすくみ身動きが出来なくなってしまうのだった。





それから数年の月日が流れる。




邑岐 鮎花。12歳。



「お嬢様っ!」

「うわっ!神崎っ!」

「またレッスンをサボりましたね!」

「だって面倒…」

「邑岐家である大事なレッスンです!」


「だったら神崎が、お父様の後継者になれば良い!だってお父様の親戚関係なんでしょう?」

「お嬢様、そうなった場合、私とお嬢様の関係はなくなり、私はここを辞めざるを得ません」

「えっ?」

「私は、邑岐家に仕えた執事ですよ」



「それは……」

「まあ、まずないと思いますが?」




神崎 昴(かんざき すばる)20歳。


彼の両親は、幼い時に事故で他界。

父方の祖父母に育てられた男の人。


お父様の親戚関係になり、私達は幼い頃から一緒に、この屋敷で今迄過ごしてきたのだ。


幼い頃は仲良く名前を呼び合い過ごしていたけど気付けばお嬢様と執事として過ごしている。


幼い頃が嘘みたい。




「次回、サボられたら許しませんからね」

「はーい」





そして ――――




「お嬢様ーー」

「お嬢様ーー」



私を探すメイド達。



「お嬢様、やはりこちらにいらっしゃいましたか?」


「わぁっ! か、神崎っ!」

「今日はレッスンに行きますよ! 前回の分も含めたレッスンになりますので宜しいですね!」


「えっ!?」


「当たり前じゃないですか!? サボるお嬢様が悪いんです!」



私は、レッスンに行く事になるのだった。






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