第5話 無一文でチーム探し
「ああ、ここはサッカーチーム『竜殺しは俺の友達の親戚の知り合い』だが、なんのようだ」
とりあえず旅をする余裕は無くなった俺は、一番近くのサッカーチームを訪れていた。何はともあれ、どこでもいいので早く入団しないと飯も食えない。
「俺はサッカーの勇者の三浦だ。入団してやるから早く飯を食わせるのだ」
「はぁ? サッカーの勇者だ? それが本当ならぜひ入団してほしいところだが……それで、ポジションはどこなんだ?」
「フォワードだ」
「ほう、もしかして魔法タイプか? まあ、戦士タイプでも能力次第では構わないが、どうなんだ」
「強引なドリブルが得意なフィジカルがしっかりしたタイプだ。重い砂のボールで鍛えてるから、凄いシュートが打てるぞ」
「なんだそれは? よくわからんが戦士タイプのようだな。武器はなんだ? 剣は扱えるのか?」
「香川県出身だ。うどん県と言えばわかりやすいかな」
「うどん剣? まあいい。ならその実力を見せてもらおう。ついてこい」
そう言って受付の男は俺をグランドに案内した。
「今からゴブリンを三体、このグランドに解き放つ。そいつらを倒しながら、シュートを決めてみろ!」
はぁ? 何を放つって?
言っている意味はわからなかったが、気持ち悪い子鬼みたいなのが三体出てきたので多分あれのことだろう。
「よし! 制限時間は3分だ! その間にゴブリンを倒してシュートを決めろ!」
そう言ってホイッスルを鳴らす。
ゴブリンと呼ばれた気持ち悪いのが、なぜか俺に向かって走ってくる。口からはよだれをたらし、必死の形相がかなり怖い。
とりあえず俺はグランドの中心に置かれたボールに向かう。だが、ボールをキープした時には怪物どもに囲まれていた。
「なんだこいつら!」
ギーギーと叫びながら怪物が群がってくる。そしてあろうことか一匹が俺の尻に噛み付いてきた。
「痛っ!! 何すんだよ!」
さらに怪物たちは我先のと、次々に足や、腕などに噛み付いてきた。
「うぎゃ!! 痛いって!」
「おい! 何してるんだ! トロトロしてたらゴブリンに喰われちまうぞ!」
食われる? ちょっと待て、こいつら、俺を食おうとしてるのか!?
いやいや飯を食う為にこうして入団テストを受けてるのに、俺が食われてどうするんだよ。
怪物たちをどうすればいいのかわかならなかったが、とりあえず無視してシュートを打つことにした。
強引なドリブルで怪物たちを蹴散らしてシュートを放つ。ボールはまっすぐとゴールネットを揺らした。
「よし! シュートを決めたぞ!」
そう喜んでいたのだが、入団テストを審査している男も、周りのギャラリーも溜息をついて嫌な顔をする。
「馬鹿野郎! ゴブリンを倒せと言ったろうが! これはストライカーとしての戦闘力を見るテストだぞ!」
ストライカーに戦闘力が必要だとは初耳だ。
「怪物はドリブルで蹴散らしただろ。何か問題なんだよ」
「とどめを刺さないと意味がねえだろ! みろ、もう復活してお前の足をかじってるだろうが」
見るといつの間にか怪物たちが俺の黄金の足にかじりついていた。
「いてっ!!」
「とにかく入団テストは不合格だ。ゴブリンも倒せないようなストライカーはいらない」
「なっ……なんだと!」
その後、文句を言ったが取り合ってもらえなかった。完全に不合格である。
やばいな……飯もそうだが、今晩泊まる場所もない。現実を考えていると、腹が危険を察知したのかぐ〜っと警告の音を鳴らした。
超絶蹴球列伝 サッカーボーイ三浦くん 異世界編 RYOMA @RyomaRyoma
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- ヨシココンテスト参加と公募作の供養、その合間に好きなものを好きなように書いてます。 誤字脱字の指摘はありがたい派。趣味は近況ノートの徘徊。 ヨムする時は完結後にまとめて読むことが多いです。間空くと忘れちゃうから。 私の近況ノートはチラシの裏の走り書きのようなものと捉えてください。約一ヶ月で順次、古新聞古雑誌のように消えてゆきます。 いつか印税でミラコスタとベラージオに泊まりたいです。
- INGEN専門ジャンルはSF、スペースオペラ、戦記、群像劇。硬派になりたいお年頃。 【作者略歴】 超僻地要塞四国島出身。 愛媛みかんの国に生を受け三十年。うどん、鰹節、すだちの国の民と血で血を洗う戦いを続ける。 従軍記者として5年勤務。勤務中、膝に流れ手榴弾を受けて退職。 みかんの山に首まで埋もれていたある日、「俺、戦記書くわ」と一念発起。現在に至る。 現在は超修羅要塞九州島で傭兵として活動中。修羅の国の人ではない。 (※このプロフィールのどこまでが真実かはINGENまでお問い合わせください。)
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