第31話
少し歩くと、ガーディアンの姿が見えてきた。
「あれか……。実際どのぐらい強いんだろうな……」
リックがそうつぶやいているのが聞こえる。
「強さとか関係ないでしょ!私たちは倒すしかないんだから」
セルファのこういう言葉には励まされるよな。
「とにかく、コアを見つけないとどうしようもないから、それの発見に集中しよう。コアらしきものを見つけたら、すぐに攻撃をそこに集中させるようにするから。よろしく!」
俺が本当に簡単に作戦を伝えると、全員がそれに応じてうなずく。
少し遠くから見えているガーディアン。大きさは大体3メートルってところかな?あれだけの大きさのものを動かすとなると、魔石の大きさは手のひらサイズからもう少し大きいぐらいかな?
正面にあればわかりやすい。ただ、そんな場所に設置するとは考えがたい。ってことは、側面かもしくは背面……。
向かってくる敵にはしっかり反応するらしい。だけど、背面を取ること自体が難しいとは考えられない。
そもそも、戦わなくてもいいってことは後ろをとらないといけないってことだからね。
まずは、誰が後ろに回る役目をするかだけど……。ここはとりあえず1番動きの速いセルファにお願いしようか。
「とりあえず俺が正面で引きつけるから、その間にセルファは後ろに回ってくれるか?それで、コアが見つかったら、教えてくれ!」
「分かった!」
セルファが後ろに回りやすいように俺たちはサポート。敵は逃げる敵を襲うことはない。つまり、引きつけるためには背中を向けてはいけないということだ。
とりあえず、こちらに気をそらさないといけないから……。
「ミンク!ライトをあいつの目の前に発生させることってできる?」
とりあえず、目を眩ませてしまえば、動けなくなるっていうのはどんな物だろうと変わらないはず。
俺たちの姿がとらえられなければ、攻撃することだって難しいだろう。
「わかった!『ライト』!」
ミンクが俺の言葉に応えて、とんでもない光量の光をガーディアンの目の近くに発生させる。いや、光の量が強すぎて俺たちもまともに動けないな……。そうだ……!
「『ダーク』!」
その光を囲むように暗闇の魔法を発生させる。これで俺たちのところに届く光はだいぶ抑えられるはずだ……。
よし、この間に……。
「セルファ!」
「分かってるって」
俺が言う前にセルファは動き出していた。ガーディアンの後ろに回り込むように駆け出している。
よし……これなら……。
セルファが、うまく後ろをつこうとしたその時……。
「危ない!」
俺は、ガーディアンの様子を見て思わずそう叫んでいた。光で目が眩んでいるはずのガーディアンが明らかにセルファに向けて攻撃をしていた。
セルファは、俺の声に合わせて上手くかわしたみたいだ。けど……なんで?
頭を切り替えて、俺はセルファの方を向いているその後ろに向かおうとする。
が、その瞬間にガーディアンは後ろに下がり、完全に壁を背にした。
これでは後ろに回り込むことはできない……。
ただ、完全に後ろを取らせないようにしていることはわかった。
やっぱりコアは背中にあるんじゃないか……?
「くそっ。光でも動きを止められないみたいだな……」
リックが悔しそうにそう言う。
「でも、そんなに動きは速くないから、攻撃を避けるのは簡単だよ」
それは、セルファの速さがあるからだと思うんだけど……。
ただ、セルファなら咄嗟にでも攻撃をかわせることは分かった。
やっぱり後ろをつくのはセルファに任せるべきだろう。
ただ、このまま壁を背にしているとそれは不可能。なんとかして前に連れてこなくては……。ただ、逃げる敵には向かってこないんだよな……。
少しそう考えていたら、突然ガーディアンが動き出した。狙いは……?
ガーディアンの向かう方を見ると、アンリが宝箱の方に向かおうとしている。
なるほど。宝箱を守るように設定されているから、宝箱に向かえばそちらを排除しようとするってことか。
「アンリ!もう行かなくていい!こっちでなんとかする!」
アンリは俺の言葉に足を止める。
ただ、ガーディアンは変わらずアンリの元に向かっている。
よし!このまま……。
俺は、土魔法の特化陣をガーディアンの向かう先に作り、魔石粉を送り込む。
そのまま……。
「『ウォール』!」
いや、別に魔法陣だから詠唱は必要ないんだけどね。なんとなく言った方が格好いいかなって。
俺の言葉とともにガーディアンの行く手を遮る壁が作り上げられる。
よし。これで完全にガーディアンは俺たちに背中を向けたことになる。
「セルファ!コアが見えたらそこに攻撃を叩き込め!」
ガーディアンが壁にぶち当たった瞬間、セルファがガーディアンに追いつくのが見える。よし。これでやったな……。
「……ない!ないよ!ヴォルクス!コアなんてない」
は……?え?背中にあるんじゃないの?
セルファが言うと同時にガーディアンがセルファの方に向き直る。
「くっ……」
俺はいけると思ったから動き出しが遅れてしまった。
「ゴーレム召喚!」
ただ、ミンクが間に合った。ミンクの作り上げたゴーレムがセルファをかばって攻撃をくらう。そのままゴーレムは消え失せた。だけど、既にそこにはリックが向かっている。
突然のゴーレムの登場に一瞬動きを止めたガーディアンに向けて、魔剣で攻撃を叩き込む。
おっ!ダメージは受けるみたいだ。少しよろめいているのが見える。
ただ、ガーディアンはすぐに体勢を立て直す。そして、そのままリックに攻撃を仕掛ける。それをリックは受け止めるのが見える。
「一旦下がるぞ!体勢の立て直しだ!」
俺の声に全員が反応してガーディアンから逃げ出す。
本当に逃げようとする対象には反応しないようで、俺たちが逃げていることに気がつくと、そのまま、元の位置に戻るのが見える。
「うーん……。背中にもコアがないとなると、どうすればいいんだ……」
俺が悩んでいるのを見て、みんなも首をひねる。
「このまま力押しで倒せないかな?」
リックは、そう俺に向かって聞いてくる。
「うーん……どうなんだろう。それで倒せるように作られてないって話だけど……」
「試してみようぜ!全力でやればいけるかもしれないじゃん!」
まぁ、俺も試してみたい気はするけど……。
実際、そんなに上手くいくのかな……?
「じゃあ、そうしてみるか。リックとセルファは前で攻撃。ミンクはゴーレムを召喚しながら魔法で攻撃。アンリは矢を打って気をそらせないか確かめてみて、俺はとにかく魔法を連発してみるから。それでいこう」
とりあえずの作戦を立てて、戦うことにした。その間にもしもコアを見つけたらすぐにコアを叩くようにする意識も忘れずにね。
俺は、ガーディアンに向き合う。
そのまま、昨日ストームウルフを倒した方法でガーディアンの頭に魔法陣を書き火魔法を使う。
魔石粉の残りの量は気になるけど、出し惜しみしている必要はない。ガーディアンを倒しちゃえば帰りは今までと同じ敵しか出てこないからね。
火を食らうガーディアンを見て、それに向かって全員が攻撃をたたみかける。
おっ。意外ときいてるんじゃない?
と思ったけど、火の勢いなんて関係なくガーディアンはこちらに向かってくる。
ん?ターゲットは俺か?
魔法を使ってるのが俺ってことが分かってるんだろうな……。
もう、背中を向けることすら気にしてないな。俺は、もう一度土魔法のウォールを作り出す。
俺はあいつの攻撃を受け切れるほどの体力はないし、攻撃をかわせる自信もない。近づかせないことが1番だ。
俺のウォールで足を止めてるガーディアンに対して、みんなが向かう。
「あんまり近づきすぎるな!警戒は忘れるなよ!」
「分かってるよ!」
俺の言葉にみんなが答える。まぁ、そりゃそうだよな。
そのままみんなが攻撃を仕掛けてるようだ。
音が聞こえる。
「くっ」
「リック!」
リックとセルファの声が聞こえる。攻撃受けたのか……?
俺がウォールを消して、姿を見る。
やっぱり……。利き腕を痛めたようで、剣を持つ手が左手に変わってる。
「無理するな!アンリ、回復!」
「もうやってる!」
俺が言う前にそんなことはやっていたらしい。
と、俺の言葉に応えるように、ガーディアンがこちらを向く。ん?今、音に反応しなかったか……?
そう言えば、さっき光は気にしてなかったみたいだよな……。
試してみるか……。
「『アラウンドサウンド』!」
とりあえず思いつきで風魔法と空間魔法を組み合わせて音の魔法を作り出す。
ガーディアンの周りで激しい音を発生させる魔法だ。
あぁ、やっぱりだ。
完全にキョロキョロしてる。
ガーディアンが捉えてるのは光じゃなくて音みたいだ。考えてみたら、前世で作ったロボットでも超音波で距離を測るタイプのものがあったな。そういう感じなんだろう。
音に弱いんだな。
さっきも、俺が指示するような声を出しているのに気づいて反応したんだろう。知能自体はあるみたいだから、そのぐらいは考えられるんだろう。
そのまま、ガーディアンはふらふらしだしてその場に倒れ込んだ。
よし!倒した!
ただ、機能停止をしているわけじゃないようだから、このまま魔法を止めたらまた起き上がって動き出すだろう。
それじゃあ、完全に倒したことにはならない。
やっぱり、コアを見つけ出さないと……。
「あっ!見つけた!」
そう思っていたら、セルファが声を上げる。
なんだ?コアを見つけたのか?
「ほら、足の付け根!」
足の付け根……?
俺が見える位置にはない。
「よっしゃ、壊すぞ!」
リックがそう言って攻撃を仕掛ける。腕は直ったみたいだ。
リックの攻撃がコアに当たったようで、完全にガーディアンの動きが停止した。
「やったー!」
なんとか、倒したみたいだ。
そのあと、確認したら、足の付け根に2箇所魔石が取り付けられているところがあったみたい。
……なるほどね。2つ使うことで一つ一つの魔石の大きさを小さくして動かしてたのか……。
仕組みも分かったし、俺たちだけでガーディアンを倒すこともできた。
これは、かなりいい成果なんじゃない?
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