半年前

 男子と女子というヤツは、同じ教室にいることは小さい頃と変わらないのに、成長するほどに分かれていって遠いものになってしまう。

 そしてそこから再び近づくには、ただ仲が良いという理由だけでは許されなくなってしまうのだ。


「好きです。付き合って下さい」


 半年前、そうボクに告白してきたのは、去年同じクラスだった三原のり子だった。


「は、はい……」


 友達の女子数人を連れて、放課後のクラスメイトの大半がいる教室の中で行われた彼女の告白に、ボクは断るなんて選択を思いつくことができなかった。

 三原さんのことは好きでも嫌いでもなく、今まで特に意識をしたことはなかった。けれど突然の告白というイベントにざわめき立ったあの教室の空気の中で、彼女を傷つけることだけはいけないという気持ちが、ボクに初めての彼女を作らせたのだった。


「……ありがとうございます」


 三原さんが嬉し涙を溜めながらそう言うと、イベントは一気に盛り上がった。


「やったじゃんか!」

「いきなり泣かせやがって!」

「リア充バクハツしろ!」

「ヒュー♪ ヒュー♪」


 このカップル成立は祝福された。女子が隣同士で囁き合いながら拍手をし、男子がはやし文句を上げて口笛を吹き鳴らす。そんなお祝いムードの中に、あいつの声も聴こえてきた。


「よっ! 色男!」


 このとき吉岡は満面の笑顔で親指を立てて、ボクと三原さんのカップル成立を祝福したのだった。

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