第5話ですっ!


 ~自宅にて~



 「────ふっふふっふふ~ん♪」



 気分よく鼻歌を唄う、


 わたしこと、『ラナ』です。


 表面張力の上に、


 多数の美麗な『薔薇』が咲いています。


 水蒸気で曇る、色とりどりの、


 ガラス製の、 空調用の窓々。


 そう。


 ────『お風呂の時間タイムですっ!』


 「ぴちゃり」……。


 「ぴちゃり」……。


 「ぴちゃり」……。


 脚で水面を数度、叩いて遊びます。


 これは、わたしが幼い頃からやってる、


 『ルーティン』です。


 ちなみに、意味はありません☆


 天井を見つめ、片ほうの腕で、


 水面の『薔薇』と『水』を、


 軽く、すくいます。


 それをみつめながら、


 思い出すのは、数時間前のこと────。


 《魔女試験》が終わり、


 合否を聴いて安心してしまい、


 シャルロッテさんの腕の中で堕ちてしまった、


 です。


 あのあと、堕ちてしまったわたしは、


 気づいたら、自分の家にいました。


 目が覚めたのは、リビングのソファの上。


 周囲を探ると、


 ここまで送ってくださった、


 シャルロッテさんが、


 卓上で膝をつきながら、


 こちらを眺めていました。


 ここで一言、



 『────アナタ、

 改めて見ると、

 とても……、

 かわいい顔をしているのね?』



 ────「ボフンッ!」


 …………。


 ……これで、


 思わず赤面してしまったのを、


 批難できる人が、


 どこにいるでしょうか?


 それからすこしの雑談を交わし、


 本題に入りました。



 『さっきしらせたように、

 アナタは本日をもって、

 〈魔女〉になっ──「はいっ!」──……。

 まったくもうっ……。

 〈魔女〉になれて、

 うれしいのはわかるけど、

 ────……ね?

 少しはアタシの話を聞きなさいな」


 先のうれしさの反動と、


 〈魔女〉になれたうれしさから、


 フライングで返事をしてしまいました。


 ……てへっ☆


 それを見て、シャルロッテさんは、


 半分の『呆れ』と、


 もう半分の『微笑ましさ』を、


 混ぜたような笑みを浮かべると、


 そのまま説明をつづけてくれました。



 『────それでね?

 すでに知ってると思うけど、

 《魔女試験》に合格して、

 〈魔女〉になった者は、

 その ″証″ たる『バッジ』、

 〈魔女証〉が贈呈されるのよ。

 ────で、

 本来なら討伐後、

 すぐに贈呈する予定だったんだけど……。

 ……ね?』


 そういって、


 わたしの『顔』と、


  壁に付いた『丸時計』を、


 交互に見ました。 


 …………?


 わたしは最初、なにがなんだが、


 わからなかったので、


 「おろおろ」としましたが、


 すぐに、気がつきました。


 そう。


 時刻は、すでに『深夜』。


 さらに、わたしはさきほど、


 試験後すぐに、


 シャルロッテさんの腕の中で『寝落ち』してしまいました。


 結果として、〈魔女証〉を渡す時間が、


 なくなってしまったのです……。


 それに遅れて気づいたわたしは、


 シャルロッテさんに、


 何度も謝ったのですが、


 そもそも、シャルロッテさんは、


 わたしが『寝落ち』したことについて、


 まったく怒ってなかったらしく、


 笑って許してくださいました。


 ありがたいことです……。


 そのあと、話し合った結果、


 〈魔女証〉の贈呈は、


 後日、【公理魔女協会】、


 〈エルネアス支部〉にて、


 執り行われることになり、


 その日は解散とあいなりました。


 ────その直前。


 わたしは、本日、大変お世話になった、


 シャルロッテさんに、


 『食事を一緒にどうですか?』


 ────と、


 誘ったのですが、


 家に『たくさんの兄弟』が、


 お腹を空かせて待っている、


 とのことなので、残念ながら、


 お開きとなってしまったのです……。


 わたしはシャルロッテさんに、


 そんな大事な兄弟がいるにも関わらず、


 遅くまでわたしの家に、


 引き留めてしまったことに謝罪し、


 家の中に戻ります。


 ────瞬間、


 そのまま崩れ落ちるように、


 『夢の世界ゆめ』に飛び立ったというわけです────……。



 …………むにゃむにゃ。


 


 


 


 

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