第2話 もとカノとのやりとり

 僕は久しぶりに高校時代に進路の関係で別れた彼女にLINEを送った。彼女とは決して不仲になって別れた訳じゃない。


〈こんにちは! 元気?〉

 短文だけど送信した。疲れていることは入力しなかった。余計な心配は掛けさせたくないから。


 今日、僕は休みだ。週に二回は休日がある。夜勤もあるのでなかなか休みでも疲れがとれない。


 今は日曜日の午後一時過ぎ。


 彼女の名前は川澄葵かわすみあおい。僕と同い年でニ十三歳。辞めていなければ、高校教師をしているはず。結婚はしていないが子どもは女の子が一人いる。それも知人に犯されてできた子。最初、そう聞かされた時そいつをボコボコにしてやろうかと思った。でも、それはやめてと彼女が懇願するのでやめた。その時は本当に腹がたって仕方がなかった。


 あれから一年が経つ。子どもは一歳だと思う。なぜ産む気になったのか? 葵が言うには、「子どもに罪はないから」らしい。でも、僕は「そんな男の子どもなんか堕ろせばいい!」と感情に任せて怒鳴った。でも、彼女の意志は堅かった。この先、子どもに恵まれなかったら嫌なのでこれも何かしら神様の悪戯だろう、なら、その悪戯にのってやるといって出産した。


 正直、僕はおめでたいとは思えなかった。


 でも葵は、「誰に祝福されなくてもいい、とにかくこの子を守っていくのはあたししかいない!」そう言って今に至る。


 葵は少なからず意地になっているのかなとも思ったが言えるわけがなく。


 夕方五時頃、葵からのLINEが返ってきた。何をしていたんだろう。内容は、

〈こんにちは! 元気よ。│瑠衣るいもね〉

 それを聞いて安心した。子どものことはもう気にしていない。僕の子じゃないし。

〈今度遊ぼう?〉

 と、誘うと、

〈うん、土日ならいいよ〉

 そう返信がきた。なので、シフト表を見た。

〈今週の土曜日ならどう?〉

 葵は何か用事はあるのかな。返信を待っていると、

〈いいよー! 瑠衣も一緒だけどいいよね〉

 本当は二人で会いたかったけれど、仕方ない。

〈瑠衣ちゃんも連れてきて。ランチ三人でどう?〉

〈いいね。また近くなったら、連絡ちょうだい? 急用が入ったら困るから〉

 とりあえずそれでチャットは終わった。子どもはいるものの葵と会える、楽しみだ。


 きっと僕が運転だろう。葵はお酒飲むのかな。


 昼間だけれど。確か彼女は甘いものが好きなはず。付き合っていた時チョコレートは常に鞄に入っていたらしい。本人が言っていた。


 土曜日、何食べようかな。娘ちゃんもいるから、レストランがいいかな。葵は何を食べたいのだろう。


 僕は久しぶりに日曜日が休みだ。


 これでも僕は釣りが好き。なので、夕方、潮が満ちてくる頃を見計らって行って来よう。僕はその準備を始めた。同級生の男友達に釣り好きな奴と以前一緒に行ったことがある。そいつも連れて行こうかな。


 僕は再度スマホを手に持ちLINEを開いた。上島一夫うえしまかずおと言う奴。彼とは同い年で仕事は建設業、なので筋骨隆々だ。金髪の坊主頭で背は高い、僕と同じくらいの百八十センチ。気性も荒いし、見た目からしていかつい。以前聞いたのは、バツイチで子どもが二人いる。彼は一人暮らしだからきっと前妻が引き取ってくれているのだろう。飲酒や喫煙もするし、女好き。僕とは真逆の人間だ。なぜ、そういう奴と仲良くなれたかは、共通の趣味があるから。それが釣りだ。


 早速LINEを打った。

〈上島、久しぶり。今、何してる?〉

 返信はすぐには来なかった。


 一時間くらい経ってからきた。

<今、築港で釣りしてるぞ>

 その文言を読んで、

<僕も釣りに行くから誘おうと思っていたんだ>

<そうなのか。隣町の築港な! 今からこいよ>

 そうして僕は青い自分の車を発車させた。



 



 



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