015. 再出発

“初等教育課程”のクラス分けは成績順に振り分けられる。新しく編入する生徒はその都度編入試験を受けそれ相応のクラスに入れられる。

 貴族・平民関係なく多くの生徒が通うこの学園は全寮制である。“専門教育課程”になれば平民の人数が減り、それほど多く感じない。しかし“初等教育課程”と“専門教育課程”の六年間なので大抵の生徒が自分の在籍するクラスメイトくらいしか名前を覚えていない。そこに途中から編入してくるのは他国から留学してきた生徒くらいでエバーグリーン王国の国民である者が編入することは珍しいし、とても目立つことであった。

 この日、“初等教育課程”の三年Sクラスはざわめいていた。留学生ではない生徒がこのクラスにやってきたのだから。


「あー、今日からこのクラスの仲間になった。彼はカイト・ブルー・クライン君だ。仲良くしてやってくれ」

 彼の紹介もあまりせずそのまま授業が始まってしまった。

 しかし、クラスの女子生徒はきゃあきゃあ言っていたり、近くの生徒同士ヒソヒソと話をするばかりだった。

 編入してきた彼は白髪とも言えるような透き通った銀色の髪の毛で緋色の瞳がとても印象的な女の子にも見える「儚げ」な顔立ちだった。そんな不思議な感じがする彼に誰もが興味津々で誰かの視線がいつまでも注がれた。


 授業が終了すると一斉に彼の周囲にクラス中の女子生徒が集まってきた。彼には、周りに集まってくる気配はするが何をしたいのかは全く分からなかった。

「あの…私はベッケラート伯爵家の娘、メラニーです!」

「私はカルラです…どうか仲良くしてください!」

 彼の周囲を囲んだ女子生徒たちがあちこちから話し出した。

「……」

 彼は笑いもせず黙ったまま一点を見つめていた。それを女子生徒たちは自分たちの自己紹介を聞いてくれているのだと勘違いしてまた誰かさらに話し出した。

「私はアイゼンシュタット子爵家のクロエです。よろしくお願いし…」


 ダンッ


 何人目かが話をしていた時座っていた席の机を握り拳で思いきり叩いた。

「……うる…さ…い」

 彼が机を叩いた所為せいで教室内がしーんと静まり彼が小さな声で話した。彼の握り拳にした左手は血が滲んでいたが彼は気づいていなかった。彼の席を囲んでいた女子生徒の一人がそれに気づき手を差し伸べてきた。


 パシッ


 誰かの肌を叩く音が響いた。

「…俺に…触るな!」

「「「「えっ?」」」」

 手を叩かれた女子生徒は目に涙を溜め瞳が潤んでいた。

「そんな…ひどいです。いきなり手をはたくなんて…」

 小さく呟いた言葉に他の女子生徒も不満を言い始めた。

「そ、そうですわ。なぜそのようなことを「はっ。それじゃ何故君たちの方こそ俺の周りに…?」

 遠巻きに見ていた生徒が一人カツカツとカイトの前に近づいた。カイトを睨みつけると胸座むなぐらを掴んだ。

「貴様は何様のつもりだ?女みたいな顔しやがって…」

「ヴァルター君、やめて!」

 カイトの胸座を掴んだヴァルターは止めようとしている女子生徒の方を見た。

「お前は悔しくないのか?俺たちは馬鹿にされているんだぞ!こういう奴は殴って大人しくさせなきゃわからないんだよ」

 ヴァルターはなんとなくカイトを殴ることができる理由ができたと思いニヤリと笑いながらカイトの左頬を握り拳で殴った。


 ガララガッシャガッシャ


 カイトはこの間まで眠っていたのだから誰かに殴られて踏ん張れるほどの体力は回復していなかった。そのためその場で自分の足で立っていることができず綺麗に並んでいた教室の机の間に殴り飛ばされた。

「「「「きゃあーーーーー!!!」」」」

 女子生徒たちの方が叫んでいた。その大きな音と声が教室の外へと響き、ほかのクラスからも生徒たちがSクラスの教室の前の廊下へと集まってきた。誰もが何が起きたかわからなかったために興味津々だった。

「おい、またヴァルター・ノルディックだよ。あいつが何かしたのならば関わるなよ。絶対にこっちまで被…」

 小さな声で話していたがどうやらヴァルターには聞こえたらしい。

「俺がなんだって?!文句があるならでけぇ声で言え!平民のくせに生意気なんだよ、コラァ!」

「い、い、いいえ。すみません、文句はありません」

 ヴァルターにすごまれた生徒はヴァルターと目を合わせないように、それでも何が起きているのか見たいためにヴァルターの視界に入らないように廊下の端へ逃げた。























 」



































































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