013. 密談
ディーデリヒは学園に戻るとリアムと密談を始めた。
「リアム、君にお願いがあるのだが…」
いつも明るく笑いながら話してくるディーデリヒだったが少し違った雰囲気にリアムは目を見開いた。
「ん?いつもと違うんではないか?何かあったのか?」
リアムはディーデリヒが緊張して話しているのに気がついた。
「まずは先程の助言ありがとう、役に立ったよ。それを踏まえての話になるのだがいいかな?」
リアムは小さく頷いて自分の対面にある椅子に座るようディーデリヒを促した。リアムは紅茶をカップに注ぎディーデリヒの前のテーブルに置いた。リアムは自分の分もカップに淹れ一口飲んだ。
「で?どうだったんだ。結果はすぐにわかったんだろ?」
リアムの急かす言葉にディーデリヒはなんとなく面食らった。
「リアム…そう急かすなよ。順に話すから」
ディーデリヒもリアムが淹れてくれた紅茶を口にした。
「リアムが助言してくれたおかげだ、ありがとう。先に礼を言わせてくれ。リアムが言ってくれなかったらたぶんアルフェリスの症状はもっと酷くなっていたかもしれない。魔力鑑定の結果、アルフェリスの魔力量は現在王宮に在籍している魔導士の十倍以上だ。このことは内密で。やはり騎士として考えていた
「そうか…やっぱり〈魔力枯渇〉だったかぁ…」
それで本題はここからだ。父上に学園でのことは全て私に任せてもらえることになった…あの日の〈事故〉も合わせて解決するように言われてきた」
「ほおー、権力使うことを嫌うお前がねぇー…ディーン、どれだけアルフェリス殿下に甘いんだ?」
「うん?リアム…お前がそれを言っちゃう?リアムだって妹に甘々じゃないか…話は戻すけれど、アルフェリスが日常生活をできるようになったら学園に戻したい…ただし、エバーグリーン王国の第二王子アルフェリス・ローゼン・エバーグリーンではない別の人間としてになる」
「どうして?そこまでしなくても普通に復学させればいいじゃないか」
「それがそういうわけにはいかないんだ。たぶんあの時の高熱の
「ああ、確か…瞳の色は王妃譲りの緋色の瞳だったよな…髪の毛の色は…えっと…亜麻色の髪の毛?」
リアムの回答にディーデリヒは大きく頷いた。
「そうだ…アルフェリスは王妃…母上の瞳の色と同じ緋色だった。今は時折瞳の色が変わるんだ。何故そうなるのかはまだ分からないが…。そして一番の変化は髪の色だ。どうやっても誤魔化しようがない」
そう言いながらディーデリヒは首を横に振った。
「髪の色は白髪…というより透き通った銀色というのか…何とも言えない色だ」
「そうか…そんなに変わってしまったのか…」
リアムはディーデリヒの話に納得したというように頭を振っていた。
「それに目が見えなくなって今までと感覚も違うようだ。部屋の中を歩くだけであちこちぶつけてしまっているようだ、傷や青アザが絶えない…」
「それじゃ、体調が回復したからと言ってそのまま“専門教育課程”のクラスに放り込むわけにはいかないね…」
「そこに〈権力〉がモノをいうわけさ…」
ディーデリヒはニヤリと黒い微笑みを浮かべていた。
「ディーン…何を考えているんだ?」
答えてくれはしないだろうとわかっていたがリアムは聞かずにはいられなかった。
「いや、別に…」
そう答えたディーデリヒの琥珀色と碧色のオッドアイの瞳は冷たく輝いていた。
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