第10話 ふりだしに戻る

「え?もうライブに参加できない?」

レオナとルカはシゲの口から語られた告白に口をあんぐりと開けた。

「うん…残念だけどそうなんだ。ごめんね」

平日の昼間、スタジオの近くにあるドリアが美味いと評判のファミレス。2人はシゲから大事な話があると急遽呼び出されて人もまばらな店の一番奥のテーブルに座っていた。少し遅れてやって来たシゲは彼らの向かいの席に座るや否や、THE FASCINATEのサポートとしての活動を終了したいという結論を述べた。

「で、でもどうして急に…?」

ルカに宥められながらもレオナは狼狽した様子で訪ねた。もしかしたら自分達に気に食わないところがあったから愛想をつかしてしまったのではないかと。

「ああ、別にそんな複雑な話じゃないんだよ。単純に夜のシジマの活動がマジで忙しくなっちゃったと言うか…」

するとシゲは辺りを見回してから身を乗り出して2人に顔を近づけた。

「まだ大きな声じゃ言えないけど、うちのバンド、メジャーデビューの話が決まりそうでさ。俺らとしてはそれで進めるつもりなんだ」

ルカはパッと明るい表情になって「本当か!それはおめでとう」と祝福した。

「ありがとう。そうなると自ずと活動は本格的に忙しくなるし、今までのように君達を手助けするのは困難になってしまうんだ。だから…」

そこまで言ったところでルカはそれを遮った。

「いいんだ、シゲさん。こっちのことは気にしないでくれ。これからは俺達は俺達で何とかやっていくつもりだ。そうだよな、レオナ?」

レオナは納得したと言うには苦い顔で「あ、ああ」と言った。

「もともとシゲさんは成り行きでサポートになっただけだ。遅かれ早かれこうなることは分かってただろ?その時が今来たって事だ」

彼の内心を察したルカが肩を叩いてレオナを諭した。

「ただでさえ忙しいのにライブのサポートやらアドバイスやら、無名の新人の俺らにここまでよくしてくれたんだ。申し訳ないくらいじゃないのか?」

レオナは少し黙ってから、納得の表情で大きく頷いた。

「ああ…そうだな。まったくその通りだよ」


思えばシゲにはあのセッションとライブどころか、それ以外でも大いに世話になった。あの日の打ち上げで周りに自分達の事を触れ回ってくれたお陰で別のライブハウスのイベントの出演オファーも来たし、自分で課題だと思っていたリズムの甘さについてもスタジオで色々と指導をしてくれたお陰で劇的に改善した。

それだけじゃない。オーディション応募用に録音したデモテープ。元々念のために多めに焼いておいたのだが、その余ったいくつかをあちこちに紹介してくれていたのだ。そのためバンドの知名度はライブ1回目でありながら予想以上に広がった。本来ならこういう宣伝や広報は正規メンバーの自分達がするものなのに。

これ以上、シゲさんにおんぶに抱っこでいるのは双方にとって良くないだろう。

「シゲさん」

レオナは顔を上げて、シゲに話しかけた。

「俺は高校中退の馬鹿だし、こういう時に言うべき言葉がなかなか思いつかない。けどシゲさんががいなかったら俺達はここまで来れなかった」

レオナは恭しく頭を下げた。

「だから言う。本当に、ありがとうございました」

彼がここまで誰かに対して下手したてに出たのはスターリィアイズの面接に受かった時以来だろう。

そんなレオナに、シゲはそっと肩に手をかけた。

「頼むから頭を上げてよ、レオナ」

レオナがその言葉に従うと、そこにはシゲの真剣な表情があった。

「礼を言うのはこっちの方だよ。君達のお陰で久しぶりに楽しい時間を過ごせたんだから。あんな気分はシジマを結成した時以来さ。それで俺は救われた」

「救われた…?」

レオナの頭に疑問符が浮かんだ。凄腕の実力派バンドのドラマーが、無名のアマチュアギタリストにどう救われたというのだろう。

「実はうち、ここしばらく結構ギクシャクしててね。メジャーの話自体はしばらく前からチョイチョイ来てたんだ」

「そりゃすごいじゃないっすか」

「ま、最初はプレッシャーとか自分達の水準とかでピリピリして、その内デビュー後の方向性とか其々のやりたい事で話がこじれちゃって…みんな意地になって解散もチラついてたくらいだ。そこに業界の色んな大人の思惑とかが絡んでくると、文字通りがんじがらめで…」

SNSやライブ、雑誌じゃあんなに仲が良く笑顔な彼らが裏でそんな悩みを抱えていたなんて。レオナも過去のバンドでWEBやフリーペーパー誌の掲載くらいは経験済みだが、そんな自分も上辺だけの仲良しアピールしていたことを思い出した。見る側と見られる側、立ち位置の違いでこうも感覚が変わってくるものなのか。


「そんな時に桜子さんから誘われて、あのセッションに気分転換がてらに参加してみたんだ。で、実際に会って音を出してみたら…すっげえ楽しくてさ。『やべえ、この音に負けたくねえ!』って大人げないくらいにヒートアップしちゃってさ。『ああ、自分も最初はこうだったな。何で忘れていたんだろう』って。そこからはメンバーに平謝りして腹を割って話し合った結果みんなのモチベーションも仲も回復、こうやってメジャーデビューの話も決着した訳だよ」

「じゃあもしかして、俺達の名を周りに広めてくれたのは、その礼だと?」

ルカが両手を顔の前で組んで尋ねた。

「いや、それも無くはないけど…純粋に一人の音楽好きとして二人の音楽を周りに布教したかったんだよ。君達の後ろで叩いてる内に『こいつらは将来絶対に偉大なバンドになる!今から広めたい!』って思った。半分ファン目線だね」

レオナは、自分達ががシゲを救えたなんておこがましい事は微塵も思っていない。どう言われたって救われたのはこっちの方だ。それでも自分に救われたと言う言葉を聞いたなら、自分の選択も行動も少しだけ信じられる気がした。

「とりあえず、俺達はまた別の道を行くけどさ…俺は君達を応援してるよ」

それだけ言ったシゲは突如スマホを取り出すと、財布を取り出して立ち上がった。

「おっとごめん、もう行かないと。レコード会社で打ち合わせに呼ばれちゃって」

「本当に忙しいんだな」

シゲは財布から二千円を取り出すと、テーブルにポンと置いた。

「そう言う事。これ俺の奢りだから。それじゃあね」

そう言ってシゲは二人に背を向けて店を出ようとした。

「あ、もう一つ!」

ドアを開けたシゲは、何かを思い出したように振り返った。

「もし君達がいつかデビューしてビッグになったら…その時は対バンしよう!」

レオナは笑うと、大きく手を振った。

「じゃあ、それまでそっちもビッグでいてくださいよ?」

「ああ、勿論さ!」



「はぁ…」

サラリーマン、学生が大勢行き交う駅前ロータリーの交差点で信号を待ちながらレオナは大きなため息をついた。

「どうしたんだレオナ、まだ不満なのか?」

「そうじゃねえよ。円満に終わったとは言え、またふりだしに戻っちまったって現実を直視してたんだ」

THE FASCINATEはライブ3回目にしてサポートドラマーの離脱、正規ドラマー不在という大きな問題に直面していた。

「まあ、バンドはドラマーがいないと成り立たないからなあ…」

「ほんとだよ…あんな卒業式みたいな雰囲気でシゲさん送り出してた直後にあれだけど、ここからどうするか…トイッターと公式HPで報告しないといけないし」

THE FASCINATEの公式HPはルカがデザインして運営している。レオナは普通にネットサーフィンをしたり簡単な作曲ツールを使う以外、コンピューターはからっきしなのでこの手のデジタルな事務仕事はルカの役回りなのである。

「その辺は俺に任せておけ。タイミングを見計らってやっとくから。夜のシジマ側がメジャーデビューのお知らせをした直後辺りがベストだな」

こう言うのを世間では便乗商法と呼ぶのだろう。せこいと言うか、強かと言うか…。

そうしている内に信号が青になり、人々は一斉に交差点を渡り出した。ルカもレオナも並んでそれに続く。

「とりあえず今日は今後のためにもリフレッシュといこうぜ。あそこらへんで」

ルカが指さした先は交差点の先のビル。そこから出っ張った看板には雑貨店、洋服屋などのテナント名が入っている。

その7階辺りの位置に「石山楽器」と言う名が赤地に白抜きの文字で書いてあった。

「楽器屋か…そう言えばもう『Youth GUITAR』の最新号が出てたな」

『Youth GUITAR』は68年代後半から現在まで多くのギターキッズに親しまれているギター専門雑誌だ。レオナの家にも何十冊か棚に並んでいる。

「俺は弦の替えとピック何個か多めに買っておきたい。こないだのライブでだいぶすり減っちまったんでな…」

「お前はピッキングが強するぎるんだよ」

「そうさせているのはお前の楽曲だ。責任取ってピックと弦代奢れよ」

「…は?」

「1曲でワンセット、ライブは6曲やるから…3セット入りのお徳用2つだな。で、今までライブ3回やったからお徳用を6つ。ピックは6×3で18個…大体計2万円だな。つーわけでよろしく」

ルカは右手を上げるとすたすたと先を歩いて行った。

「…は?いや、は?」

レオナは「こいつ本気で言ってるのか?」と言わんばかりに目を見開いて睨んだ。そもそもルカほどのベーシストならピックがダメにならないようにピッキングのダイナミズムを制御ことくらい造作もないだろうに。

というか、普通そんなナチュラルに人に奢らせるか?

「…なんてな、冗談だよ」

冗談で言っている事は分かってはいるが、それが本当に冗談なのか判断に困る事をたまに言うのがこいつの悪い癖だ、とレオナは思ったのだった。



「石山楽器」のこの店舗は、近隣地域では一番豊富な品揃えだ。ギター、ベース、ドラム、鍵盤、バイオリンetc...。レオナのようなバンドマンから習い事をする子供まで様々な層に親しまれている。

7階のエレベーターが開いた時はテーマパークに迷い込んだ気分になる。暇な時はここで子供のように入り浸って何時間も潰す事もある程だった。さしずめ彼らは、音楽のネバーランドに生きるピーターパンと言ったところだろうか。


「じゃあ、俺は弦とピック物色してるからな」

「おう、ごゆっくり」

ルカとレオナはお互い反対方向に行ってショッピングを楽しみ始めた。

フロアのほぼ半分を占めているギター、ベースのコーナーはレオナに取って宝の眠るジャングルのようなものだ。特に買う予定がなくても必ずぐるりと巡回してしまう。

一番左のコーナーにはストラトキャスターがずらりと色とりどり、黒、茶色、クリーム色、白、赤、青、黄、あとはキラキラしたラメの入った奴。初心者用のちゃちい激安セット。時折エリック・クラプトンやリッチー・ブラックモアのシグネチャーモデル。とても美しい。

下段はテレキャスターだ。正直テレキャスは食指が進まない。最近は猫も杓子もテレキャスかジャズマスタ-をジャカジャカ弾くだけのスカした奴らが多く、そいつらに迎合するのが嫌だからだ。いや、敢えて便乗した上でメタルをやるのもありだろうか?通路の終わりにはセミアコがいくつか。ボ・ディドリーモデルの四角いのもある。E-335は一度は手にしてみたい。チャック・ベリーの真似してダック・ウォーク…階下の住人の苦情が来そうだが。

通路の突き当りにはレスポール、SGなどがずらり。そして憧れのフライングVとダブルネックSGが1、2本。やはりいつ見ても壮観だった。ハードロックをやるなら必須だ。レオナもメインのストラト以外にレスポールを一本だけ持っている。

その横にはガラスで仕切られた四角い部屋があり、中にはアコギが所狭しと並んでいる。マーティン、ギブソン、ヤマハ…。


「アコギ、か」


レオナの脳裏に浮かんだのは、以前例のリサイクルショップで買ったあのボロギターだ。ボロと言ってもかなり手入れとオーバーホールが為されていたが。

そう言えばあのギターはどこのメーカーなのだろう?ヘッドにはメーカーのロゴもなかったしボディも退色が進んでいた。ハンドメイドと言う可能性も考えられる。いずれにしてもあの音の良さは驚異的だ。

「何かお探しですか?」

30代後半位の気さくな印象の痩せ型の男性の店員がニコニコと話しかけてきた。名前は知らないが、顔見知りの店員だ。

レオナはしまった、と思った。楽器屋の店員が話しかけるのは、相手が購入を考えていると思われる時なので単に冷やかしだと思われるのは非常に気まずい。

「い、いやあ…こんなガラスの部屋においてあるんだなあって…」

我ながら素人丸出しのコメントだな、と思った。

「アコギの管理は室温や湿度の徹底が大事ですからねー。ヴィンテージものなんかは特に…」

「なるほど…ねえ」

レオナはしげしげとアコギ売り場をガラス越しに見つめていた。

そう言えば、あのギターを店員に見せてメーカーやブランドを特定してもらうことは出来ないだろうか?今度、持って来て聞いてみることにしよう。

「おーい、待たせたなレオナ」

レジのある向こう側からルカがレジ袋を提げてやって来た。

「ピック買うにしては結構かかったんじゃねえか?」

「いやあ、硬さとか吟味してたら…ってあれ、イクオさんじゃないですか!」

ルカが親し気に話しかけた相手はレオナの隣にいた店員だった。

「おう、ルカ氏じゃん久しぶり!」

ルカ氏。まるで一昔前のオタクが友達に対して使うような呼び方だ。

「ごめんねえ、こないだ折角誘ってくれたのにライブに行けなくてさ」

「いえ、無理にお誘いしたのはこっちなんで」

レオナがぽかんと口を開けていると、気付いたルカが紹介した。

「あ、レオナには言ってなかったっけな。イクオさん、うちのバンドの事知ってくれてるんだよ。ほら、あそこにデモテープ置いてあるし」

ルカが指差した方向を見ると、レジの横に数枚のCDが陳列されたスペースがある。アマチュアミュージシャンの自主製作音源の委託販売も請け負っているようだ。

「え…?俺、知らないんだけど…いつの間に置いてもらったんだ?」

「1stライブの前、売り込んでみるって言っただろ。忘れたのか?」

必死で記憶を手繰り寄せてみるが、思い当たる節がない。

「…いつだ?」

「お前ん家でアレンジの打ち合わせ後に飲んでた時だよ。俺が何ヶ所に売り込んでみるって言ったら『全部任せるわ』って…。お前ベロベロに酔ってたけど」

そう言えばそんな事もあったような、無かったような。レオナが頭を押さえながら必死に記憶のモヤを払おうとしていると、ルカは肩をすくめた。

「お前、その内酒が原因で騙されないかと心配になるよ」

するとイクオが感心するようにニマニマと笑いながら割って入ってきた。

「へえ、君がルカ氏の言っていた子かあ。まさか顔見知りのお客だとはねえ…レオナ氏って呼んでもいい?」

「まあ…別に、いいっすけど」

レオナは急に気恥ずかしくなった。別に隠していたわけじゃないが、覆面ミュージシャンが知り合いに正体を知られるのと同じような気分になる。

「結成2~3ヶ月だっけ?粗削りには違いないけどそれだけの期間でこんなにいい曲作れるなんてすごいよね。しかもあの夜のシジマの人がゲスト参加してるんでしょ?ウチのスタッフの間でも話題なんだよ。あのデモも数枚だけど売れてるし」

「そうなんすか…何か、ありがとうございます」

昔、最初に加入したバンドでアルバムを出した時はあまり実感がわかなかったが、自分のバンドを組んだ今、こんなに早く自分の手の届かない所で自分達の音楽が聞かれて、受け入れられている。そういう場面に直に触れてみると何とも不思議な気分だ。

「ははは、こんな冴えない楽器屋のおっさんに褒められてもピンと来ないか?」

「いや、そんな事は…」

「レオナ、イクオさんの音楽家を見る目は確かなんだぜ」

ルカがレオナの肩を叩いてフォローした。

「かなりの音楽通だし、この人が早くに才能を見抜いて結果的に大ブレイクしたバンドは何組もいるんだよ」

「おいおいルカ氏、褒めても何も出ないぜ?」

「事実を言ったまでですよ。ほら、今流れてるこのバンドだって…」

ルカは天井のスピーカーから流れる有線を示した。


「これは…」


そのイントロに耳を傾けた瞬間、レオナは全身に落雷を浴びたような衝撃を受けた。

水晶のように美しいピアノとシンセサイザーの音が水の波紋のように響いたと思いきや、ドラムとベースが爆発し、ギターが轟音でかき鳴らされて疾走する。ツインギターのようだ。一人はへヴィで複雑かつ、正確無比なフレーズを弾く。もう一人は荒々しいストロークやカッティングを弾きつつ繊細で美しいクリーントーンのアルペジオを高速で弾いたりとエモーショナルな要素が目立つ。

「おっ、噂をすれば『まほクラ』かあ」

男性ボーカルの歌声が店内に響いた。クセはあるが、声量豊かで高温が伸びやかに響く声で、曲が内包している激しさと切なさにマッチしている。

「まほクラ…?」

「『まほろばクラン』って6人組バンドね。メジャーデビューしたばかりだけど今すごい勢いだよ」

この曲「Beyond the horizon」はまほろばクランのデビューシングルとのこと。演奏技術は圧倒的高水準でサウンドもクオリティが高くフィーリングも抜群。間違いなく実力派のバンドと言えるだろう。


だが、それ以上にレオナの中に不思議な感情を芽生えさせるがこの曲のどこかにあった。

「まほろばクラン…名前がいいですよね。俗っぽいように見えて、凄く詩的だ」


懐かしいような、悲しいような、ずっと探していた何かを見つけたかのように嬉しくもあるし、見たくない物に直面したかのような痛みも感じる。でも、一体どこに?


「確か名付け親は……ちゃんだよね」


聴いている内にそれは、サイドギターにあると分かった。何だろう?このサウンドに弾き方、どこかで…。


「そういや最近……ちゃん、連絡してこないなあ。忙しいだろうから仕方ないけど」

「え、……と知り合いなんですか?やっぱりイクオさんは凄いな」

「あの子もよくここ来てたからね。色々相談もされたよ」


イクオが誰かの名前を言っていたが、曲の轟音にかき消されて分からなかった。

どうして、そこだけ聞こえなかったんだろう。




いや、もしかしたら聞こえなかったんじゃなくて――――。





「……レオナ、おい、レオナ!!」

ルカに大声で肩を揺さぶられて、レオナの意識は冷や水をかけられて白昼夢から醒めたようにハッキリとしたものになった。

「わ、悪い…ボーっとしてた」

「…大丈夫か、お前?それよりもだ、あそこ見ろよ、あそこ」

ルカが指差した先…ドラムコーナーに一人の男がいた。歳は20代前半程、レオナらと同世代だろう。上下緑のジャージに特徴的な外はねカールのリッジパーマ。不機嫌をという言葉をそのまま体現したかのような目つき。

「…ジョージ?」

洋服屋「17th green」の店員ジョージが、楽器屋でドラムスティックを物色しているのだった。

「あいつが、楽器屋でドラムスティックを…」

彼が音楽好きなのは周知の事実だが、実際に何かをプレイしているという姿は見たことがないし、そんな話も聞いたことがない。

「あれ、知り合い?」

「イクオさん…あの悪人面のパーマ男、見覚えはあります?」

ルカが何がどうなってるのか分からないと言った風のイクオに尋ねた。

「ああ、こないだも来たよ。その時はドラムの教則本買ってったけど」

それを聞いたレオナは顎に指を当てて何か考え込んだ。



「イチかバチか、賭けてみるか」













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

電気仕掛けの浪漫主義者達 鬼澤 ハルカ @zaza_sorrowpain

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ