第13話 東の森9
「アリス嬢、あなたは全身に酷い火傷を負っています。途中までは治療をしましたが、一度の治療では完治させることができませんでした。少しずつ治していかなければなりません」
アリスが自身の喉を指差すと、ヘンリーは頷いた。
「喋れないと不便でしょうから、喉くらいでしたら今すぐに治します」
そう言われ、魔方陣の眩い光に目をつむる。どうやら声が出なかったのは喉まで焼けてしまったからのようだ。
「ぁー……あ、ありがとうございます……」
頭を下げてお礼を言えば、彼は無言で立ち上がった。ひとまず彼の仕事はいったん終わりらしい。これから段階的に治療を進めていくと言って、寝室を出て行った。
「アリス様!」
ロイはアリスに駆け寄って袖に縋る。随分と心配させてしまったようだ。あれから何日が経っただろう。
ふかふかの手を握り、ロイが無事で良かったと呟く。マリウスはと聞けば、怪我はしていたが今はもう全快とのことだった。
「どうしてあんなところにドラゴンがいたのかしら」
《東の森》はドラゴンたちの本来の生息地ではない。
「我々がどうやって助かったのかは未だ不明です。実はわたくしもマリウス様も、お嬢様と同じように意識を失ってしまいました。倒れていた我々を見つけ、治療してくださったのがヘンリー様です」
「ヘンリー様は、どういった方なの?」
まるで貴族のような落ち着きと風格があった。それに何だかどことなく懐かしいと感じていた。どこかで出会ったことがあったかしらと首を傾げる。
悪役令嬢に転生したママは攻略対象たちがかわいくて仕方がない 蓼丸りんご @tademaruringo
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