―77― 対抗試合・続
二戦目も同じ方法で勝利を収め、俺は無事決勝へと駒を進めた。
そんな俺は控室で、観戦をしていた。
次の対戦相手を見極めるために。
対戦相手の一方は俺のよく知る相手だった。
てか、戦っていたのは妹のプロセルだ。
妹はいつになく元気がなかった。
戦っている最中だというのに、目の焦点があっておらずぼーっとしていることが傍目からでもわかる。
心ここにあらずって感じだ。
原因は十中八九、俺だろう。
妹よ。そんなにお兄ちゃんが死んだことが悲しいか。
不謹慎ながら、ちょっとだけ嬉しいぞ。
あっ、妹が負けた。
そりゃそうか。妹が、いくら強いとはいえあれだけ身が入っていなかったら、勝てる勝負も勝てないだろう。
ということは決勝の対戦相手は妹に勝った生徒ということか。
えっと……知っている顔だ。
まさか彼女が決勝に駒を進めるとは意外だ。あまり、こういった催しに興味がないと思っていたからな。
「アベルくん!」
振り向くと、控室の入り口に生徒会長が立っていた。
慌ててここまで来たのか呼吸が荒く、髪は乱れている。
ていうか、俺のこと「アベル」と呼んだか?
今の俺はアベルではなくユレンなんだが。
だから、咄嗟に否定しようと口を開きかけて――
「血の契約はどうにかして私が破棄します! だから、決勝には出ないでください」
血の契約書は会長なら破棄できる権限があるはず。だから、会長が破棄をすると言った以上、クラス対抗試合に出場する必要性がなくなったというわけだ。
「えっと……」
俺はなんというべきか困っていた。
そもそも俺はユレンのフリして試合に出場しているつもりなんだが、会長は俺がアベルだって確信した上で言っているみたいだしな。
「なに勝手なことをしているの」
振り向くとそこには決勝戦の相手が佇んでいた。
「もう、あなたの好きなようにさせませんからっ!」
会長が激高していた。
なにに対して怒っているのか、俺には全くピンとこない。
「パン」
彼女がそう口にしながら人差し指を会長に向けた。
瞬間、会長がその場から姿を消した。
いや、消えたのではなかった。後方の壁へと激突していたのだ。あまりにも勢いよく激突したため、目が追い切れず消えたように見えただけ。
「会長!」
慌てた俺は会長の元に駆け寄る。
全身血だらけになっているが、一応生きているよな?
「それじゃあ、アベルくん。決勝戦よろしくね」
会長を吹き飛ばした張本人は、会長には全く目もくれず俺の目を見て笑いかけた。
ただ、笑いかけたといってもにこやかな笑顔には程遠く、唇の両端をかすかに釣り上げたにすぎない。
それでもいつもの無表情なときに比べたら、随分表情が豊かに感じる。
「あぁ、よろしく、シエナ・エレシナ」
そう、目の前にいたのは、いつも授業中寝ているばかりのシエナだった。
彼女こそがDクラスのもうひとりの代表であり、決勝戦の相手だった。
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