―76― 対抗試合
クラス対抗試合の日付がやってきた。
それまでミレイアは裏で誰かが手引きしているんじゃないかと、色々と探っていたらしいが、特段なにも証拠は見つからなかった。
まぁ、そもそもそんな人物がいるかどうかもわかっていないので仕方がない。
「よし、うまく拘束できたな」
目の前に転がっていたのは拘束されたディミトだった。
すでに〈
死んだはずの俺がどうやってクラス対抗試合に出場するのか?
なんてことはない。出場予定だったユレンの代わりに俺が出場するだけだ。
もちろんユレンのフリをした上で。
「こんな変装でバレないでしょうかね?」
ミレイアが俺の格好を見てそう言う。
今の俺の格好は、制服の上からだぼっとしたローブを着た上で、顔を隠すための仮面をつけている。
仮面には身につけても前が見えるような魔術的な作用が働いている。
「顔を確認されたらアウトだろうな」
背丈はユレンとそっくりだが、顔は全く違うからな。仮面をとったら、バレるに違いない。
「だが、ルール上仮面をつけるのは問題ないはずだ」
「でも仮面なんてつけていたら怪しいですよ」
「それはテキトーに理由をつけてごまかすしかないだろ」
そう言いながら、俺はユレンの服をまさぐる。
ポケットにあった。
取り出したのはユレンの学生証だ。これを見せて、本人だと証明する他ないだろう。
そういうわけで仮面をつけた俺は堂々とした足取りでクラス対抗試合が行われる会場へと向かった。
「えっと、ユレン選手ですか?」
受付をしていた人にそう聞かれたので、頷きながらユレンの学生証を見せる。
「その仮面は……?」
「試合のために用意した魔導具だ。外すことはできない」
クラス対抗試合では魔導具の持ち込みは認められている。そのため、魔導具だと主張してしまえば、文句は言えないはずだ。
「そうですか。わかりました」
と、あっさりと受付人は引き下がった。
ふむ、意外となんとかなるもんだな。
受付を無事に終えた俺はそう思う。
あとは、自分の番が始まるまで待つだけだ。
◆
クラス対抗試合は各クラス二名による計8名によるトーナメント形式が行われる。
だから3回勝ってしまえば優勝だ。
そう思うと案外余裕に思えてくるな。
「Dクラス風情が僕に勝てると思わないでくださいね」
一試合目の相手は俺の知っている相手だった。
名は、バブロ・スアレス。かつて、俺と生徒会の座を賭けて戦ったAクラスの生徒。
あのときは確か、俺が敗北したおかけで無事生徒会に入ることができたんだったな。
確かに、こういう試合には率先して出場しそうなタイプである。
「その変な仮面をひっぺはがしてやりますよ」
彼はそう言って、魔剣を握りしめて突撃してきた。
「〈
彼は自分の足と地面を反発させて急加速する。
そして、俺にあと一歩と迫った瞬間――
「〈
近距離による雷撃。
それに直撃したバブロは気絶して倒れた。
近距離にやってくるまで待ったのは、遠距離で雷撃を放つと観客に雷を使ったことがバレてしまうため。
そうなると、俺の正体がアベルだってことまでバレてしまうからな。
近距離で使えばバチッと一瞬光るだけで、なにが起きたかまではわからないだろう。
ふむ、観客を見た限り困惑した表情を浮かべているだけで、なにが起こったかまで把握している生徒はいなさそうだ。
これならあと二戦、問題なく戦い抜くことができそうだ。
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