―61― 不穏
放課後。
俺はその日、学院を出ると図書室に寄ってある本を借りた。
借りた本のジャンルは歴史書。
『クラス対抗試合』で優勝するために、あるものを開発しようと思い、この本を購入した。
そのあるもの、というのは銃だ。
過去、銃と呼ばれた武器が猛威を奮っていった。
しかし、今では魔術を使ったほうが銃よりも効果的に人を殺傷することが可能なため、銃は廃れていった。
だから、今では銃はロストテクノロジーとなっているわけだが、その銃を改めて再現しようと思い至ったわけだ。
とはいえ、過去の銃を完璧に再現するつもりはない。
俺が作ろうとしているのは、魔術によって動く銃だ。
名付けるなら、魔銃といったところか。
だから、銃に関して記録が残っている歴史書を見つけては借りることにしたわけだ。
そんな用事を済ませたため、いつもより遅く寮の自室に戻ったわけだが、部屋に入った途端、違和感が襲ってきた。
というのも、部屋の中に誰かが侵入した跡が残っていたのだ。
その証拠に、机の上に見覚えのない紙が置いてあった。
その紙にはこう文字が記されていた。
『お前が異端者であることを知っている』
「これは、どういうことだろうな」
ふと、そう口にする。
「困ったことになったようだな」
別に、俺は偽神に話しかけたつもりはなくただの独り言だったのだが、霊域からひょこっと偽神アントローポスがでてきてはそう応えた。
「誰かが俺のことを嗅ぎ回っているようだな」
だとしても、こんなふうに紙を机に置く理由はなんだろうか? わざわざこんなことをする理由なんてないと思うが。
「これは犯人を早急に追い詰めないと大変なことになりそうだなぁ」
アントローポスはニタニタと笑いながらそう口にする。そんなに俺が困るのが嬉しいかね。
「犯人にはある程度、心当たりがあるけどな」
「ほう、ちなみに誰か聞いてもよいか?」
「チーム戦のとき、あの場にいた誰かの可能性が高い」
チーム戦のとき、アントローポスが霊域を展開して、その後、俺がアントローポスを隷属化させた一連のやりとりを見ていたなら、俺が異端者だと思うのは当然のことだろう。
ただ、あのとき、俺とミレイア以外は気絶していたので、一連のやりとりを見ていた人間はいないと思うが。
いや、一人だけあの場にいながら、アントローポスの霊域〈
シエナ・エレシナ。彼女だけが、あの場にいながら俺たちの戦いに巻き込まれなかった存在。
彼女が言うには、チーム戦の間、ずっと寝ていたらしいが、もしかしたら、遠くから俺たちのことを観察していた可能性がないわけでもない。
まぁ、これだけで犯人と決めつけるのは早計だな。
「探ってみる必要はありそうだな」
面倒なことになったな、と思いながら、俺はそう口にしていた。
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