―52― 連休
「なぁ、ミレイア。連休はどうするんだ?」
放課後、ふと、ミレイアにそう話しかける。
学院は明日から3日ほどの連休がある。生徒によって、連休中は実家に帰省する人もいるだろう。
「え? なんでそんなことを聞くんですか……?」
なぜか、気持ち悪いものを見るような目をしていた。
「なにか気に障るようなことを言ったか?」
「いえ……ちょっと驚いただけです。まさか、アベルくんが私に関心があるなんて思いもしなかったので」
ふむ、ミレイアの中で、俺ってどういう評価なんだろうな。今更ながら、気になってきた。
「もし、用事がないんだったら、お願いがあるんだが」
「え……っ、お願いってなんですか?」
「ミレイアで魔術を研究だな」
自分が発案した『科学』ベースの魔術構築を俺以外でもできるのか、いつか試そうと考えていた。
そう考えたたとき、ミレイアほどの適任はいないだろう。
俺の魔術は原初シリーズを否定するものだ。
原初シリーズを絶対視している一般的な魔術師にとって、原初シリーズの否定は異端と同義で禁忌されるべき考えだが、アントローポスという本物の異端を知っているミレイアなら、その辺理解してもらえるだろう。
だから連休といった時間のあるときに、ミレイアに教えたかったのだ。
「わ、私になにをさせる気ですか……っ」
「別に変なことはしないぞ」
なぜか、ミレイアは身震いをしていた。一体、なにを想像したんだか……。
「えっと、アベルくんには恩があるので、できれば協力をしたいと思っていますが、実は連休中の予定には先約がありまして……」
「そっか。それなら仕方がない。ちなみに、用事ってなんだ?」
「それは、友達の実家に行って、その友達と闇属性の魔術の研究しようって約束をしたんです」
闇属性の魔術。
主に悪魔に関する魔術だが、思えば、ミレイアはフルフルと呼ばれる悪魔を召喚するんだったな。
「興味深いな」
ぼそり、と思わず口にでる。
「それ、俺も参加していいか?」
「……え?」
「俺も闇属性の魔術の研究に興味がある」
闇属性の魔術は原初シリーズにおいて、比較的記述が少ない。そのため、市場に出回っている魔導書でも闇属性の魔術に関して解説されているものは少ないため、知る機会が非常に限られているのだ。
だから、実際に闇属性の魔術が得意な人が研究している様子は大変興味深い。
「ですが……アベルくんは悪魔を使役しているわけではありませんし」
「偽神なら、俺も使役している」
「いや、偽神と悪魔は違うと思いますが」
「だが、使役魔術に自信があるのは事実だ。役には立つと思うけどな」
魔術師が悪魔に言うことを聞かせるためには、お互い対等な立場で血の契約を結ぶか、悪魔を屈服させた上で、隷属化させるかのどちらかが一般的な方法だ。
そして、後者においては俺が偽神に対して行ったため、他の人よりは詳しいはず。
「んー、そうですねー」
ミレイアは人差し指をこめかみに突き立てて、考える素振りをする。
「確かに、彼女にはアベルくんの力が必要かもしれませんね……」
熟考の末、ミレイアはそう口にした。
「その、友達に聞いてみて了承を得られたなら、ついてきてもいいですよ」
「ん、了解した」
その後、ミレイアから友達の了承を得られた旨が伝えられた。
なので、連休中、俺はその友達の家で闇属性に関する魔術を研究することになった。
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