第3話:報復
光の聖女マリアンヌは奇跡の治療ができる唯一の存在だ。
だからこそ、血統主義に凝り固まった王家ですら平民から男爵に叙爵したのだ。
その奇跡の治療で助かった者の多くが、心から感謝していた。
特に最前線で戦っていた騎士が、より多くの恩恵を受けていた。
聖女マリアンヌが、自分の立場を悪くしてでも、先に約束していた侯爵の治療を断り、街を護るために傷ついた騎士隊の治療をした事に、感動すらしていた。
警備隊の聖女マリアンヌに対する無礼を知った騎士団は、総力を挙げて報復を行い、警備隊本部を包囲し、無礼を働いた警備隊員に決闘を申し込んだ。
いや、騎士団最強と言われる騎士隊長が、警備隊総長に聖女マリアンヌに対する無礼に対して、代理人として決闘を申し込んだ。
家柄と賄賂で警備隊総長になっていた某公爵令息は震えあがった。
「直ぐに処刑しろ、警備隊総長の権限で無礼を働いた者を処刑し、その首を騎士師団に差し出すのだ、何をグズグズしている、お前達も殺されたいのか!」
某公爵令息は、自分では最弱警備隊員にも勝てないので、父親がつけてくれた護衛に命令して、裁判も行わずに学園に行った警備隊員全員を皆殺しにさせた。
その首を騎士団に差し出す事で、何とか騎士団からの私刑からは逃れられた。
だが、騎士団の圧力に屈して、裁判も行わず、私刑で警備隊員を殺した事が大問題となり、公爵家から追放され、教会に幽閉されることになった。
「マリアンヌ、学園には行かなくていいのかい?」
朝から教会の掃除を終え、家族の食事を準備するマリアンヌの母親、修道女でもあるソフィアが聞く。
「ええ、行かなくていいのよ、お母さん。
噂の猟奇事件のせいで、クラスメイトが全員病んでしまって、休校なの。
だから教会のお務めを手伝わせてもらうわ」
「そうかい、それなら私も助かるし、王都の人達も喜ぶよ。
マリアンヌが学園に行くことになって、王家から治療も禁止されて、王都の人達も困っていたんだよ。
あら、いやだ、教会を手伝うと言っても、治療は禁止されていたね。
うっかりしてしまっていたよ」
「いえ、大丈夫よ、お母さん。
猟奇事件の原因が、王家が私に治療を禁止したことを、神様が御怒りになったのだという噂が広まって、治療の禁止が取りやめになったの。
だから今日から以前のように治療を再開できるわ」
「あら、まあ、そうなのかい。
でも、どこの誰が、そんな王家を貶めるような噂を広めたのかねぇ」
「そうね、本当に不敬な噂を広める不忠者がいたものね」
母と娘はお互いの顔を見て、快活に笑い合った。
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