どこかの国で
母国から離れてしばらく。パソコンを閉じては行動を共にしていた仲間の居る部屋へと向かう。
「稼ぎは何とかなりそうだぞ」
「何かしたの?」
「ネットでちょっとな」
あらゆる資金に関してずっと頼り切ってしまっていたが、これからはそれもせずに済むだろう。あまり彼女ばかりに働かせるのも、あらゆる意味で負担が大きい。
二人で行動するようになって長いが、二人共まるで子供のような容姿をしていた。一方は中学生か、よほど上に見ても高校に入ったばかりといった程度。もう一方に至っては中学生にすら見えない幼さだ。
だが二人共とうに成人を過ぎていて、加えて言えば見目の幼い方が歳上という事実もある。
この幼い容姿で成人しているなど信じてはもらえないし、そのからくりを知れば誰もが「化け物」と言う。それを分かっているからこそ、二人での行動は随分と制限されていた。
表立って大人と同等の仕事をするのは簡単ではない。ならば顔の見えないインターネット環境でならどうかと手をつけたところ、多少の時間はかかったが上手く行ったということだ。
「窓口になってくれる者も見付けておいた」
「分かった。あたしでも手伝えそうなことあったら、いつでも言ってね」
にこりと愛らしい笑みが、いつだって癒してくれた。
「ありがとう。この後出かけるから、留守を頼む」
「あれ、どこ行くの?」
「ヴァルフレードのツテで射撃場を貸してもらえることになったんだ。拳銃の扱いくらいは衰えないようにしておかないとな」
「……」
「お前は私が守るよ」
いつだって貰ってばかりで、返せるものはそう多くない。だからこそ、何があっても守ろうと思っていた。
表向きは随分平和になったようだが、この世界はまだまだ裏が多い。むしろ年々表と裏の区切りがはっきりしてきたのではとすら思うほどだ。
世界の裏側は、深く暗い。本来なら彼女は、そんな所に居られるような者ではないのだ。何もかも無かったことにして、表社会で生きることだって出来るのに。
だから、彼女を守るために、何よりも目的を果たすために、出来ることは何だってしようと思った。
「行ってくる」
着慣れた真っ赤な服を今日も着て、何一つ、決して忘れることがないように。
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