12 逃げる女、その先には

 走った。


 彼のもとへ。


 路地裏を出て。


 行かないと。


 彼のもとへガラス固化体を届けて。


 それで、わたしの仕事は終わり。彼はきっと、ガラス固化体に然るべき処理を施して。私に向かって微笑む。そのとき、隣にいるために。わたしは。彼のためなら、なんでもできる。どんなものでも、盗んで見せる。


 彼のオフィス。彼の部屋まで。


 あと少し。コンビニが見えてきた。夜のなかで、煌々と看板が光っている。


 彼。このコンビニでよくごはんとお酒を買っているんだっけ。今日はわたしの手料理にしよう。


 コンビニの横を抜けようとして。


 コンビニの近く。


 それが、見えた。

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