05 管区機動隊vs逃げる女

「動くな」


 銃を構える。


 路地裏。車のハイビームで、照らす。


 女がひとり。手に、円筒形の何か。


「それは、なんだ」


「あら。知らないのね」


「管区本部からの指示では、それを回収するために逃走する対象は撃っていいらしいが」


 女。


 安心したようなそぶり。円筒形の何かを放り出して、座り込む。


「助かった。ちょっと。ほんのすこしだけ、休ませて」


 大の字に寝そべる女。


「二番。女性の周囲を警戒しろ」


「え」


「なにかおかしい。よくわからんが、おかしい」


 周り。ハイビームの代償に、闇が濃くなってしまっていた。二番が女性の側に寄り、銃を低く構える。


「女。休みは終わりだ。問いに答えろ」


「なにかしら」


「何人に追われている?」


「ふたりよ。官邸お抱えの殺し屋で、狙った獲物はまず間違いなく仕留める。わるいことはいわない。それを持っていってちょうだい。わたしはいいの、もう」


 円筒形の何か。転がっている。


「それは、何だ」


「わたしの恋人の、正義の証」


「判るように喋れ」


「一番。来ます」

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