04 殺し屋がふたり、今回の任務

「そこの路地裏だ」


「おっけい」


 ふたりとも、殺し屋をしていた。


 たまたま、政治案件と個人案件が重なっている。埋没予定の低レベルガラス固化体が、盗まれていた。兵器化転用可能な代物で、最近流行りの戦術弾頭にすることができる。開発のしかたによっては電子障害電磁パルス効果も付与できるほどの、危ない物。


 なんとか、路地裏まで追い詰めた。


 詰めは、ゆっくり。


「おい。俺が声をかける」


「だめだ。相手の精神が脆くてころしてしまったら、元も子もない」


「しかし、この暗さだといくらお前の体術でも全方位対応するのは無理だろう」


「銃。持ってないか?」


「持ってない」


 殺し屋だが、殺す対象は、盗んだ相手ではなかった。


 車。


 サイレンの音。


「まいったなあ。地元の警察ポリ公だよ」


「殺す殺さないの段階ではなくなってきたな。逃げるか?」


「ううん。でもガラス固化体だけはなんとかして回収したいなあ」


「なら、いったん身を隠そう」


「路地裏に隠れる?」


「そうだ。あの警察車両。こちらに向かう動きが正確すぎる。もしかしたら、同じものを狙っているのかもしれない」


「なんだなんだ。管区と官邸と盗んだやつで三つ巴ですか?」


「俺は、目的さえ達成できればいい」


「僕は、依頼主の秘密を守るのが第一だね」


「行こうか」


「おう」

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