ダンジョンで仲間から追放され、奈落に落とされそうになったが……
とあるダンジョンの最深部。
そこで一組のパーティーが、探索を行っていた。
だが、最深部を前にしてリーダーであるAがこんなことを言い出した。
「B! お前をこの場で追放する!」
最初、Bは何を言っているんだと思った。しかし、Aに剣を突きつけられたことで、彼が本気であることを悟った。
見れば、他の仲間たちも同じく、それぞれの得物を抜いて自分を崖の方へと追いやろうとする。
下は暗闇が広がっており、落ちれば奈落の底へ真っ逆さまだ。
「なんでだよ!? なんで、俺を追放するなんて言うんだよ!?」
Bが尋ねるも仲間たちの回答は納得できないものばかり。
「役に立たないから」
「邪魔だから」
「目障りだから」
そんな理由で、殺されてはたまらない。
なんとかこの場から逃げようと、隙を伺うB。
しかし、彼はそこであることに気づいてしまった。
「あれ? A、お前、腕の傷はどうしたんだ……!?」
Aの腕には傷がある。
パーティーを組んだばかりの頃、Bを魔物から庇ってついた傷だ。
回復魔法を使用しても、跡が残るほどの傷だったが、Aはそれを「仲間を護った名誉の負傷」と自慢していたのだ。
――だが、目の前のAには傷がなかった。
注意深く、他の仲間も見るとみんなどこかが違っていた。
聖女のCには泣きホクロがあるのに、目の前のCにはない。
格闘家のDには、首に掛けた家族から貰ったお守りがない。
賢者のEの眼鏡は昨日「寝ぼけて壊した。新しいの買わなきゃ」と言っていたのに、今はかけている。
――そもそも、自分はいつ、このダンジョンに来たのだ?
記憶が鮮明になるにつれて、明らかに異常な事態だと気づく。
しかし、逃げ出そうにも、身体が金縛りにかかった様に動かない。
そんなBにAがケタケタと笑いながら剣を振り下ろし――
「破ぁ‼」
突如放たれた眩い光に飲み込まれ、Aと仲間たちは消滅した。
「どこに行っていたんだよB! 心配したんだぞ!?」
その後、ギルドに戻ったBは、本物のAたちと再会。
事情を説明するとギルドの職員から、自分が今までいたダンジョンは立入禁止になっており、入り口も塞がれていたはずだったと言う。
曰く、件のダンジョンは性質の悪い冒険者たちが、役に立たない仲間を事故に見せかけて消すために使用していたと言う。
「きっと、無念の内に死んだ冒険者たちが、仲間を増やそうとお前を連れてきたんだろうな」
Bを助け、ここまで連れてきた男がそんなことをつぶやいた。
「ダチは一生ものの宝だ。大事にしな」
男はそう言って、お礼の品も受け取らず、その場から立ち去っていった。
「あの人はいったい……」
お礼を言いそびれたBに、Cが男について語り始めた。
「彼の名はTさん。最近、異世界から召喚された、有名な僧侶だそうです」
立ち去るTの後姿を見送るB。
ふと、脳内にこんなフレーズが浮かんだ。
『異世界でも寺生まれはすごい』
そう思った。
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