【番外】グリーンは戦隊を追放されました。その果てに……


「グリーン! お前は今日限りで戦隊を抜けてもらう!」

「そんな! なんでだよ、レッド!? なんで俺が抜けなきゃいけないんだよ!?」


 とある時空。日本のとある場所にある『企業戦隊 チュウショウジャー』の秘密基地。

 その会議室にて、チュウショウジャーのリーダーであるレッドがグリーンに解雇通告を言い渡した。


「これは命令だ! さっさと出ていけ‼」

「なら理由を言ってくれ! 俺の納得できる理由を!」


 冷たく言い放つレッドに対して、グリーンはしつこく食い下がる。

 自慢ではないが自分はこの戦隊において欠かすことのできない存在だと認識している。

 怪人の撃破数はレッド・ブルーに続き、戦闘員を持ち前のパワーで投げ飛ばすその姿に、子供たちの人気も高い。

 なにより、チュウショウジャーロボの下半身は、グリーンのロボットが担当しているのだ。

 まぁ、それに関しては訓練すれば誰でも出来るが……

 今、それを言うのは野暮であろう。


 とにかく、グリーンは納得できない。

 するとレッドは観念したのか、小声でなにか呟いた。


「……が、ないんだ……」

「え……?」






「お金がないんだ……‼」

「レッドぉ!?」


 予想外の理由にグリーンの声が裏返った。


「もう一度言う! お金がないんだ‼」

「なんてことを言うんだ、レッド‼ お金がないから追放って、それは戦隊のレッドが一番言ってはいけない台詞だぞ!?」


 なんなら、ヒーローが言ってはいけない台詞、ワースト10に入るだろう。

 って言うか、日曜日の朝に言うべき台詞じゃない。


「だが、事実なんだ! 何度でも言おう! お金が! ないんだ‼」

「レッドぉぉぉぉぉ‼」


 会議室にグリーンの悲痛な叫びがこだまし、レッドはガクリと膝をつく。

 本日はまだ、怪人と戦ってもいないのに、二人とも満身創痍である。

 否、彼らは敗北したのだ。“現実”と言う、強大な敵に――!






「……で、なんでお金がないんだ? って言うか、なんでそれで俺がクビ?」


 とりあえず叫んだところで、幾分落ち着いたのか、冷静になったグリーンはレッドに再度、尋ねた。

 するとレッドはポツリポツリと事情を話し始める。


「実は、玩具の販促が上手くいってないらしい」

「うわぁ、聞きたくなかった」


 ホント、戦隊のレッドが言うべき台詞じゃないよ。

 脚本家とかPの台詞だよ。


「元々、この世界にはいくつもの悪の組織があり、それに対抗すべく多くの戦隊が結成されてきた訳だが、俺たちチュウショウジャーは中小企業『オモチャンス』直属の戦隊……玩具の売り上げがモロに響いてくるんだ……」

「いや、怪人の撃破数で評価しろよ、そこは」

「他所は他所、うちはうち」

「そんなお母さんの言う台詞をこんな時に使うなよ!」

「しかし、その中でお前は武器をほとんど使わず、肉弾戦がメインだ! その為、司令から『玩具販売に非協力的な奴』とクレームが来てなぁ……」

「そんな理由!? こっち、戦場じゃ殺るか殺されるの切羽詰まった状況なんだぞ!?」


 グリーンの言う通り、敵は悪の組織『テンバイズ』

 転売のためなら殺人までかます、極悪非道な奴らだ。

 そんな連中が相手なんだから、なりふり構ってはいられない。

 自分の得意分野で生き延びる方法を探すべきだろう。

 って言うか、武器って言ったって……


「武器、こんなんじゃん」


 そう言ってグリーンが取り出したのは、チュウショウジャーのメインウェポンのチュウショウ剣とチュウショウ銃。

 しかし、そのデザインはあまりにもありふれていた。

 具体的には剣はなんか柄の部分に羽っぽいのついてるし、銃は宇宙人が持ってそうな奴だ。


「売れる訳ないじゃん。こんなファミレスで売ってそうなデザインの奴。最近のは、もっと洒落た感じだよ?」

「仕方ないだろう……司令官がデザイナーに『武器のデザインくらい簡単だろう?』とか抜かして、少ない依頼料で交渉したら、ガン無視されて、その上SNSでバラされて、誰も受けてくれなくなったんだから」

「売れないの司令の所為じゃん! なにしてんのアイツ!?」

「それに、他の連中はみんな貧乏でさ、副業とかしながら日々の生活を乗り切ってるんだ……俺は親の遺した借金、ブルーは精神科への通院費、イエローは奨学金の返済、ピンクは親の介護費と、敵以外にも戦う奴らが多い……」

「やめろぉ! そんな裏事情を暴露するなぁ‼」


 子供に見せられない! 親御さんには聞かせらんない話である。


「正直、俺たちはここを辞めさせられたら、生活が苦しくなるんだ。しかし、グリーン。お前は特にその辺りは問題ないから……」

「そんな理由で、俺、解雇されんのかよ……」

「でないと、ただでさえ少ない給料、さらに減らされかねないんだ……」

「マジか」


 正義の組織にあるまじき、ブラックさ。

 この国に未来はあるのか?


「なるほど……まぁ、納得はできないが、理解はした。それなら仕方ないな……」

「本当にスマン。俺も仲間をこんな形で追放したくないのに……上は現場の苦労を分かってくれない……」

「ちなみにチュウショウジャーロボの下半身の操縦ってどうなるの?」

「グリーンのロボは司令が操縦することで話はついている」


 なるほど。もう既に、自分の居場所はここにはないのか……


 全てを悟り、グリーンは「仕方ないな……今まで世話になった」と現実を受け入れた。

 その後、引継ぎもなんとか終えて、月末で脱退。

 ちなみに、無理やり自己退職にされた為、退職金は出なかった。クソである。






「……とは言え、明日からどうすっかなぁ」


 転職サイトを見ながら、ぼんやり呟くグリーン。

 まぁ、まだ余裕はあるし、ゆっくり探すか。

 なんなら実家に帰ってからでもいいだろう。農家だから、人手はいくらあってもいいし。


「ただなぁ、世間体とかあるしなぁ。田舎だから、そう言うの秒で広まるしなぁ……!?」


 などと悩んでいると、不意に気配を感じた。

 腐っても戦隊で命がけの戦いをしてきたのだ。

 これくらい造作もない。

 予想通り、視線の先の空間が歪み、中からどう見ても悪の戦闘員としか思えない集団が出現。

 率いるは黒の斑がついた白衣に身を包み、同じ模様の尻尾と小さな角の生えた異形の女性だった。


「やぁ! チュウショウジャーのグリーン君! はじめまして! 私は秘密結社『FANG』の幹部、Dr.バイソンだ!」

「いや、どう見ても柄がホルスタインですが?」


 バイソンとかもっと、前線で戦う奴の名前だよ。「ドクター」って医者じゃん。

 内心、ツッコみながらも、グリーンは気を抜かなかった。


「それで? その『FANG』とか言う組織が、戦隊を追い出された俺に、何の用だ? って言うか『FANG』なんて、聞いたこともねぇぞ?」

「それはそうだ。我々『FANG』は今日から活動を開始したばかりの組織なんだから」

「マジか」


 時空間転移技術などと言う、高い技術力を持つ組織が今日までノーマークだったとは……

 一体、国は何をしていたんだ?


「まぁ、一応、活動を開始したものの、まだまだ人手不足は否めなくてね。本来なら技術開発担当である私が、有望な人材のスカウトに赴くことになったわけだよ」

「ふん、悪の組織も大変だな」

「予算不足と上司の横暴で解雇された、正義の味方も大変みたいだけどね?」


 なるほど、こちらのことはリサーチ済みか。

 なら、次に言う台詞は想像がつく。


「さて、聡いキミのことだから、そろそろお気づきだろうから、本題に入ろう」

「断る!」

「まだ、何も言ってないじゃないか」

「言わなくても分かるよ! 大方、俺をスカウトしに来たんだろう?」

「そうだよ。うちは即戦力を募集中だからね」


 故に、リストラ・退職したばかりの元ヒーローを狙っていると言う訳か。

 だが、こちらも辞めたとは言え、戦隊のグリーンだった男。

 悪の組織になど屈しない。


「俺を仲間に引き入れるなら、力づくでやって見せろ!」

「よろしい! ならばやってしまえ! カカッシー!」

『カカッシー‼』


 正義の心を燃やし、生身で戦う覚悟を決めたグリーン。

「その心意気やよし!」と戦闘員たちに命令を下す、Dr.バイソン。

 今、正義と悪の戦いが幕を開けた!




 ――五分後。




「参りましたぁ……」

「やったぁ! 勝ったぁ~!」

『カカッシー‼』


 そこにはストリートファイトで負けた側のように、ボコボコにされたグリーンと、勝利を祝い戦闘員たちとハイタッチをするDr.バイソンの姿があった。


「いや、ホント、マジ強すぎ……なにコイツら? 戦闘員なんだから、生身でも勝てると思ったのに……」

「ふふん! カカッシーは一体で戦隊一組分の戦闘力を誇るのさ」

「勝てるか、そんなもん」


 完全に序盤で詰むわ。1クールも持たねぇわ。


「なにせ、遺伝子改良の結果、群馬県民の戦闘能力と北海道民の環境適応能力を手に入れたハイブリッド戦士だからね!」

「いや、それ、純然たる日本人!」


 って言うか、全国に何人いると思ってんの!? そう言う人。


「ちなみに、ここで終わりじゃない! 沖縄県民の遺伝子からの琉球空手をマスターさせるのが目標だ!」

「普通に習わせたらいいんじゃないの?」


 あと、沖縄県民に謝れ。お前は。


「それじゃあ、約束通り、我が組織に入ってもらう‼」

「くそっ! ここまでか……みんな、すまねぇ……」


 改造か洗脳か分からないが、きっと自分はこのまま、悪の手先になってしまうのだろう。

 無念さに苛まれ、悔し涙を流すグリーン。

 対してバイソンは胸元から、一枚の紙を取り出した。


「ッと言う訳で、早速明日から、入ってくれる? 就業時間は八時から十六時まで、休憩はお昼に約六十分。あと、時間見てちょいちょい休んでいいよ。あと残業代も出るけど、基本定時ね」

「はい?」

「休みは週休二日制で祝日も休み。賃金だけど、最初は一八万~二十万で、賞与は年二回。あと保険も各種完備。退職金も出るから」

「……悪の秘密結社にしては、ずいぶん、普通なんだな」


 すると、バイソンは胸を張って、得意げに言った。


「そりゃそうだよ。だって今日から『秘密結社FANG』は正義の味方『農業戦隊アグリカルジャー』のバックアップ組織になるんだもん」

「同業者かい‼」


 ――そう。グリーンは思い違いをしていたのだった。


「まぁ、キミが間違えるのも無理はないよねぇ。ウチも昨日までは悪の組織として活動してたんだもん」

「昨日までって、なんで鞍替えしたんだよ?」

「いや~、うちのモットーは『農業で世界征服』だったんだけど、なんか上手くいかなくてねぇ……」


 話を聞くとこうだ。

 世界各国の食料供給率を裏から支配し、世界征服を狙っていたFANG。

 手始めに活動地域である日本を手中に収めようとして、様々な活動を行っていたのだが――


「基本的に農業自体が後継者不足で衰退しつつあるからねぇ」

「まぁ、そうだよな……」

「で、手始めに農家さんを積極的に支援していこうってなって、そういう方向に舵を切り始めたんだ」


 農家さんへのお手伝い派遣に、農協と協力しての後継者の育成PR、害獣駆除に畑の警備。

 グリーンの地元も後継者不足で、放棄された畑があちこちにあったくらいだ。

 それは助かるだろう。


「で、ある日、大首領様は気づいた。『あれ? これ? やってること、正義側じゃね?』って」

「初めに気づけ」

「悪さらしい悪さも、作物泥棒や無人販売所から万引きしていく連中をボコって、身ぐるみ剥がす程度の悪さだったからね」

「それはまぁ……うーん、判定がムズイ」


 法律的には間違いなくアウトだ。

 だが農家さん側からしたら『万死に値する』行為なわけで……

 実家が農家のグリーンも、思わず迷うくらいだ。


「それで、いっそ正義の味方として行動した方が、色々合法的に動けるってことで、幹部会議で決まって、現在に至る訳なんだ」

「なるほど、それで、なんで俺に目をつけた?」

「あぁ、それは昨日、キミのご両親から連絡を受けてね。『息子が会社クビになったから、面倒見てくれないか?』って言われて。丁度、求人も出してたし」


 どうやら、実家の取引先だったようだ。

 それなら連絡くらいよこせよ。紛らわしい。


「それで、返事はどうする? 嫌だったら無理強いはしないけど?」

「まぁ、別に嫌って訳ではないけど……」


 要するにこれはヘッドハンティングなのだろう。

 母体が悪の秘密結社だったことを除けば、まぁまぁ、いい職場のようだ。

 そもそも、悪の秘密結社って、社会と敵対しなきゃいけない=離脱者を出さないためホワイトな職場が多いって聞くし。


「んじゃ、とりあえず早速明日から、現場に入ってくれる? アグリレンジャーのリーダー・アグリグリーンとして」

「普通、レッドがリーダーじゃないの?」

「別にそういう決まりがある訳じゃないよ。白が実質的なリーダーやってた戦隊もあるって聞くし。メンバーが揃うまでの間はカカッシーたちに代理頼んでるから」

「「「「カカッシー!」」」」

「いや、こいつらで組めよ! 一人が戦隊一つ分なら、単品で十分な戦力だろ!」




 そんな訳で、グリーンはツッコミを入れつつ、新たな戦隊のリーダーとして抜擢されたのだった。

 そして、一年後。




「今日の仕事は、作物泥棒撃退のための畑の警備だよ。みんなグリーン君の指示に従って、作物泥棒を半殺しにしてね?」

『カカッシー!』

「バイソンさん。物騒なことを言わないでください」

「あと、生きのいい素体を見つけたら、拉致ってきてね? 大丈夫、相手犯罪者だから」

「アンタ、悪の組織の癖が全然抜けてないんだけど!?」


 あの日以来、グリーンは正義の味方になったFANG直属部隊『アグリレンジャー』のリーダーとして戦っていた。

 まぁ、あの後、イイ感じのメンバーが見つからないから、実質ソロでやってるが。

 メンバー揃わない理由で変身スーツも支給されないけど。


「とは言え、今日も普通に畑の警備なんですね」

「こういう地道な作業も、立派なお仕事だよ。グリーン君」

「なんかこう、怪人と戦うってのはないんですか?」

「そう言うのは他所に任せておけばいいんだよ。グリーン君。それにキミ、この間、害獣駆除に貢献したじゃないか」

「相手、熊だったから、普通に死を覚悟しましたけどね。担当カカッシーたちも丁度、みんな健康診断でいなかったから、猟銃会来るまで、誰も助けてくれなかったし」

「カカッシーと言えば、実は今日のカカッシーたちは新しい改造を施しててね。香川県民の細胞を投与したから、うどんのようなコシのある活躍を期待しているよ」

「もう、完全にこじつけになってんじゃないですか」


「アンタは一度、香川県民に謝ってこい」などと言いつつも、警備の仕事は真面目にこなす二人。

 そんなことをしていると……


『カカッシー!』

「うわぁぁぁぁぁ‼ 助けてくれぇ‼」


 どうやら、獲物が網にかかったようだ。

 すぐさま、現場に駆け付ける二人。

 すると、そこで目にしたものは……


「レッドぉ!?」

「ぐ、グリーン!? なぜここに!?」


 そこには、網に囚われたかつての仲間の姿があった。

 いや、レッドだけではない。

 ブルー、イエロー、ピンク、そして……


「は、はなせぇ! 俺を誰だと思ってる!? チュウショウジャーの司令官だぞ!?」

「……司令までなにしてんだよ!?」


 自分をクビにした上司まで捕まっていた。


「よっしゃあああああ! 実験の時間だぁぁぁぁぁ! イヤッフゥゥゥゥゥ‼」

「しないでください! とにかく事情を聞かないと……どうしたんだよ? レッド、なんで作物泥棒なんて……」

「うぅぅ……実は……」


 マッドサイエンティストの上司を抑えながら、グリーンが尋ねると、レッドは涙ながらに話を始めた。


 グリーンを追放し、いつも以上に玩具の販促を意識して戦うようになったチュウショウジャー。

 しかし、実践ではそんな戦い方が通用する筈もなく、人員不足も手伝い、チュウショウジャーはグリーン所属時よりも連敗を重ねることになった。

 さらに、担当していた悪の組織『テンバイズ』たちも『税務署戦隊チョウゼイジャー』と『刑事戦隊ポリレンジャー』の二大戦隊の活躍により壊滅。

 それにより、活躍の機会すらも失った。

 さらに……


「司令官が私用でグリーンのマシーンを動かしてたら、アクセルとブレーキを踏み間違えて、コンビニに追突してしまったんだ……」

「……」


 さらに、その時、司令官はお酒を飲んでいたらしい。

 あまりの醜態に、グリーンは言葉を失った。


「おかげで俺たちチュウショウジャーは活動停止を命じられた……その所為で、他の仕事をせざるを得なくなり、俺は肉体を酷使し続けて、おしっこがレッド。ブルーは鬱病でメンタルブルー。イエローは服も洗えない程になり、イエローばんだ服を着続け、ピンクは副業のキャバクラだけでなくピンクなお仕事にも手を出さざる負えなくなったんだ」

「いちいち色を因ませるな」

「そんな時、司令官が『農作物を盗んで転売して大儲けしよう』とか言い出して……結局、このザマだ。もう、お先ブラックだよ……」

「だから因ませるな」


 しかし、自分が抜けただけでここまで、落ちぶれるとは……

 てか、なに転売しようとしてんだ、コラ。


「ふん! 世界を守ってきたんだ! これくらいやってもバチはあたらんだろう‼」

「うぅ……俺たちはもう、おしまいだ……頼むグリーン。俺と司令は仕方ないとして、他のみんなは見逃してくれ……」


 反省の色を見せない司令官はともかく、泣きながら懇願するレッドを見て、仲間だけでもなんとかしてやりたい。

 そう思い、グリーンはバイソンにある提案をするが……


「Dr.バイソン。話が」

「いいよー」

「早い!」


 せめて、言ってからOKしてくれ。


「あの、レッド、あとみんな……もし良かったらでいいんだが、俺の戦隊『アグリレンジャー』に入隊してくれないか?」

「!? どういうことだ!? グリーン‼ 俺たちは犯罪を犯したんだぞ」

「まぁ、お前らも司令官に唆されて、やったってことで。それに今回のことは未遂にしておいてやるから、体とメンタルが治ったら、是非、うちに来てくれ。このままじゃ、俺、一人で切り盛りしなきゃいけないんだよ」

「グリーン! お前ってやつは……‼」


 グリーンの優しさにレッドたちは感激のあまり、涙を流す。

 紆余屈折あったものの、彼らは戦隊として再び、活動するのであった。






「……ただし、司令官。お前はダメだ」

「なにぃ!?」

「『なにぃ!?』じゃねぇよ‼ お前が主犯格だろうが‼ 仲間も巻き込みやがって‼ カカッシー、やっちまえ!」

『カカッシー‼』

「待て、グリーン君。こうして戦隊が揃って強化スーツの使用許可も下りたんだから、テストも兼ねて、キミたちで引導を渡してやれ!」

「それもいいな! レッド!」

「あぁ! いくぜ! みんな!」

『応ッ!』

「ま、待て! 私は司令官だぞ!?」

「“元”だろが! もう、お前なんてただの犯罪者だろうが!」

「そう言う訳だ、観念しろ」

「ところでグリーン、この変身アイテムはどう使うんだ?」

「えーと……Dr.バイソン、これどうやって使うんですか?」

「あぁ、これはスポンサーの農家さんが栽培してる作物を食べて『○○さんの作ったこれはおいしい! 変身!』と叫べば変身できる」

「宣伝が露骨すぎる!」

「あれ? それだとブルーはどうすれば……」

「あぁ、ブルーはとりあえず青魚でも食べて変身してくれ。農家さんが釣ってきた魚だからギリギリOKだろう。多分」

「そこは作物で統一しろよ‼」



 ……先行きは不安だが、戦え、アグリレンジャー!

 頑張れ、アグリレンジャー‼

 農業の未来はキミたちにかかってるぞ!

 とりあえず、目の前のクソ上司を叩き潰すんだ!





◇登場人物のその後◇


 グリーン:アグリレンジャーのリーダーとして活躍中。後にバイソンと結婚。

 レッド:現在、治療のため療養中。復帰後は温泉巡りが趣味になる。

 ブルー:現在、治療のため療養中。復帰後はアロマテラピーに目覚める。

 イエロー:農業の楽しさに目覚め、奨学金を返しつつ、将来は農業経営を目指す。

 ピンク:親の介護のために、融通の利く内勤に回る。スリーサイズは82/53/83

 Dr.バイソン(二代目ピンク):ピンク異動後、適任者がいなかったので、見つかるまで代理として就任。後にグリーンと結婚。スリーサイズは101/57/101

なお、何度も言うが、バイソンではなくホルスタインの怪人である。

 司令官:全員からフルボッコにされ、病院→警察→刑務所送りに。ざまぁ。

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