異世界ファンタジー名探偵マック4

渋谷かな

第1話 犯人は妹!?

「ワッハッハー!」

 マックはデレデレしながら馬鹿笑いしている。

「父さん、母さん、ミスド、こんな俺でも結婚できるぜ! アリス! 好きだ! 愛しているよ!」

 自分に彼女ができて大喜びしている。

「奇特な娘さんがいたもんだ。」

「マック、食事中は静かにしなさい。」

 マックの父親と母親は息子の嫁に興味はなかった。

「絶対におかしい! なんでお兄ちゃんの彼女はファーストフード系の名前を免除されてアリスなの!? 私もカトリーヌとかセーラとかオスカルとか、カワイイ名前がいい!」

 妹のミスドは自分も女の子なので、カワイイ名前に憧れていた。

「まあ、改名でもするんだな。後はファン投票とかだな。もっと変な名前にならないといいけどな。アハッ!」

 妹を軽くあしらう兄マック。

「お兄ちゃん、また事件よ。さっさと出かけたら?」

「なに!? 事件!?」

 マックの妹のミスド。当然のように妹も兄の探偵ごっこに興味はなかった。

「今朝、フード八百屋の近くで変死体が見つかりました。」

 異世界ファンタジーニュースが事件を放送している。

「事件だ! 事件が俺を呼んでいる! ワクワクするぞ!」

 マックは事件を知ると興奮する性格だった。

「行ってきます!」

 マックは朝食も半分で靴を履いて出かけていった。

「まったく騒がしい奴だ。ゆっくりゆで卵も食えん。」

「探偵ごっこをする情熱と同じくらい勉強をしてくれると嬉しいんだけど。」

「あ~、恥ずかしい。あんなお兄ちゃんを持って妹の私は恥ずかしい。」

 家族は身内に探偵ごっこをしている人間がいることを迷惑がっていた。

「所詮、マックお兄ちゃんなんて、私の操り人形よ。」

 妹の今はミスドが不敵にニヤリと笑う。


「おはようございます。カーネル警部。」

「おお、マックくん。来てくれたか。助かった。」

「警部、また事件を迷宮入りにしようとしましたね?」

「アハッ!」

 殺人事件の現場にマックは到着した。異世界ファンタジー警察の面々が捜査をしていた。

「警部、状況はどうですか?」

「恐らく犯人は芋虫か何かで野菜を食い荒らした跡がある。」

「そうですね。でも芋虫にしては食べ残しの歯型の跡が大きいような。」

 何かにマックは気がついた。

「う~ん。」

 そして周囲を見回すマック。

「カーネル警部。犯人が分かりましたよ。」

「なんだって!? もうわかったというのかね!? マックくん!?」

「はい。楽勝です。なぜなら犯人は事件現場に戻って来るという習性があるからです。」

「なに!? ということはこの野次馬の中に犯人がいるというのかね!?」

 事件現場は野次馬でいっぱいだった。

「犯人はおまえだ!」

 マックが多くの野次馬の人々の前で犯人を指名する。

「なにー!? どうして俺が犯人なんだ!? 証拠はあるの!? 証拠は!?」

 犯人と指名された男は慌てて騒ぎ立てる。

「ありますよ。」

「ええー!? あるの!?」

「あなたの口元についたキャベツ! それがあなたが犯人だという証拠だ!」

 犯人の口元にキャベツの食べ残しがたくさん飛び散っていた。

「しまった!?」

「観念するんだな。食い逃げ犯!」

 マックは犯人を追い詰める。

「こうなったら仕方がない! おまえも一緒に食べてやる! うおおおおおー!」

「姿が変わっていく!?」

 殺人犯の人型から異世界ファンタジーらしくモンスターの巨大芋虫に変化していく。

「おまえも噛み砕いてやる!」

 現れたのは殺人犯の巨大芋虫イモイモ。

「やれるもんならやってみろ。」

 しかしマックは微動だにしない。それどころか楽しそうに笑っている。

「なに!?」

「普通の探偵は事件の謎を解いて警察に任せて終わりだが、俺は違う。俺はモンスター退治までやるプロの名探偵だ。」

 マックは犯人であるモンスター退治までする探偵だった。

「まさか!? おまえが有名な!? あの異世界ファンタジー探偵か!?」 

 モンスターの間でもマックの探偵の名声は聞こえていた。

「その通り。俺の名前はマック。異世界ファンタジー名探偵さ。」

 少年の名前はマック。名の知れた名探偵だ。

「それがどうしたのよ!? たかが探偵如きがモンスターである私に勝てると思わないでよ!」

 巨大芋虫イモイモがマックに襲い掛かる。

「おまえ、さっきから探偵、探偵、うるさいんだよ! 俺は名探偵だって言っているだろうが!」

 かなりプライドの高いマックは名探偵の名が抜けて探偵と呼ばれると自尊心が傷つくのであった。

「知るか! 噛み砕いてやる! こっちはお腹が空いているんだ!」

 巨大芋虫イモイモは突進をやめない。

「いいだろう。この俺を名探偵と知っても挑んでくるなら、倒させてもらう!」

 マックは戦闘態勢に入る。

「いでよ! 名探偵の剣!」

 マックは手品みたいに何もない所から剣を出現させる。

「名探偵の剣だと!?」

「その通り。名探偵の俺のためのディテクティブ・ソードだ!」

 名探偵は剣を構える。

「どんな難事件も快刀乱麻! くらえ! これが俺の名探偵斬りだ!」

「ギャアアアアー!? やられた!?」

 マックは必殺技で巨大芋虫イモイモを斬り倒した。

「安心しろ。動けなくなる程度の峰打ちだ。」

 巨大芋虫イモイモは死んではいなかった。

「どうしてキャベツを食いまくったんだ?」

「私は畑で美味しくキャベツを食べて幸せに暮らしていました。それなのに人間が畑のキャベツを全部収穫してしまったんです。お腹が空いた私は仕方がなくキャベツを見つけて食べまくっていたんです。ごめんなさい。」

 巨大芋虫イモイモにも罪を犯す理由があった。

「そうだったのか。すまない。」

「え!?」

「悪いのはお金のために美味しいキャベツを狩ってしまった人間かもしれないな。少しは畑にキャベツを残しておくべきだったな。罪を償って、また畑でキャベツを食べればいい。」

「ありがとうございます。」

 謝ってもらい、自己の境遇を聞いてもらい、自分を理解してもらい、再び生きるチャンスをもらった巨大芋虫イモイモは涙を零すであった。

「あの! 刑務所で罪を償ったら、あなたのキャベツを食べに行ってもいいですか?」

「それは断る。」

「ケチ!」

 こうして巨大芋虫イモイモはパトカーの乗せられて連行された。

「はい。一件落着。」

 事件を華麗に解決する異世界ファンタジー名探偵であった。

「どんな難事件も解決してみせます。俺は名探偵ですから。」

 異世界ファンタジー名探偵マックの大活躍は始まる。

「マックお兄ちゃん。お兄ちゃんの力が自分一人のものだと思わないでよ。その力も剣も全て私が与えた物なんだからね。本当の異世界ファンタジー名探偵は私よ。」

 意味深に語る妹のミスドであった。

 つづく。

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