第454話YOU!
一方。
「たなりん『さん』って面白いですねー」
「そ、そうですか」
たなりんはモテていた。ちやほやされていた。
ひそひそ。
(たなりんさんって面白いですね!)
(まあねー。なんてったってあたしのライン友達だからねー)
(彩音さんいいですねえー)
(なーに言ってんのよー。今日はあんた達に男紹介するために連れてきてんだからさー。いいと思ったらアタックしちゃいなよ。YOU!と書いて『よう!』と読む)
(彩音さん…)
「それにさあ、飯塚さんとたなりん『さん』はなんとユーチューバーなんだよーん♡ようチューバーじゃねえからね」
「え?」
いろんな意味でポカーンとする八重子と里美。そしてすぐに口を開く。
「すごーい!ユーチューバーなんですかあ?」
「私、チャンネル登録しますぅ♡チャンネル名教えてもらっていいですかぁ♡」
ひそひそ。
(あれ?たなりん。彩音ちゃんに『組チューバー』のこと言った?)
(さ、さあ…なり。義経君か宮部っちじゃないなりですか?)
「どうかしましたー♡」
「あ、いや。こっちの話でね」
あたふたする飯塚とたなりん。そして飯塚が話を濁す。
「ま、まあ、ユーチューバーと言っても昨日今日の話でね。今はチャンネル準備中でね」
「そ、そうです。飯塚さんのこの怪我も撮影中の名誉の負傷なのです」
「え!?そうなんですか?」
「あ、いや、まあ、そうですねえ」
いろいろ考えると撮影中の名誉の負傷ってのはあながち間違ってないなあと思う飯塚。でも病人である自分より現役のJKたちはたなりんの方に興味を持ってるなあとも思う飯塚。ま、たなりんは今まで二次元の女の子ばっかだったし、これはこれでいいのかもなあとも思う心の広い兄貴分飯塚。そこで意外な展開が起こる。
「たなりん『さん』ちょっといいですか?」
「はい?どうしましたか?椎名さん」
椎名八重子がたなりんの顔に思い切り接近する。
「ちょっと動かないでくださいねー♡」
「あ、いや、あの、その、いけません!椎名さん、みんなが見てます。ダメです」
そんなことを言いながら自分の顔面に迫ってくる八重子の顔にいけない想像をしながらあたふたするたなりん。そして目をつぶるたなりん。
~たなりんの心の声~
(ああ、世界中の皆様。このたなりんのファーストキスは生まれて十七年と六か月でしたなり…。今まで神絵師『いしけー』様の爆乳ぶっかけドアップラミネートで何度も練習してきた甲斐が報われる時が来たなり…。過去の『すくーるさいみんぱらだいぶ』抱き枕をギューッとしながら熱いくちづけを交わしていたたなりんよ。とうとう報われる時が来たなりよ。ていうか昔のたなりんの…ばーか。その熱いくちづけの相手は所詮『布』なりよ。『ポリエステル100%』の『布』にイラストをプリントしたものなりよ。ラミネートは『平面』で下敷きなりよ。あ、入り口が唇になってるオナホ相手に接吻したこともあるなりね。バカの極みなりよ。タイムマシーンで戻れるならこんこんと説教したいなりね…。今、祝福の時が…。さあ、世界中のたなりんファミリーたちよ!この国民の祝日とすべき記念すべき日を、時を盛大に祝うなり。ハサミでテープカットなり。樽に入ったお酒の蓋を木槌で割るなり。くす玉の糸を引くなり。平和のシンボルである鳩を飛ばすなり。その神聖なる選ばれし相手は椎名八重子さんという素敵な女神でしたなり。汝は生きとし生ける病める時もたなりん専用の穴とか言うなあー!自分が恥ずかしい!そんなことを考える自分は最低なりよ!清く!清い心で!さあ、舌は入れちゃあダメなりよ。こういう時、顔の角度は少し傾けるなりか?目を途中で開けていいなりか?大人の階段上るなりか?思春期に少年から大人になるなりか?シングルベッドで温めてあげようなりか?おーまいりるがーなりか?)
「たなりん!たなりん!」
飯塚の声で我にかえるたなりん。
「え?」
そこで顔を思い切り近づけてきていた八重子が言う。
「たなりん『さん』。ちょっと動かないでね」
「は、はい」
ひょい。
たなりんの眼鏡を取る八重子。実は丸尾末男のようなぶ厚い眼鏡を外したたなりんの顔を見たものはいまだに誰もいなかった。突然のことにたなりんが叫ぶ。
「あ!ああー!見えない!なにも見えないなり!」
「え…」
「うそ…」
「マジ…?」
たなりんがお約束の「眼鏡、眼鏡」をするのを尻目に眼鏡なしのたなりんの素顔に度肝を抜かれる飯塚と聖クリクリ学園三人娘。
「ちょーイケメン…」
「眼鏡ぇー、眼鏡ぇー。なにも見えないなりよー」
たなりんの『なり』に気付かないほどイケメンたなりんにドッギュゥーンズッギュゥーンとなる聖クリクリ学園三人娘。
「たなりん『さん』!ちょっと動かない!そのまま!」
「は、はいなり」
ここから聖クリクリ学園三人娘が暴走する。ふゅーちゃりんぐ飯塚も。
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