第451話オサワリマン

「おニーさん、マッサージーイカが?キモチイイよー」


「え?」


「オンナノコー、たクサん、イルねえー。ホンバンアルねえー。サイゴマデ。キモチいいねえ」


「田所さん?」


「ね」


「『ね』、じゃないですよ。あれは客引きのババアですよ。見た目は男ですけど」


「まあまあ。ね。ああいう人は街の情報に詳しいんですよ」


「マジですかー」


 田所の強引な理論に「ホントですかー」と思う新藤と冴羽。田所は客引きのおばちゃんのもとに歩み寄る。


「マッサージですか?」


「ソウそう。キモチいいね。サイゴマデ。オンナノコタクさんいるねえー。ミナワカクテ美人ねえー」


「だいたい何歳ぐらいなんですか?」


「ソウねえー。ミナ若いよー。ピチピチねえー」


「いえ、あのおー。若いのは分かりましたが。具体的に何歳ぐらいかと」


「おニーさん、イクツぐライがタイプねー。コノミ聞くよー」


「そうですねえ。二十代前半が」


「ニジュうダイいるねえー。カワイイよー。遊んでくネー」


「最後とか気持ちいいとか具体的にどういうことをしてくれるんですか?」


「おニーさん、スケベ。スケベスキねえ。スケベなヒトが好きなコトイッパイするよー」


「サイゴマデってドンなことをしてくれルンですかー?」


「ちょ、田所さん!話し方がうつってますよ!」


「イマ、コウショウチューねー。ワカラナイことはキクぅのタイジー」


「そっちのオニサンもアソブねー」


「アソブよー。二人同時とか三人一緒とか大丈夫ですか?」


「オンナノコ、イッパイいるからダイジョブねえー」


「いや、団体ではナクー、オンナノコひとりにー、スケベなオトコサンニン一緒にねー」


「エエエ!おニーさんタチ、エッチネー。でもトクベツニアンナイするよ!」


「ちょっと!田所さん!」


「一人アタリのヨサンハオイクラマンエンなりかー」


「田所さん!」


「俺はいいっすよ。三人でも」


「冴羽ぁ!お前までなに言ってんだぁ!」


「まあまあ。見てみろよ。田所さんを」


 そう言いながら冴羽がタバコを咥えて火を点ける。


「ソレでー、おネーさんトコはショバダイどこにハラッテいるねー?」


「オキャクさーん、ちょっとヨクワからなーい。ナニ言ってるか?」


 そこで田所が万札三枚を取り出して客引きの女に握らせる。目の色が変わってそれを受け取る客引きの女。


「アナター、サンマンでアタシをカウねー。イイヨー。サンマンブンまでなラネー」


「おお」


 新藤がそれを聞いて思わず声をあげる。冴羽が咥えタバコで客引きの女に見とれる。


「やれんなら次俺な」


「え?」


 ストライクゾーンの広い冴羽。構わず田所が質問をする。


「ココは『土名琉度組』のシマねえー。キャクヒキするなラおカネはらわナイトネ」


「ソノトオリね。あんたケイサツか」


「チガウねー。ケイサツにがてよー。オマワリサンこわいねー。ワタシ、オサワリマンね」


「アナタ、オモシロい。でも『土名琉度組』とチガウね。おカネハラッテるの。『ヒノマル』がコノヘンしきッテルネ。ワタシタチも『ヒノマル』にハラッテるねー」


「『ヒノマル』ですか?」


 田所の表情が変わる。新藤と冴羽も耳をそばだてる。


「ソウね。おニーさん、『ヒノマル』シラナイのか」


「スイマソん。チョットべんきょーブソクねえー」


「サンマンならココまでネぇ。おニーさん、エンチョースルナラおカネ払うネぇ」


「イエイエ、もうおカネないヨー」


「ジャアようはナイネぇ」


 客引きの女と別れた田所が二人のもとに戻ってくる。


「イヤー。あのババアガメツイネぇ」


「田所さん、もう普通に喋ってください」


「あ、すいません」


「それで聞こえましたよ。『ヒノマル』ってなんですか?」


「それがもっと聞きたかったら金を払えと。がめついババアですよ。半グレのチームじゃないですか」


「でもこの辺仕切ってる半グレって『値弧値弧會』ですよね」


「って聞いてますが。それとは別の半グレか外国人のグループじゃないですか」


 ここで新藤が『藻府藻府』ナンバーツーたる存在感を示す。


「手っ取り早く殴る相手を見つけましょう。『ヒノマル』だか『値弧値弧會』だか知りませんが誰が相手だろうとぶん殴るだけですよ」


 そう言いながらスマホを取り出す新藤。


「んだあ?新藤。スマホでなにすんだよ。ツイッターで出会い系か?」


「まあ半分正解かな。このスマホは宮部が俺に持たせたもんだ」


 新藤の説明を「?」な顔で聞く田所と冴羽。新藤が続ける。


「このスマホは宮部が特別仕様に仕上げてくれててな。『テレグラム』がインストールされてある。もちろんIDも取得済み。日本語で使えるぜ」


「『テレグラム』…」


「そう。お、いるいる。『テレグラムチャンネル』で『野菜』や『アイス』売ってる奴がよお」


 そう言いながら新藤が近くにいるプッシャーへと『テレグラム』でメッセージを送る。

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