第376話いーいーなーいーいーな、にーんべんっていーいーな
「宮部っちは最低の人間なり。リア充を隠している時点でもうダメダメなり。皆は本当の宮部っちの顔を知らないだけなり。チームのステッカーをバイクに貼っているなりけど、本当は家でエチエチな二次元画像を集めてそれをプリンターでラベルシートに印刷して切り取って隠し持ってるなりよ。それだけならまだしもラミネート加工を施したエチエチなお顔と爆乳にぶっかけてるなりし」
「はは…、宮部センパイはそんなことを隠れてやってるんすかあ。いけませんなあ」
「そうなりよ。他にも粗悪で安価な中華性フィギュアにぶっかけることにも慣れてしまいなり…。微妙な色の違いも分からなくなってきているでござる。造形師様をリスペクトする心が欠けているなりね。…でもまあいい奴なり」
「そっかあ。宮部センパイもたなりんにとっちゃあいい奴かあ。まあ、分かる気がしないでもないかな。本人が聞いたら調子に乗るからこれはオフレコね」
「当然なりよ。まあ、宮部っちとも最初に飲んだのがおしるこなりよ」
「え?」
「初めてバイクに乗せてもらった時なりかな。今でも覚えてるなり。初めて宮部っちの暴力を目の当たりにした時なり。『俺のことが怖いか?』って聞かれたなりね」
「…」
「まあ、暴力の世界とはまったく無縁というか、ネチネチした暴力の世界は山ほど見てきたなりけど本気の殴り合いとかはゲームの世界やユーチューブやアニメでしか見たことがなかったなりからね。最初はいい趣味友だった宮部っちが暴走族の頭で。でも宮部っちは最初にそれを隠してたなりけど接し方は一ミリも変わらずにいてくれたなり。まあ今では宮部っちのダメなところをたなりんが飛び蹴りとかで気合を注入してやってるなりけど。三兄弟の長兄が飯塚さんで末弟が宮部っちなりで。いい兄者と世話の焼ける末弟に挟まれた生活にも慣れてきてそれに満足して今までになかった楽しい毎日を送っている実感はすごくあるなりよ。だからいい奴なりね」
「そっか。俺はたなりんから見ていい奴?」
「つねりんは最初からいい奴なりよ。だから今日は本音で話してるでござるよ。飯塚さんも今は病院なり」
「え?」
「間宮君とケンカしたと聞いたでござる。きっかけとかは曖昧にしか聞いてないなりけど。なんでも高速道路で事故ってバイクから放り出された間宮君を飯塚さんが庇って受け止めて怪我をしたそうなりよ」
「マジで?」
「マジなりよ。飯塚さんのお見舞いにたなりんも行ったなりから。皆はなんであんな奴を庇ってとか言ってたなりけどたなりんには飯塚さんが間宮君を庇った理由は分かる気がするなり」
「飯塚さんが…、そっか…」
「なんだかんだで目の前にいる他の人ならほっとくような人でも飯塚さんはほっとけないんだと思うなりね」
「だろうな。でなきゃあ自分が怪我してまで…。そっかあ…、飯塚さんが間宮君を…」
「だからなり。長兄の飯塚さんが病院に運ばれたのを聞いた時は錯乱したなりよ。だからつねりんのことを考えると辛いなり。お兄さんのことも一番大事だと思うし友達の間宮君も同じくらい大事だと思うなり。たなりんならどっちかは選べないと思うなりから」
「たなりん…。ありがとうな…」
二人は『ありすしDXバージョン』のデカい箱を横に置きながら冷たくなったおしるこを喉に流し込むのであった。
「さあ裁判といこうか」
伊勢が工場跡地の小さな部屋で話始める。裁判の被告は関谷と小泉。どちらかは無罪放免。一方どちらかはこの場で消す。裁判官は伊勢。裁判員は間宮と慈道。
「待てよ。お前らがなに企んでるかは大体想像つくがよ。こっちにゃあ本家の近藤さんがついてんだぜ。俺は近藤さんと一緒に本家の看板担いで出張って来てんだよ。その俺が急にいなくなったら本家はどう思うかなあ。俺がいなくなればどう動けばいいかは組の人間に伝えてある。小泉。お前は聞いてねえと思うがな」
「ちっと待ってくださいよ。なんすか。俺が裏切ってるみたいな言い方ですね」
「お前は裏切っちゃいねえんだろ。ただこいつらと隠れて絵を描いとる。俺に内緒でな。それを裏切りと言うんちゃうか」
「ちょっと待ってください。なんか誤解されてますよ」
「ああああああああ!ええから。そういうのは。どっちみちここから出られるのはどっちか一人だぁ。小泉さんもこの状態でのんき垂れてる場合じゃねえっすよ。裁判員!」
ここで間宮が口を開く。
「いーいーなーいーいーな、にーんべんっていーいーな。仏に仁、仇、仡、仭、佈、侠、侵―、信じた侠に俘、侮傀儡んだろなー」
「てめえ、ラリッてんのか?」
「そこなんですよ。関谷さん。小泉さんの商売には気付かなかったんですか?それとも気付かないふりをしてたんですか?」
「間宮ぁぁぁぁぁぁぁ!てめえ!」
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