第374話そんなくだらん理由で人ひとりの命を奪ったんですかあんたは!!!

「えー、間宮は『身二舞鵜須組』を食おうと、つまり乗っ取ろうとしたわけです。そこで考えるわけです。ナンバーワンの関谷親分とナンバーツー若頭さん。ナンバーツーの若頭さんは俺のいうことを聞けばナンバーワンになれると」


「おお…なるほど…」


「聞けばあなた、間宮はナンバーツーの若頭さんとずぶずぶだったらしいじゃないですか。どっちかと組んだ方がやりやすいと考えた間宮は若頭さんの方が操りやすいと考えたわけです」


「おおお…」


「ところで宮部さん」


「あ?」


「あなたはこのたなりんさんから最近叱責をよく受けてるそうで」


「は?」


「いやいや隠しても無駄ですよ。コナン!」


「はいなり。あれれえええええ?おかしいぞお?なり。宮部君のカバンの中から幻のお宝『でじたるぎゃるずぱらでいす』の『お隣妻2』シリーズコンプリートが出てきたよお、なり」


「え?」


 『でじたるぎゃるずぱらでいす』とはワンコイン、五百円で買えるガチャガチャであり、十八歳未満は購入禁止のエチエチなフィギュアシリーズのことである。『お隣妻2』シリーズは特に幻と呼ばれ、一体だけでも「たまーーーーーーーーーーーーー―に」やふおくなどで見かけることが出来ればラッキー(もちろん最後の競り合いで価格はゆうに一万円近くになる)な代物であり。それを五体すべてコンプリートした状態のものが!しかもディスプレイ台紙付きで!もぞもぞと宮部のプライベートなカバンを探るたなりん。そして『でじたるぎゃるずぱらでいす』の『お隣妻2』の各フィギュアをまじまじと見る『藻府藻府』のメンバー。


「お、おお…」


「宮部…、お前…」


「違う!これはたなりんが!ドッキリだ!ヤラセだ!」


「ほう。たなりん君がねえ。ドッキリねえ。ヤラセねえ」


 『眠りの冴羽』の思わぬ脱線に宮部が必死で無罪を訴える。


「たりめえだろ!いったいこれいくらすると思ってる!てめえら!」


「あれれえええええ?おかしいぞお?なり。いくらするなり?知ってるなりか?」


「知るかあ!」


「宮部…、あんた…、そんなくだらん理由で人ひとりの命を奪ったんですかあんたは!!!」


「奪ってねええええええええええええ!」


 そんな『眠りの冴羽』withたなりんで場の空気は一気に明るくなる。


「ははは…、いて、はは…」


 緊張と暴力の夜を駆け抜けた飯塚も思わず笑う。


「でもよお。冴羽の言う通りじゃね。それなら辻褄も合うぜ」


「だな」


 そこで田所が付け足す。


「まあ自分が聞いてる話では間宮率いる『模索模索』は相当な額の金をその若頭の小泉ってのに払ってたらしいんすよ」


「半グレからヤクザに上納ですかー。そういや俺らはそういうのってないよな」


「京山さんの時も突っぱねたって話だし」


 そこで田所が。


「いやいや。『肉球会』ではないですよ。『肉球会』はそういうことしませんから」


「分かってますよ。でもあの頃から走ってるといろんなところでヤーさんともぶつかりましたから。『藻府藻府』はどこが相手でも上等ですから」


「でも間宮も意外とこすいな。半グレになったとたんヤーさんに上納かよ。あ、『肉球会』さんのことじゃないですよ」


 そこで宮部が真面目に言う。


「馬鹿。それだけあそこは組織としてマフィア化してんだよ。金が積めりゃあかなり出来ることは広がる」


「宮部っち君の言う通りです。『模索模索』は違法デリにぼったくりバー、キャバにガールズバーと手広くやっている。他にもいろいろ強引なタタキすれすれなこともやっている。暴対法でそれが出来ない極道とそれが出来る半グレの利害が一致するわけです」


「それで『身二舞鵜須組』を食うってことか…」


「まあそういうことですね。『眠りの冴羽』君の推理がほぼ当たりでしょう。ここからは今までよりも輩相手になります。これ以上君たちを危険に巻き込むことはウチのおやじからも止められてまして」


「田所さん。もうおせえっすよ」


「遅い?」


 ここで十代目『藻府藻府』メンバーが声を揃える。


「俺ら、もう『組チューバー』の一員っすから!」


「え?いや、たなりん君までなにやってんすか?」


「『組チューバー』の一員なりよ!」


「あ、いや、それは…まあ」


 そこでベッドに横たわっている飯塚が言う。


「いいじゃないですか。田所さん。もうここまで来たんですし。みんなもそんなにやわじゃないですよ。僕が一番じゃくいかもですから」


 そこでエコが言う。


「それにもう宮部から俺ら全員『ネタ出せ!ネタ!撮れ高最高のネタを!』と言われてますし。なんでも先代の京山さんの総意でもあると聞いてますし。そう言われたら俺らやるだけですよ!」


「え?…宮部っち君?」


「そうです!採用されたら金も出ると!」


「そうそう」


「…宮部っち君?」


「末弟の宮部っちが暴走してるなりか。少しお仕置きが必要なりね」


「お前ら!俺は完全出来高と言ったよな!?」


「いや、固定給だと」


「うんうん」


「お前らぁあああああああああああ!」


「宮部っち君?」


 そんなこんなで少しの間飯塚を失うこととなった『組チューバー』であるが、飯塚の穴は十代目『藻府藻府』が埋めることとなる。

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